映画評「猫は抱くもの」

☆☆★(5点/10点満点中)
2018年日本映画 監督・犬童一心
ネタバレあり

大山淳子の同名連作短編集の映画化。「グーグーだって猫である」で実績があるせいか、犬童一心が監督に選ばれた。

アイドル・グループの一員だった大石沙織(沢尻エリカ)は現在スーパーのレジ担当をしている。身を棄てて奮闘したものの思ったように人生が進まず、逃避するように地方のスーパーに仕事を得、かこつ孤独を猫の良男で紛らわしている。良男は自分を人間で、彼女をステディの恋人と見なしている。

というところから始まるお話で、人間と信じている猫がサブ主人公であるので、良男は殆ど人間の姿(吉沢亮)で現れる。その関連でその他の猫も人間の姿で描かれることが多く、それが本作の特徴の一つ。劇中劇という内容でもないのに描写も殆ど舞台形式で扱われるところが多く、例えば彼女が知り合う万引き少女の叔父さん後藤保(峯田和伸)のアトリエから歩くだけでカラオケ・スナックに移動する。舞台の観客席を意図的に見せるのも興味深い。
 さらに漫画を取り込み、画家が可愛がっている三毛猫キイロ(コムアイ)の場面はミュージカル仕立てにするなど、自由奔放な作り方をしている。

ヒロイン沙織が妄想癖があるという設定の為に、そういう自由闊達な作り方が為されているわけで、良男が人間と思っているという設定も彼女が勝手にそう妄想していると考えるのが妥当。

犬童監督はファンタジーの形で人間劇を描くのを得意としているが、そのファンタジーの中にセミ・ドキュメンタリー的場面を入れるという悪い癖があった。それが水と油のように感じられて、もっとファンタジーに徹すれば良いのになあと思ったものだが、本作は内容とタッチの関係は似たようなものだが、ぐっと統一感がある。
 しかるに、観終わった後に心に残るものが少ない。何故か? 逃避してきた沙織が猫を介して無名の画家と知り合った結果人生を前向きに捉え、少し再生していくというのが最終的に浮かび上がる内容に思えるが、実際は、彼女の心境をあそこまで解っていた画家も勿論彼女の脳内の存在で、彼女は猫によって想像力をたくましくして自ら再生していくのである。だから、お話の流れに辻褄の合わないところもあっても問題ではないものの、他者との交流により人間を描きあげるのが人間劇の醍醐味と考えると、どうも物足りないのである。

名前は犬童なのに、猫の映画を二つも撮るとは、これいかに。

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