映画評「歓びのトスカーナ」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2016年イタリア映画 監督パオロ・ヴィルツィ
ネタバレあり

ワケあり女性二人の逃走劇という点で「テルマ&ルイーズ」(1991年)を思い出すが、内容的には「真夜中のカーボーイ」(1969年)女性版といった印象を僕は持つ。というのもロード・ムービーとしての要素は大してなく、二人が同病相憐れむ関係にある病人だからである。「真夜中のカーボーイ」のテキサス・ボーイ(ジョン・ボイト)もある意味病人であっただろう。

大体において躁状態にあり虚言症と思われる中年女性ヴァレリア・ブルーニ=テデスキが開放的な精神療養施設“ヴィラ・ビオンディ”で女王然と振舞っている。新しくやって来たガリガリの30歳くらいの女性ミカエラ・ラマツォッティには診療師のふりをして接する。
 ヒロインが街中で色々な人に声をかけているのかと思いきや、そこはかなり広い施設敷地の中の出来事と判るという序盤がなかなかの傑作

この新人さんが気に入ったヴァレリアは遂に相部屋になって彼女に影響を与え、やがて彼女が精神の病をさらに深刻化させる原因となったまだ幼い息子と再会させてやろうと奔走、病院を抜け出す。
 ミカエラは直接会うことは叶わないが、後日海辺で少年が記憶していたことに感激、養父母が見守る中しばし海で戯れる。

二人が名乗らない親子のスキンシップをするこの場面が非常に強い印象を残す。やや心配そうだが妨害しようとしない養父母の扱いが頗る良い。ヴァレリアが虚言症であることは確かだが、自分が伯爵夫人と言ったり、夫が有名弁護士というのは満更嘘でもないようだ。彼女の実家は彼女のせいで傾いたとは言え、映画撮影に貸し出すような豪邸であるし、前夫なのだろう、現在の妻や子供のいる前で弁護士と逢瀬を楽しみ、昔なじみの家政婦に声を掛けたりする。こうした彼女の行動がユーモアを生み出す。

さあここで問題だ。昨日の「ザ・キング」ではシリアスな(内容の)映画にギャグは要らないと言った。それではこの作品ではどうだろうか? 全く違うのである。この映画の可笑し味はギャグではなく、彼女の非常識な行動自体が起こすユーモアであり、比較的シリアスな場面と対比してもトーンが一貫しないという印象を生まない。扱いがリアルであるから、精神病という重大な問題を扱う映画においても問題がない。そうでなくても特に家族にとって重苦しい精神病をシリアス千万に扱ったら観ている方がやりきれなくなってしまうではないか。

イタリア映画の輸入は昔に比べて少ないが、輸入される映画には佳作・秀作が多い。

トスカーナと言うと、何故かダイアン・レインを思い出す。勿論「トスカーナの休日」という作品があるからだが、ちと不思議でござる。

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    Excerpt: イタリア・トスカーナ州にある精神診療施設ヴィラ・ビオンディ。 ここでは心に問題を抱えた女性たちが、庭で寛いだり農作業をしたりしながら、社会復帰するための治療を受けている。 自称“伯爵夫人”のベアトリー.. Weblog: 象のロケット racked: 2019-04-21 09:14