映画評「アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2017年アメリカ映画 監督クレイグ・ギレスビー
ネタバレあり

僕は世界の強豪が集まるオリンピックの大ファンである。最近でこそ各競技の世界選手権がTVでも放映される機会が増えたとは言え、オリンピックでしか見られない競技・種目は依然多く、そうしたスポーツが見られるのが何より楽しみなのだ。
 昨年の冬季オリンピックは僕の記憶している限り一番面白い冬季オリンピックだった。国のメダル数には全く興味ないが、日本選手が強くて見るモチヴェーションが高くなった為に楽しめたのである。結果は関係ない。メダルを逸すると脅迫まで行うバカ者がいるが、選手は本来自分の為に出場しているのであるから国云々で話をするのは筋違い。一番悔しいのは負けた彼ら自身なのだ。

それはともかく、1994年のリレハンメル五輪は冬季が夏季の中間年に行われることに変更された結果、前回から2年後に行われた冬季オリンピックで、フィギュア・スケートではプロになっていたドイツの最強カタリナ・ヴィットが復帰した大会として僕は憶えている。しかし、そういう人は少数派で、やはり本作のヒロイン、アメリカのトーニャ・ハーディングの一連の事件が印象に残っている人が大半であろう。

映画本編でも描かれるようにオリンピックでもちょっとした靴紐事件があったわけだが、何と言ってもその直前に起きたアメリカにおける彼女のライバル、ナンシー・ケリガンへの殴打事件が大きな騒ぎとなった。当時から彼女自身は直接関わっていなかったことは知られていたが、彼女自身がやったように思った人が多いと思う。しかし、直接やっていればどんな事情があろうともさすがにオリンピックには出場できなかったはずだ。

映画は、人非人(ひとでなし)としか言いようがない母親ラヴォナ(アリスン・ジャネイ)が如何にトーニャ(マーゴット・ロビー)に歪んだスケート人生を与え、事実上の計画を立てた暴力夫ジェフ・ギルーリー(セバスチャン・スタン)が如何に彼女からスケート人生を奪っていったかということを内容としている。この映画通りであればトーニャは大いに同情されるべきであるし、話半分としても同情する余地はあると思われる。

お話はなかなか興味深い。モキュメンタリー(疑似ドキュメンタリー)の手法と第4の壁を破る手法を併用してその面白さを引き立てるが、どちらの手法も現在ではそう珍しくもなく、先日観た「モリーズ・ゲーム」がモーグル選手の波乱万丈の人生を描いた実話ものだったように、内容的に共通項は少ないとは言え、全体のパッケージとしてそろそろ飽き始めたタイプの作品でもある。ハリウッドにおける実話ものの氾濫が限界に近付きつつあるように個人的には感じる次第。

来年の東京オリンピックは僕が生きている間に見られる最後の日本での夏季オリンピックになるだろうが、運の悪いことに来年は隣保班の班長なのだ。観る時間に影響を与えるイレギュラーな出来事がないことを祈る。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック

  • 「アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダル」

    Excerpt: 「好きです! 」 Weblog: 或る日の出来事 racked: 2019-06-15 10:56
  • アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル

    Excerpt: 貧しい家庭で、幼いころから母親の暴力と罵倒の中で育てられた少女トーニャ・ハーディング。 天性の才能と努力が開花し、女子フィギュアスケート競技でアメリカ人初のトリプルアクセルを成功させ、1992年アルベ.. Weblog: 象のロケット racked: 2019-06-15 18:33
  • 「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」

    Excerpt: 下世話な覗き見趣味から本作を観る選択をした私。当時、トーニャ・ハーディングがナンシー・ケリガンを殴打したというニュースは、異国の地のものとは思えない程直接的にワイドショーを賑わしたものだ(正確には、ト.. Weblog: ここなつ映画レビュー racked: 2019-06-21 12:52