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zoom RSS 映画評「ベロニカとの記憶」

<<   作成日時 : 2019/04/22 09:08   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2017年イギリス映画 監督リテーシュ・バトラ
ネタバレあり

英国の権威ある文学賞・ブッカー賞を受賞したジュリアン・バーンズの小説「終わりの感覚」をインド出身のリテーシュ・バトラが映画化した作品。最近は出版が先行した場合、書籍の題名を無視して(文学ファンを無視して)映画ファンの興味をそそりそうな邦題を立てる。その邦題が優秀かどうかの問題はともかく、余り良くない傾向のように思う。

ほぼ現在の英国。カメラを販売している紳士トニー(ジム・ブロードベント)が、凡そ半世紀近く前の大学時代に交際した女性ベロニカ(当時フレイア・メイヴァー)の母親セーラ(エミリー・モーティマー)が亡くなり、その遺言により学友で大昔に自殺したエイドリアンの日記を受け取ることになるが、娘のベロニカ(現在シャーロット・ランプリング)の反対により受け取れない。
 そこで有能な弁護士である元妻マーガレット(ハリエット・ウォルター)に相談がてら若い時の経験を話していくのだが、ベロニカと再会したことから自分でも忘れていた不都合な真実を知り(思い出し)、また意外な事実をも知らされることになる。

というお話はちょっとヒューマンな印象もあるが、見た目ほど易しく理解できる作品ではない。但し聞くところによれば原作の方が難物であるらしい。図書館に置いてあるし、短い作品なので読んてみたらもっと腑に落ちるかもしれぬ。

人と会うことで真実を知っていくというのは最近猫も杓子も使う形式であるが、本作の場合は自分自身のことであり、会うのも当事者だけなのに、真実や意外な事実がもたらされる、というところに面白味がある。小説としてはミステリーの分野に入れても良いが、映画としては余程間口を広げない限りはミステリーと理解しない人が多いだろう。

その奥に揺曳するのが記憶と意識の問題で、これは原作の重要な主題であるらしいが、映画はそこまで突っ込んだ感じはない。具体的には、例えば、ベロニカの実家を訪れた後自殺を遂げたエイドリアンの歴史に関する言及がそれに当たる。
 主人公トニーが忘れたことの中で最も大きなものは、彼がエイドリアンとベロニカにひどい内容の手紙を送っていたこと。これによりベロニカは彼が想像する以上に辛い人生を送ることになったことを知り、彼は遂に生れて来た自分の孫を見るに及んで他人に対する態度を改めるのである。

事の発端からしてベロニカの母セーラがかなり色情狂的なところがあり、それが終盤の展開に相当大きな意味を成す。主人公が軽薄であるとして嫌う方が多いが、僕はそもそも人間は愚かで弱いものであるという人間観を持っているから、特段何とも思わない。実際に交際して好感を持てるかどうかと、人間観察を目的とする映画において登場人物をどう思うかは全く別の問題である。

格調のある伝統的な英国映画の気分に横溢、僕は捨てがたい作品と思う。

正確には日本語として成り立っていない邦題と考えるが、最近は皆こういう日本語を平気で使います。“そうですか”を疑問形と誤解し(失礼に当たるとして)避ける人がいる時代ですからね。

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ベロニカとの記憶
イギリス・ロンドン。 年金暮らしをしながら小さな中古カメラ店を営む男トニーは、元妻マーガレットと一緒に、もうすぐシングルマザーになる娘スージーの出産準備を手伝っている。 ある日、40年も前の初恋相手ベロニカの母親セーラが亡くなり、トニーに遺品を残したという通知が届いた。 それは、トニーの親友で恋敵だったエイドリアンの日記だという…。 ミステリー。 ...続きを見る
象のロケット
2019/04/24 00:29

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