映画評「探偵はBARにいる3」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2017年日本映画 監督・吉田照幸
ネタバレあり

東直己のハードボイルド小説の映画化シリーズ第3弾。日本人はそもそもハードボイルド小説を碌に読まないだろうし、ハードボイルド映画の愛好家も限られているから、僕のようにハードボイルドとして見るのは少数で、コミカルで人情的なミステリーとして見る方が大半であろう。人情ものとしては程々楽しめるから、本作の“Yahoo!映画”での評価は抜群に高い。
 僕はハードボイルドの原則に一番則っている第一作を大いに買い、逆に全く無視した第二作を酷評したが、この第3作はミステリーとしては弱体ながら、探偵が女性の事件に巻き込まれてひどい目に遭うというフィリップ・マーロウばりの設定が嬉しく、中の中の上くらいとしておく。

舞台はいつも通り北海道。雪上で蟹を輸送中のトラックが道を封鎖する車に邪魔され、近寄った運転手が殺され、助手席に乗っていた妙齢美人・前田敦子が震えおののく。これがプロローグで、続いて学生バイトの相棒松田龍平から彼の知人の恋人を探すのを携帯を持たない探偵・大泉洋が頼まれる。ドラマツルギー上その恋人が敦子ちゃんであることは誰でも理解する。
 探偵氏は通帳記録から彼女が風俗店勤務であることに気付くが、店がリリー・フランキーの幹部を務める暴力団一派系列であった為に調査直後に痛い目に遭わされるが、そこで見た女がかつて彼が少し面倒を見た線の細い女・北川景子だったので意外な感を受ける。一派と敵対する暴力団の幹部・松重豊の協力を得るなどして調査を進めるうち、どうも内部抗争があるらしいと判ってくる。

というお話で、女性の切ない人情噺として終わり、上述したように胸を打つものがなくはない。主人公の楽観的な未来の想像はハードボイルド探偵ならではの反語だろうか? 

コミカルさとハードボイルドさとは本来水と油のような関係かもしれないが、それに関してはこのシリーズは意外とうまく行っている。
 携帯時代に、まして探偵が携帯を持たない反体制的な面白味は、第二作に続いて今回も余り活用されない。その設定を知っていると、相棒に渡された携帯で松重氏に電話をする場面は間が抜けた感じになってしまう。

“間が抜けた”と言えば、序盤の事件描写にもそれがある。殺した犯人が荷物(中身は蟹の箱に忍ばせた覚醒剤)を運ぶのに車を近くに持って来ない。それを俯瞰で撮るから余計に犯人が間抜けに見える。これは【Yahoo!映画】の或る投稿者の仰る通りである。幸い僕はここで気が抜けなかったから良いが、うるさ型の中にはそういう人もいるだろう。

一時期僕は刑事を主人公にした「探偵物語」の邦題を笑っていた。しかし、よくよく考えると私立探偵という言葉がある。ということは公立探偵もあるということ。公立探偵とは刑事のことである。実際昔のミステリーを読むとたまに刑事のことを探偵と呼称するのに遭遇する。そう、「探偵物語」が作られた1950年代に刑事を探偵と称しても間違いではなかったのである。

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