映画評「戦艦ポチョムキン」

☆☆☆☆☆(10点/10点満点中)
1925年アメリカ映画 監督セルゲイ・M・エイゼンシュテイン
ネタバレあり

セルゲイ・M・エイゼンシュテインがモンタージュ理論を確立した作品として余りにも有名だから、映画ファンなら一度は観ておかねばならない。僕自身は、1980年池袋文芸坐で観たのが最初で、今回は今世紀初めにNHK-BS2が放映したショスタコーヴィチを背景音楽に据えた75分版にて再鑑賞。映画館で観たバージョンとは違うかもしれない。
 因みに、結局普及しなかったD-VHSにより保存してあったので、画質は最良でござる。お話を書いても余り意味のないような気もするが、ごく簡単に書いておきましょう。

1905年、戦艦ポチョムキン号の水兵が自分たちの食べる肉にうじが湧いていると文句を言うが、司令官以下幹部は洗ったら食べられると取り合わない。彼らの言うことに最後まで従わない水兵たちが衛兵に銃殺されようという時、一人の水兵ヴァクリンチュク(アレクサンドル・アントーノフ)が衛兵に声をかけたことから形勢は逆転、幹部たちは処刑されるが、ヴァクリンチュクも射殺される。
 水兵たちははしけでヴァクリンチュクをオデッサの港に運ぶ。年初の【血の日曜日事件】以来の革命機運がここにも飛び火でして、オデッサの住民たちが蜂起の勢いに乗ろうとしたところを衛兵が発砲する。人々は階段をこけつまろびつ駆け降りる。重体の子供を抱えた母親が倒れる。乳母車が階段を落ちていく。
 これも見た水兵たちがポチョムキンからオデッサの司令部に砲弾を打ち込む。すると別の戦艦が近寄ってくる。一触即発の危機。しかし、彼らもポチョムキンの水兵たちの気持ちは解り切っていて何もしてこない。

1917年の第二次ロシア革命に繋がる、第一次ロシア革命の一エピソードである。最終的にはこの一連の蜂起は挫折するのだが、当時の機運として現在の成功を考える時忘れてはいけない事件として取り上げたかったのだろう。そういう意味では紛うことのない社会主義プロパガンダ映画であるものの、この映画は過去の史実をリアリズム基調で描いているから臭みが殆どない。
 多分に帝政ロシア側の暴虐が強調されている嫌いがないこともないが、革命が起こるということはそれだけ酷いことがあったのだということを証明する。僕なども、特に初回鑑賞時には、義憤に駆られてのめり込むように観ていたものだ。プロパガンダに乗せられたと言えばそれまでながら、面白かったのは事実である。サイレント映画とは言え、大きなスクリーンで観る効果は抜群だった。
 だから、1980年当時高校時代からの親友で今でも年賀状だけは交換しているK君が“モンタージュが凄いのは解るけど、面白くなければなあ”と言ったことに対し僕は“僕には面白かったのだ”と事実を告げたものである。

そのモンタージュ(編集)の妙。圧巻である。今となっては怒れる獅子の像の挿入など児戯のように見える所もあるが、ショットが一々ダイナミックで凄い迫力を呈するからそんなことも忘れて見入ってしまう。面白くないと仰る方はお話しか追っていないのを自ら告白しているのも等しい。

実はサイレント後期の1925年ともなればモンタージュなるものは、D・W・グリフィスもチャールズ・チャップリンもフリッツ・ラングもF・W・ムルナウも独自の手法できっちりやっていた。特にグリフィスは早々に彼のモンタージュ手法を確立したが、最も分かりやすい方法論として論理的にそれを見せたのがエイゼンシュテインということだ。一部で確認される、エイゼンシュテイン以前の映画は漫然と撮ったものを漠然と繋いだだけという理解は映画史的に正しくない(ジョルジュ・メリエスの特撮も編集の代表的例である)。そうは言っても、この作品の映画史上の位置と価値は全く揺るがないのだ。

男も女も大人も子供も有名人も無名人もTV局は“さん”付けで呼ぶことが多くなっている。平等という主旨らしいが、その間にある差を認めない平等は決して公平ではない。それは社会主義国の失敗で分かったはずなのに。僕はTV局の方針を共産主義的にすぎるとして危惧している。

この記事へのコメント

2019年05月27日 22:20
こんばんは!
お呼ばれされたようですので、参りましたwww

プロパガンダというと見もせずに否定と拒絶から入ってしまい、
食わず嫌いを増やしてしまうのはなんとももったいないことです。

後世の監督がオデッサを引用するのはそれだけ映像のインパクトが強いからですし、しかもソ連の映画をアメリカの監督が使う訳ですから、どれほどの影響力の強さだったのかというのも分かって欲しいですね。

話は変わりますが、ウェブりの仕様がまた変わるようですね。各記事のカウンター機能がなくなるとか、トラバが出来なくなってしまうとか、使い慣れているものが変わるとオジサンはついて行くのが難しくなりますwww

暑くなりましたので、御身体ご自愛ください。

ではまた!
オカピー
2019年05月28日 22:20
用心棒さん、こんにちは。

>プロパガンダ
国家のプロパガンダというのは僕とて好きになれませんが、少なくとも観てから作品の価値を判断する気持ちは欲しいですね。
これだけ迫力満点の映画を観ないのは本当に損だと思います。

>ウェブリの仕様
そうでしたか。
各記事のカウンター機能は、当方など大したアクセス数ではないものの、記事によって大きく違うなど興味深かったのですがねえ。
 トラバ=TBは各ブログ削除の傾向がありますが、維持していたウェブリはそれが売りになっていたのですが。映画ブログはTBが非常に重要なので、益々ブログの人気が衰えるでしょうねえ。

異常な暑さです。用心棒さんもご病気がありますので、お気をつけてください。
2019年05月29日 00:05
こんばんは!

>観てから
観てもいないのに判断するのはもったいないですし、曇りのない眼でフィルムを確認して、それから感想を言っても遅くはないですね。

>TB
TB自体が書いた人のコメントでもあると思っていますし、短くコメントを書き残せない時には考えをしっかりと残せるので良いツールだったんですが、データ容量を喰うのでしょうねwww

ブログは映画日記のようなものだと割り切り、場末の喫茶店でしゃべる感じでやっていくつもりですwww

めちゃくちゃ暑いので、お互いにがんばりましょう!

ではまた!
オカピー
2019年05月29日 22:15
用心棒さん、こんにちは。

>TB自体が書いた人のコメントでもある
全くその通りですね。
ブログ全盛期の頃、一部のブロガーが“コメントなしでTBされた場合、TBは削除します”と仰っていました。これは妙な意見と思い、甚だ残念でしたが、もはやTBそのものが出来ない時代になったのですねえ。

今日はいくらか涼しかったものの、それでも例年よりは暑いらしいです。やれやれ。
2019年06月02日 23:56
こんばんは!

>削除
的を得ないコメントへの返信のほうが苦痛ですよね。
単語の一つやわずかな勘違いに対して
鬼の首を取ったような言葉を書いてくる輩は放置するのが一番です。

その点、ご自分でサイトを運営されている方が
自分の意見をしっかりと書いてこられるTBは悪いとは思わないです。

>妙な
おっしゃる通りですね。TBを送っても返ってこないし、先方からは送って来るくせにこちらのTBは受け付けない設定にしている方もいますが意味不明ですね。

暑くなったり、寒かったりと体調管理が難しい時期ですね。

ではまた!
オカピー
2019年06月03日 21:47
用心棒さん、こんにちは。

>的を得ないコメント
的外れはまだ良い方で、完全な嫌がらせは嫌になりますね。
ブログを初めて数年間は苦労しましたよ。返事に値しないのはさっさと削除しましたが、そうでないレベルのものはやっかいです。

>ご自分でサイトを運営されている方
その通りです。コメントなしでも全然OKですね。もう余り意味のないことになりますが。これからは逆に、必要があれば、コメントの中にURLを入れないといけない。

明後日病院へ行って血液検査とCTをしてもらう予定です。しかし、暑いという予想で、今からうんざりしていますよ。
2019年06月05日 22:37
こんばんは!

>そうでない
劇場に観に行った作品の記事に対して、10年近く経ってからDVDで何度も見て、より詳しく見たり、あちこちで記事を読んだ後にこちらの見落としについてクドクド言われても閉口しますよ。

>コメントの中に
そうですね。そうするしかないのもTBに慣れているので面倒ですね。

>血液検査
ぼくも毎月検査の日々です。一病息災でこれから生きている限り、付き合わねばいけないので絶望も出来ません。

ではまた!
オカピー
2019年06月06日 20:35
用心棒さん、こんにちは。

>クドクド言われても閉口しますよ。
僕もそういうこともありました。こちら本数をこなしますから、見落としは結構あります。

>>コメントの中に
相性の悪いブログでは昔からやっていましたが、これからは全てそうなりますね。

>血液検査
今回は特に問題なし。肝臓関係も改善していました。
CTも問題なしですが、前立腺について「年相応だな」と言われてある意味ショックを受けました^^
2019年06月08日 23:33
こんばんは!

だんだん雨の日が増えてきました。鬱陶しいですねwww

>見落とし
そうなんですよ。神様ではないので、ミスはありますし、それらを指摘する人って、自分はノーミスなんでしょうかね。

映画関連書籍を読んでいても、ちょこちょこ事実誤認のある記事を目にすることもありますが、いちいち言いませんよねwww

>問題なし
なによりです。健康不安と経済不安がなくなれば、人生勝ったも同然ですねww

ではまた!
オカピー
2019年06月09日 19:15
用心棒さん、こんにちは。

>雨の日・・・鬱陶しい
畑仕事がやりにくく、困っています。
一方、老人性乾燥肌で11月から4月いっぱいくらいまでは湿疹ができまくる小生としては、この季節には有りがたい面もあるのですよ。また、稲系の花粉症もこの時期はほぼ止まるという利点もありますよ。

>事実誤認
ありますね。僕の尊敬する双葉十三郎先生や猪俣勝人氏のストーリー紹介にもあります。理解に差し支えないものなので、優れた人でも間違えると思うと、凡人の僕は安心します^^

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