映画評「禁じられた遊び」

☆☆☆☆☆(10点/10点満点中)
1952年フランス映画 監督ルネ・クレマン
ネタバレあり

好きなフランス人監督を3人挙げろと言われれば、ジュリアン・デュヴィヴィエ、ルネ・クレマン、フランソワ・トリュフォーを挙げる。興味深いことに、前二者は最後の一人トリュフォーに非難されたのである。後年トリュフォーは過ちを認めたそうであるが、若気の至りだったのであろう。

クレマンは正に実にシャープな映画を作る名匠で、この後「居酒屋」を作り、「太陽がいっぱい」を作る。他にも名作ぞろぞろ。
 この作品は反戦映画の傑作として定評がある。Allcinemaでは作品の価値を認めつつ“反戦映画”という決め方に抵抗する人が多い。僕も“反戦映画”と決めつける必要はないと思う一方、反戦映画でないとも言わない。実際ヴェネツィア・ビエンナーレの審査員たちが“戦争の悲劇を超えて幼年期の純粋さを卓越した表現力と独特の詩情で描き出した”と評していることが最初に紹介されている。これはどちらとも取れる表現である。

1940年6月、フランスにナチス・ドイツが侵攻し、パリから南仏へ疎開しようと移動中に戦闘機に狙撃されて両親と愛犬を失った幼女ポーレット(ブリジット・フォセー)が、子牛を探しに来た少年ミシェル(ジョルジュ・プージュリー)に発見され、結局少年の一家に一時的に引き取られることになる。
 死の意味を全く解っていない幼女は、ミシェルに死んだ生き物は穴に埋められ十字架を立てられると知り、愛犬を埋めようとする。それだけでは寂しいだろうとモグラやヒヨコや昆虫の死骸を隣に埋め、十字架を欲しいとねだる。これが禁じられた遊びである。ポーレットに愛情を注ぐミシェルが墓地から十字架を盗み、結果的に南仏の“ロミオとジュリエット”状態の一家が混乱を極めることになる一方、やがて憲兵が幼女を引き取りに現れる。
 ミシェルはポーレットと離れたくないので、十字架の場所を教えることを交換条件に彼女の引き留め工作を図る。父親はその約束を反故にした為ミシェルは隠し場所から十字架を抜き取って川に投げ捨てる。
 養護施設へ出かけるポーレットは一人でいる時ミシェルという声に誘われ“ミシェル”と泣き求め、途中或る母親を見て“ママ”となり、再び“ミシェル”を求めていく。

4回目か5回目かになる鑑賞で、少なくとも始まりと終わりはよく憶えているから、最初から目頭を熱くしながら観ることになった。映画の良し悪しは涙の量に比例するわけではないし、この映画自体も涙を流させるのを目的として作られているわけではないが、生と死と子供達の無垢な愛情をめぐり、かつそれらが相互に関連し合っていく叙情詩的な内容を見て涙を流さずにいるセンスは僕にはない。

ナルシソ・イエペスの有名なギター演奏は終始ポーレットに寄り添うように奏でられるが、最後に裏切られて傷ついたミシェルの場面にも使われる。傷ついた子供たちを慰藉する為に奏でられるかのようである。

ポーレットが幼すぎて死の意味が全く解っていないのは当たり前として、カトリック教徒の一家に死後の為にあると言って良い宗教について真に理解している者は一人もいず、信者の告白や秘密について他言してはいけないカトリック神父が他言するのを見ると、クレマンはカトリックについて否定的なのだろう。

私淑する双葉十三郎先生は、映画音楽で一番は「禁じられた遊び」、二番が「太陽がいっぱい」になろうか、と仰っていた。

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この記事へのコメント

モカ
2019年06月04日 22:57
確かに「反戦映画」というレッテルは貼りたくないですね。多分、「反戦映画」という言葉が「戦意高揚映画」を反転したような表面的な浅い意味合いを帯びてしまうのかもしれませんね。良い映画は四文字で表せるような単純な分類には入りきらないんでしょう。 それにしても、こんなに多量の映画評を書いておられるのに、「禁じられた遊び」がまだだったなんて・・・真打登場ですね。
昔、ギターを手に入れたらベンチャーズを目指すがフォークに行くかはさておき、まずは「禁じられた遊び」のテーマが必修曲でしたよね。(同世代のように書いてますが、わたくし、映画の日本公開とほぼ時を同じくして生まれておりますので、少しだけ・・・でしょうか?)
つい先日も友人とこの映画の事を話していたところです。 あまりにも名作すぎて、
自分の生きてきた年月と同じ年月を色あせることなく名作であり続けたからか、今更スゴイ、スゴイとも言わなくなったけど、すごい映画だとね!とか訳の分からん事を
しゃべって盛り上がっておりました。子役二人が良いですね。ミシェル役の少年、初めて見たときは年上の少年でしたが、アランドロンに通じる危うさと父性を併せ持っていて、その魅力は60何年かの歳月が過ぎても変わることがないですね。逆にポーレットはあどけない幼女のイメージだったのが、今の目で観るとなかなかに女です。
あの子は強く生きていくでしょう。婆としてはミシェルが心配です。(笑・・・
オカピー
2019年06月05日 19:15
モカさん、初めまして。

>良い映画は四文字で表せるような
>単純な分類には入りきらない

そうかもしれませんね。

>「禁じられた遊び」がまだだったなんて
好きな映画って書きにくいものなんです。
「風と共に去りぬ」もまだですし、「ローマの休日」はやりにくかった。「太陽がいっぱい」は却って手抜きしたくらい。去年原作との比較をやって少しフォローしましたが。

>「禁じられた遊び」のテーマが必修曲
1970年代までそうだったように思います。僕もやろうとしましたが、生まれつき不器用なもので、マスターできる前に降参しましたデス(恥)。

>ミシェル役の少年
何気なく良い演技でしてね。

>なかなかに女です。
そうなんですよ。もう男を縛っている。多分強く生きていくと思います。
演じたブリジット・フォセ―は、大人になってからは割合控えめな役が多く、この作品が一番主張の強い女性かもしれません(笑)。
モカ
2019年06月05日 22:30
こんばんは。前に「レイチェル」にちょっとコメントさせていただきました。
少しづつですが楽しく拝読させていただいております。
よろしく、お見知りおき下さいませ。わたくし、論理的思考回路が欠如しておりますので、個人的好みと感情論に陥りまくりますが、またコメント入れさせてくださいね。
余談ですが・・・「禁じられた遊び」のブルーレイDVDを購入しましたら、特典映像に別バージョンのイントロとラストのシーンがありました。初めの本のページがめくられていくシーンがミシェルとポレットが仲良く並んで本をめくっていくんですが、ミシェルがおぼっちゃま風の服を着てまして非常に似合っておりません! そらボツになるわ! (あっ、わたくし、生粋の関西人です。興がのると地が出やすいです)
ということで、ミシェルはあの粗末な田舎の少年ファッションならばこその存在感なんですね。 ミシェル役の少年はその後「死刑台のエレベーター」でモーリス・ロネの車を盗むチンピラになってましたね。なんだか切ないです。
オカピー
2019年06月06日 20:28
モカさん、こんにちは。

>「レイチェル」
やっちまいました。申し訳ございません。
今後ともよろしくお願いします。

>感情論
僕は論理的です。人の感想について論理的にいちゃもんを付けたりしますが、お嫌いにならないでくださいm(__)m。
 感想はその人のものですから本来僕が云々するには及びませんが、余りに論理が崩れている時には取り上げたりします。

>別バージョン
大概捨てられたものはダメですね。ビートルズのアウトテイクなどを聞いてもやはり発表されたものが断然いいわということになります。

>ミシェル役の少年
田舎の素朴の少年も都会に出たら、チンピラになるかもしれませんね。
成人した後彼の出演する作品は全く日本に輸入されなくなりました。ちょっと意味が違いますが、少年老いやすく・・・ですかねえ。
2019年06月06日 21:48
ちょっと目を離していたらこの名作を・・・挙げておられましたか。

燐家とのいがみ合いさえも牧歌的な感じの田舎の生活描写ですが、戦闘機の空襲があったり、医師不足の為に身内が亡くなったりと反戦的なエピソードもありましたね。
ミシェルとポーレットの初恋物語の様でもあり、色んな意味で胸キュンする映画であります。
牛に蹴られて亡くなってしまうミシェルの兄貴は、確か「おしゃれ泥棒」に出てくる美術館のとぼけた警備員ではないでしょうか?
オカピー
2019年06月07日 18:06
十瑠さん、こんにちは。

こんなに書いても取り上げていない名作がごろごろありますから、相変わらずご贔屓に願いますよ(笑)。

>燐家とのいがみ合い
「ロミオとジュリエット」の南仏バージョンなのですが、同じフランスでも南仏はラテン気質が強いのではないかと思わされる喜劇タッチでしたね。

>ミシェルとポーレットの初恋物語
モカさんが上で仰っていますが、ポーレットは男を従えるしたたかさを既に見せていますから強く生きていくかもしれません。寧ろミシェルがどうなるのか。この後レジスタンスに入るかもしれませんね。

>ミシェルの兄貴
そのようです。しかも調べたら「シャレード」の警部役もしています。
しかし、よく解りましたね(@_@)
蟷螂の斧
2019年06月09日 18:23
今、調べたのですが、少年ミシェル役のジョルジュ・プージュリーは2000年に既に亡くなっているんですね享年60歳。平均寿命が80歳以上の時代ですが、僕の周囲で50代や60代で亡くなっている人が多いので悲しく思います。

そして、今でも思い出す事があります。
子供の頃に見た「日曜洋画劇場」で淀川先生が「原作では、十字架を取ろうと教会の屋根に上った少年が転落死」と言った事です

>僕の目には野蛮人に見えますよ。

このあたりの話を今後もよろしくお願い致します
オカピー
2019年06月09日 20:25
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>ジョルジュ・プージュリー
2000年に亡くなったのは知っていましたが、原因を知らないので調べてみたら癌とありました(IMDb)。

>十字架を取ろうと教会の屋根に上った少年が転落死
これだと映画とは随分違う印象になりますね。こちらの方が悲劇性はありますが、映画のほうが切ないです。

>このあたりの話
しかるべく(笑)
蟷螂の斧
2019年06月10日 17:30
オカピー教授。こんばんは。

>調べてみたら癌とありました(IMDb)。

可哀相です。でも長生きして認知症になって家族に迷惑をかけるのも・・・そう言う議論が多いです

>映画のほうが切ないです。

淀川先生の話では、ポーレットは原作ではミシェルの代わりにあの家族が育てる。
映画では、行く場所がなくなるのでは・・・と思います

それとは別に、馬に蹴られて寝込んでいたミシェルの兄が亡くなる場面も悲しかったです
オカピー
2019年06月10日 22:22
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>認知症になって家族に迷惑をかけるのも
そうなんです。
安易には言えない事案ですが、僕は尊厳死や安楽死を、本人の意志、医師の専門的判断、家族の同意という条件下で将来的には認めてほしいと思いますね。これを経済的理由と断罪する反対派もいますが、そういうことではないです。

>映画では
恐らく、例の孤児院が彼女を発見するのでしょうが、それで幸せになるか不幸になるかは分かりませんよね。そう思うとやはり戦争が憎いということになり、だから、反戦映画の名作と言われるのでしょう。

>ミシェルの兄
これも戦争により医師が村にいなくなったのが遠因となっていますよね。
蟷螂の斧
2019年06月15日 09:30
>ミシェルの兄
>これも戦争により医師が村にいなくなった

兄の容態が悪化する。お母さんが匙で水薬を飲ませる。でも亡くなってしまう兄。
お母さんが泣きながら「もっと早く飲ませてあげれば良かった。」匙に残ってる水薬を瓶に戻す。
医薬品も貴重だったのでしょう

>だから、反戦映画の名作と言われる

仰る通りです。

>経済的理由と断罪する反対派

いろいろな意見を持った人がいます
オカピー
2019年06月15日 21:35
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>「もっと早く飲ませてあげれば良かった。」
僕は両親に対して、こうした後悔の念を未だに抱いていますね。
“孝行のしたい時に親はいず”という諺は人の世をことをうまく言い当てていると思います。

>いろんな意見
それ自体は良い事です。現在の政権や彼らに肩入れする人々は反対派の人々の言論を封殺しようとしますが、そんなことをしたら中国になってしまう。昔はそんなことを夢にも考えたことがありませんでしたが、メディア排除をしたがる全体主義者が増えて少し嫌な気分になることが多いですね。
蟷螂の斧
2019年06月16日 22:23
>クレマンはカトリックについて否定的なのだろう。

「クレマン監督はプロテスタント?」と言うのは短絡的な質問でしょうか?

>“孝行のしたい時に親はいず”

永遠に悩むでしょうね

>全体主義者

みんな同じ意見ではつまらないです

>ナルシソ・イエペスの有名なギター演奏

ウィキによりと「撮影の予算オーバーによりオーケストラを組むことが出来ず」
何が幸いするか、わかりませんね

オカピー
2019年06月17日 18:43
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>クレマン監督はプロテスタント?
フランスですからその可能性はありますが、概ね反カトリックは反キリスト教であり、ひいては反宗教的なことも多いですね。

>永遠に悩むでしょうね
これこそ自分の不徳の至りですから、素直に受け入れましょう。しかし、親が死んでも後悔できないような親子関係でもまたやりきれない。

>オーケストラ
映画界では怪我の功名も結構多いですが、「禁じられた遊び」もその例になりますか。
蟷螂の斧
2019年06月22日 22:00
>「禁じられた遊び」もその例になりますか。

そうですそれ以外にも怪我の功名の例があるんでしょうね。

>親が死んでも後悔できないような親子関係

人類の永遠の悩みかも?

>概ね反カトリックは反キリスト教

なるほど。
それと知人が言った事を思い出します。
「フランス料理やイタリア料理(カトリック)と言うのはあるけど、イギリス料理(プロテスタント)ってないだろ?」
オカピー
2019年06月23日 20:28
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>怪我の功名の例
俳優の代打出場が奏功した例は多いですね。

>イギリス料理(プロテスタント)ってないだろ?
広まり過ぎて敢えて言われないのかもしれませんね。プリン(プディング)なんて日常的に食べますから。多分日本人が食べているプリンは英国流プディングとは違うかもしれませんが。昔英国の小説を読んで“プディング”という食べ物が出て来て“何だろう?”と思いましたが、プリンでした(笑)。

英国教は外面はプロテスタントで、内面はカトリックと思います。

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