映画評「光る眼」(1960年) 

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1960年イギリス映画 監督ウォルフ・リラ
ネタバレあり

リアル・タイムで見られる世代ではなく、後年衛星放送で観たのが最初。多分1980年代後半である。原作は「トリフィドの日」(映画版は「人類SOS」)で有名なジョン・ウィンダム。
 「2001年宇宙の旅」が登場する1968年までSF映画は継子扱いで、低予算のB級映画とほぼ相場が決まっていた。本作も77分という短さを考えるとその典型であるが、出来栄えはなかなか秀逸。1995年にジョン・カーペンターが作ったリメイクは、このモノクロのオリジナルを先に見ている為、カラー版であるなどの理由で利に落ちる感じで余り面白く感じられなかった。多分初めて観ればそこそこ行けたのかもしれない。

ある英国の村で人々が突然昏睡するという異常な事件が起きる。軍隊が出て来て調査するうちに人々は意識を回復、特に後遺症もないが、妊娠可能な女性たちの妊娠が次々と発覚する。妻バーバラ・シェリーの妊娠を喜んだ学者ジョージ・サンダーズも不安に陥り、どうも未知の生物が村の人々が眠っている間に女性たちに種をまいたという結論に達する。
 生れた子供は体格が大きいことと目が特徴的であること以外は通常人と変わらないが、やがて異常に優れた知性、成長の速さで周囲の人々を圧倒する。しかも、彼らは意識を共有する事実上一人の人物であり、人の心を読むことが出来、その目によって人々を自在に行動させることができる為やがて脅威になると共に、おいそれと攻撃を加えることが出来ないことが判ってくる。そこでサンダーズ氏は一計を案じる。

何度も映画化されたジャック・フィニーの「盗まれた街」に通ずる宇宙人侵略ものであるが、宇宙人を殆ど意識させないのが映画版の特徴であろうか。

まず序盤の謎めいた展開が誠に面白い。予算が少ないことがあってか、宇宙人そのものが全く出て来ず、謎が多いのが却って効果的である。子供たちの特徴も実にSF的に興味深いもので、読心術があるという設定が地球人にとっては実に厄介、そこに本作のネタとしての面白味があると言って良い。当然サンダーズの一計はそれに応ずるものであるとは知れるわけだが、具体的には喋りますまい。

異様に知力の高い子供たちが皆銀髪で恐らくは碧眼(モノクロなのでよく解らない)というのはナチスが優性思想として抱くイメージから戴いたような印象もあり、作者にそいう意図があったのかもしれぬ。

幕切れは両義的ですっきりしない(サンダーズの作戦を伏せるとこれも具体的に述べられない。悪しからず)が、足を引っ張ると言いたくなる程ではない。

ネタバレしなくても映画評を書けると豪語する人がいるが、とても無理。抽象論になってしまう。僕が冒頭に採点を記しているのは、未見の方が読むか読まないかを採点で判断してほしいからである。勿論、それには訪問者が僕を信頼してくれる必要があり、初めていらっしゃる方には無理なのだが。

この記事へのコメント

浅野佑都
2019年06月19日 19:59
 集団で大人達を敵に回すと言う設定は、「ザ・チャイルド」(76)の原型ですね。
プロフェッサーはご覧にならないでしょうが、超能力や眼が光るところなど、横山光輝の漫画「バビル2世」に多大な影響を与えた作品です。

 小説でいうスト―リーテラーを映画に当てはめれば、この監督のような人を指すでしょう。
映像と音響のアンサンブルによって、奇怪で魅惑的なシチューションをテリングし、オープニングで早くも感覚的で刺激的な物語世界を構築できていまますね。
冒頭、村中の人たちが昏睡状態であるときに音楽を一切流さず、その中で電話やレコード、農耕機械など電子機器だけが生きているという映像は、村そのものが死んでおり、静寂に包まれたことを映画的に際立たせていて惹き込まれます。

>子供たちが皆銀髪で恐らくは碧眼
典型的アーリア人的な特徴の容姿でしたが、僕は、当時のビート族などに代表されるジェネーレションギャップが影響してるのかなとも。
ビートルズに代表されるロックはすでに産声を上げ、アンディウォーホルがキャンベルのスープ缶を描くのは62年でした。
50年代の古きよきモラルと新世代のモダニズムが対立し破壊へというのは悲劇的すぎますが。

(ネタばれの為)プロフェッサーが触れられていないので僕もボカしますが、ラストの「レンガの壁」と「時計の針」「主人公」のディゾルヴ表現と、ヒッチコック的サスペンスを使い、なおかつ無音と映像の戯れ、そして洗練された人物描写など、どれもが互いに影響を及ぼし合いもっと評価されるべきSF映画の傑作だと思います。

なお、未公開ですがこの映画のスピンオフ的作品の「続・光る眼/宇宙空間の恐怖」は、異端者扱いされる子供達と、彼らを軍事的に利用せんとするの大人の対決を描いた悲哀に満ちた物語で、「Xメン」や「ヒーローズ」等の先駆けと言えるでしょう。
オカピー
2019年06月19日 23:17
浅野佑都さん、こんにちは。

>「ザ・チャイルド」
これはもう一度観たいですね。秀作でした。

>「バビル2世」
確かに読んでいませんし、観てもいません。題名を知るのみ。

>ビート族
英国ですから、そういう見方もできそうですね。

>ネタばれ
古い映画ですのできっちり書いても良いと思いましたが、どう落着させるのかがキモですので、一応触れずにおきました。

>ヒッチコック的サスペンス
実に素敵でした。

>「続・光る眼/宇宙空間の恐怖」
存在自体をついこの間知ったばかりで、これは観ていないですねえ。
NHKも西部劇ばかりやっていないで、こういう古いSF映画とか、古いサスペンスを放送すればよいのにな。デジタル放送になってから映画放映のスタンスが本当にダメになった。
十瑠
2019年06月20日 10:17
これは観たのかどうかもすっかり忘れていて、何十年もずっと気になる作品でありながら、先延ばししているのです。
なので、今回の記事も未読です。
子供たちの眼が光っているスチール写真はお馴染みだし、地球の子供たちが侵略者のマインドコントロールみたいな話なのかなとは思っています。
今年こそ、観ようと思いました。
オカピー
2019年06月20日 21:49
十瑠さん、こんにちは。

昨今のド派手なSF大作に見慣れている若い人は、モノクロ画面に“しょぼい”という印象を持つでしょうし、SFXはVFXに比べ貧弱に見えるでしょうが、今のそうした作品が本当に“映画”なのか疑問を覚えますね。

十瑠さんはそういうVFX大作には余り縁のない方ですし、物凄く素晴らしいと思うか否かはさておいて、きっと“映画”を感じてくれると思います。後日のご連絡をお待ちしてしております。

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