映画評「ローマンという名の男 信念の行方」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2017年アメリカ=カナダ=アラブ首長国連邦合作映画 監督ダン・ギルロイ
ネタバレあり

デンゼル・ワシントンが主演でも娯楽性が低ければお蔵入り(日本劇場未公開)となる。

記憶力は良いが縁の下の力持ちに徹してきた人権弁護士ワシントン(役名ローマン)が、雇い主が倒れて事務所閉所となった為に事実上の失業状態になる。結局若いコリン・ファレルがや所長を務める事務所に雇われるが、彼に司法(法曹界)改革の為の提案をしたものの無視される。活動家の集会でボランティアで人権について語るも時代錯誤として惨めな思いをする。
 かくして彼は人間に失望して宗旨替え、殺されてしまった前の依頼人(第一級殺人被告)によりもたらされた主犯の居場所に関する情報を、懸賞金の出ているアルメニア人被害者の家族に渡して大金を頂戴し、暫し金持ち気分に浸る。
 ところが、これによって逮捕された主犯の男(マフィア構成員)がワシントンを弁護士に指名、“いつ死ぬか解らない恐怖を味わえ”と脅迫するに至る。これに動揺するも彼は、彼の一貫した活動に感銘を受けていた人権活動家の女性カーメン・イジョゴーの電話に奮起して高潔な人間として自首(依頼人の情報を第三者に洩らす弁護士倫理に反する罪)しようとした矢先、予告通りに暗殺されてしまう。
 しかし、カーメンは彼の生き方や思想(人権擁護が社会を改革する)に倣って活動を推進し、ファレルは彼のまとめた膨大な資料を基に司法改革となるべき裁判を起こす。

非常に地味ながら、人間ドラマとして解りやすい構図のお話で、最終的には高潔な意識を持って生きることの素晴らしさ、ひいては人間讃歌のようなものが浮かび上がる。
 構図というのは即ち、人が信用できなくなって宗旨替えした弁護士を、信用できない原因の一つを作ったカーメンが逆に励まし、彼にもっと大きな失意をもたらしたファレルがその遺志を継ぐという明確な流れのこと。それを通して、人間というものの不思議さ・素晴らしさが感じ取れるような作劇になっているのである。

諺に“虎は死んで皮を留め、人は死して名を残す”というが、主人公はどちらかと言えば虎の皮のほうに近い。滋味はあるがいかにも地味で、多い☆★は進呈しかねるも、少しアングルのある人間ドラマがお好きな方は一見する価値があるだろう。

ロマンティシズムではなく、ヒューマニズムのお話でした。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック