映画評「ダークサイド」

☆★(3点/10点満点中)
2018年カナダ=アメリカ合作映画 監督ティム・ハンター
ネタバレあり

ニコラス・ケイジ主演映画シリーズ第2弾。日本では昨日の「ヒューマン・ハンター」より多少評判が良いようであるが、新味不足が致命的であっても「ヒューマン・ハンター」がお話として恰好になっていたのに対し、本作はお話としての体を成していない。こちらの方をぐっと低く見ているIMDbの評価の方が総合的な判断として的を射ていると思う。左脳人間にこの作品はダメだ。

娘を失って絆が怪しくなったニコラス・ケイジとロビン・タニーの夫婦が、小さな町にあるモーテルを買い取って営業を開始する。
 一癖ありそうな客が多いが、何故か一番奥の十号室が人気。一番怪しいのは、盛暑の中コーヒーを所望する保安官マーク・ブルカスで、やたらと前の経営者ビル・ボーレンダーのことを聞きたがる。店の周囲の連中もこちらに多大な関心を持っている様子。
 やがてケイジ氏は、プールに豚の死体を発見する。その関連で常連のトラック運転手から自殺した少女の話を聞く。豚の死体には彼女の名前が記されている。最初に泊まった女性客が殺されたニュースをTVで見る。その前日十号室で娼婦らしい女とレズッた女性でもある。ケイジ氏がそんなことを知っているのは偶然発見したマジック・ミラーのおかげだ。十号室が人気なのは特殊な性癖を持っている人が大きな鏡に興奮するせいかもしれない。
 保安官から何度も居場所を聞かれた主人公はやっとボーレンダーと会うことに成功するが、“すぐに出て行った方が良い”とアドバイスされた直後に相手が何者かに射殺されてしまう。逃走する一台の車があるが、相当の距離があるので、犯人はオリンピック選手クラスのライフル名人である。
 車を追うようにケイジ氏が戻ると、奥方が十号室で保安官に縛られて暴行されようとしている。ケイジ氏は暫く様子を見て遂に鏡を突き破って保安官を襲い格闘の末に首尾よく射殺、モーテルを去って行く。

疑問百出である。最後死体を放って逃げても現在のアメリカの捜査力であれば主人公は捕まってしまうであろう。常識的には、有罪になる可能性があっても留まって言い訳をする必要がある。さもなくば、最大の不審者たる保安官が細君に手を出す前に二人はモーテルを捨てるという作劇でなければならない。
 不満は、こんな中途半端な終わり方では爽快さも何もないということである。そもそも保安官がどうして前の経営者を必死に探しているのか全く解らない。想像するに、少女を殺したのが保安官で、男にその事実を知られているからかもしれないが、それなら怖がって逃げている相手を無理に探し出す必要もないではないか。

前経営者を遠方から狙撃したのは99%の確率で保安官だ。しかし、それならば主人公が到着する前に奥方を部屋まで連れ込んで縛っている暇などあろうか? 十号室の女を殺したのも保安官かもしれない。豚は近所のチンピラかもしれない。この辺りはサスペンス醸成の要素やミスリードの手段として見れば良いので、特段解決しなくても良いのだが、何故執拗に前経営者を探していたのか等、保安官絡みの部分はきっちり解決しないと文字通りお話にならない。

反面、ムード醸成はそう悪くない。ケイジも存在感のある役者なので、お安い作品であっても見るべきものはある。B級即ちお安い作品ばかりとは言え、これだけ出演の話が持ち込まれるのも理由なきことではないのだ。

ダークサイドと言えば「スター・ウォーズ」を思い浮かべる人が多いだろうが、僕はピンク・フロイドの傑作LP「狂気(ダーク・サイド・オブ・ザ・ムーン)」を思い出す。通算1000回くらい聞いているお気に入りだ。

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