映画評「ワンダー 君は太陽」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2017年アメリカ=香港合作映画 監督スティーヴン・チョボウスキー
ネタバレあり

女流児童文学者R・J・パラシオのベストセラー児童小説の映画化。良いお話を映画化しても良い映画になるわけではないが、これは実に良い映画に仕上がっている。2,3年に一本しか出さない☆☆☆☆★と1年に十本以上は出す☆☆☆☆の間で躊躇したくらい。しかるに、これが僕の不思議で、本年のベスト1になる可能性はそう高くないと思う。

両親が共に持つ特殊な遺伝子が合わさった時に初めて起こる顔の奇形により10歳の今日まで学校に行かず、学者になる夢も停止している母親イザベル(ジュリア・ロバーツ)の指導により勉強してきたオーガスタ通称オギー君(ジェイコブ・トレンブレイ)が、中等年になるのを機に、通学することにするが、案の定最初は無視され、次第に一部の生徒によるいじめに発展する。
 しかし、理科が苦手なジャック君(ノア・ジュープ)にカンニングさせたことから二人の間に友情が育つ。ジャック君は、同時に、虐めグループをリードするジュリアン(ブライス・カイザー)に迎合する必要性を感じて心にもないことを発言、それをオギー君がこっそり聞いた為に友情が壊れる。それを敏感に感じ取った黒人少女がオギー君に接近。彼女から理由らしきものを教えられたジャックはいじめをエスカレートさせるジュリアンと激しい喧嘩をする。
 こうしてオギー君は少しずつ仲間を増やすのとは対照的に、ジュリアン君は没落し、学校を去って行く。

というのが主軸となるお話で、母親、心優しい姉ヴィア(イザベラ・ヴィドヴィッチ)、ジャック、姉の友人ミランダの視点を交えて語ることで単調さを回避したのが殊勲。ヴィアとミランダの仲たがいと和解までの流れはオギーとジャックのそれとダブり、若い人々の柔軟な心に感激させられる。

それと極めて対照的なのが、自分たちの不都合は相手の子供であったり学校の責任に帰するジュリアンの両親のモンスターぶりである。ジュリアンは学校が好きなのだが、性格が弱かったのであろう、虐めた末に親の一方的な判断で好きな学校を去る羽目になる。
 同じ親でもオギー君の両親は素晴らしい。彼が学校でやっていけることが確認するや、母親は論文に取り掛かり夢の実現を目指す。それを支える父親ネート(オーウェン・ウィルスン)は自己主張を最小限にして家族をうまくコントロールする名人である。子供を主人公にした映画史上最高の両親かもしれないですな。

ヴィアが言うように太陽(Sun)である息子(Son)の周りを他の家族が周遊し、あるいは学校では生徒たちが周遊する。太陽は彼らの素直な心を引き出していく。その引力に応えられなかったのがジュリアンの悲劇である。親の悪い感化があったに違いないと思わさせる。

脚本・監督は監督作としては初めて観るスティーヴン・チョボウスキー。脚本を担当したアメリカ実写版「美女と野獣」(2017年)では僕の嫌いなポリ・コレに縛られて実力が発揮できなかったのではないかと勝手に思っているが、今回は2005年の話題作「RENT/レント」を上回る。特に児童文学らしい素直さを生かした素直な展開ぶりとのびのびした描写を買いたい。

スティーヴィ・ワンダーに"You are the sunshine of my life"という名曲があるから、洋楽通はスティーヴィー・ワンダーの自伝映画と思ったとか(嘘)。

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この記事へのコメント

2019年06月03日 23:43
わかってます。
たぶん、もっと硬派なものが1位になるのでしょうねえ。
私は、情に流されるので、(本作は年間マイ・ベスト2位でしたが、)1位は楽しい方向に行って「マンマ・ミーア ヒア・ウィー・ゴー」なのでした。
オカピー
2019年06月04日 19:27
ボーさん、こんにちは。

>硬派
と言いますか、映画芸術的に凝った作品でしょうかねえ。しかし、2,3年に一度しか与えない事実上の最高点を出そうかとも思ったわけですから、うまく滑り込めるかも。

>「マンマ・ミーア ヒア・ウィー・ゴー」
またABBAの歌曲が全編を覆っていますか。
今年ABBAの二枚組ベストを図書館から借りてきてコピーしましたよ。

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  • ワンダー 君は太陽

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