映画評「弾丸を噛め」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1975年アメリカ映画 監督リチャード・ブルックス
ネタバレあり

大学生だった40年くらい前観た時より楽しめた。既に大ベテランだったリチャード・ブルックスが自らの脚本を映像に移した20世紀初頭を舞台にした西部劇のヴァリエーションである。サファリ・ラリーの西部劇版みたいなお話。

苛酷な西部を一週間掛けて馬で踏破し最初に到着した優勝者に賞金2000ドルが払われるレースに、ジーン・ハックマン、その米西戦争時代の戦友ジェームズ・コバーン、紅一点キャンディス・バーゲン、老骨ベン・ジョンスン、血気盛んな若者ジャン=マイケル・ヴィンセント、歯痛持ちのメキシコ人マリオ・アルテアガ、英国貴族イーアン・バネンらが参加する。かくして到着までの艱難辛苦の間に様々な人間模様が描かれる。

砂漠や荒野などで馬がへたばったり負傷したり、乗り手が死んだり、次々と落後していくわけだが、キャンディスの真の目的が判明する辺りから、鈍重気味だったお話がスピーディーになって俄然面白くなる。尤も、鈍重気味のそれまでも、実は台詞の掛け合いが楽しく(お気に入りは“夫婦って不思議なもの”)、CG頼りで軽い昨今の作品に容易に求められない作品としての重みがあり“映画”を見ている気になる。ハックマン、コバーン、キャンディスという豪華な配役の効果がこういうところに現れている。決して無駄遣いなどではない。

この映画に関しては比較的信用しているAllcinemaの評者諸氏が的を外しまくっている。前提が間違っていない限り他人の感想はその人のものだから口を挟まないが、論拠が正しくなければそういうわけには行かない。

例えば、ハックマンが到着寸前になり友人のコバーンの到着を待っているように理解している人がいるが、どう見ても動物を大事にするのを信条とするハックマンが、へたばった馬をまずその行くままにまかせ、次に負担を減らす為に荷物をおろし、自分も下りて馬に水を飲ましているだけではないか。寧ろ多少馬に余裕のあるコバーンが勝てるのに走り抜けず、わざと下りて歩き、最後に友情を示す…と理解しなければ本作を観た意味がないのである。この友情ぶりに素直に感動したほうがお得。

或いは、ハックマンが一種の飲み薬を飲んで酒との飲み合わせで体に異変を起こす。ある人の指摘に反して、彼は翌朝すぐにピンピンとしていたわけではない。当初は馬にもまともに乗れなかった。レースを邪魔した悪党を追ううちに急に元気づく感じはあるが、それほど出鱈目にあらず。
 血気盛んなヴィンセントがハックマンにこてんぱんにやられてすっかり心を入れ替えるというのは確かに急すぎる感じがあるが、彼の動物や人への慈悲心にほだされて(急に変わるのは、砂漠で死んだ馬を埋めろと言われてから)尊敬の思いを抱いたからと理解し、微笑ましく観た方がお得。若者の様子を見ると、自分以外は皆精神的に大人だなあと思ったように見える。

普段 Allcinemaの解説と僕の相性は相当悪いが、本作に対する“骨太”という形容は正しい気がする。馬が塩をふいて白くなっている描写が凄い。

原題のBite the Bullet は“困難に耐える”といった意味の慣用句であるが、実際に弾丸を噛む場面もあるからこの邦題はこれで良い。意味が解っているのかという非難は意味を成さない。

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    Excerpt: 20世紀初頭の西部。 新聞社の主催で、当時としては最高額の賞金付きマラソン競馬に男女8人が出場し、700マイルを疾走する。 Weblog: 象のロケット racked: 2019-06-05 09:12