映画評「ザ・キング」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2017年韓国映画 監督ハン・ジェリム
ネタバレあり

WOWOWは韓国映画を大量に放映しているが、韓国映画特集ではまず観ることがないので、【W座からの招待状】のような特別扱いは良いのかもしれない。最近この名物番組のセレクションは、中級邦画の増加など眼を覆いたくなる酷さなのであるが、この作品の中味はなかなか面白かった。韓国がいかに独特な変な国であることがよく解るからである。いや、僕は嫌韓とは正反対の人物で、日本も海外から見れば相当に変なところが少なくないと思いつつ言っていることを承知しておいてください。

権力を掴むのは検事になるのが一番と気づいた不良少年パク・テス(チョ・インソン)が、喧嘩三昧の日々から一転、猛勉強の末にソウル大学合格、所期の目標を達成する。
 キャスターをする富豪の娘と結婚した彼は、政治家と強いパイプのある部長検事ハン・ガンシク(チョン・ウソン)からの圧力で、レイプ事件を内輪に収めたのを手始めに、ガンシクの手足のようになって幼馴染チェ・ドゥイル(リュ・ジュンヨル)が手下となっているヤクザと協力関係を築くことになる。
 政治家の情報も握る一部検事たちは自ら推す政治家が大統領になるかどうかが自分たちの出世に関係するからその結果にヒヤヒヤする一方、そうならないように様々な画策を繰り出す。
 しかし、ちょっとしたことからガンシクの信用を失ったテスは左遷させられ、やがて辞職する羽目になる。

最後までは書かないもののこんなお話で、何が面白いかと言えば、検察が政治の行方を決めてしまいかねないことである。だから大統領が変わると自分の保身の為に検事たちが積極的に動くので、どこの国でも多かれ少なかれある筈の政権トップの不祥事が繰り返しあらかさまにされることになるのである(一族を重視する民族性も不祥事を起こす要因だが、本作の理解において発生の要因は余り重要ではない)。これが面白いと言わずに何が面白い? 
 同時に、歴史的成功経験が生み出した国民の強さが司法にさえ影響を与える。国民が強く、次いで司法が強い。それが日本にとっては甚だ迷惑なのであるが、それは措いておく。

映画としては、実際の大統領の名前と映像がそのまま使われているところが素晴らしい。実名で政治風刺など全くできない我が国とは正反対で羨ましい。これも国民が強い故であろう。国民の政権に対する影響力が日本と韓国の中間くらいになれば、国民にとっては理想的であろう。

また、ごく一部とは言え検事があれほど権力を握る一方で、大統領選の行方を占いに頼るといった奇妙な行動は、韓国大衆映画らしいお笑いであると同時に、実際にもそれに近い精神性がまだあるのではないかと想像され、妙な民族性だなあと思う次第である。
 しかるに、僕は、本来シリアスなタッチに統一されるべき映画に、トーンを崩してしまうこういうギャグは入れるべきではないという立場なので、全体としては感心できない映画ということになる。勿体ない。しかし、十数年に渡って指摘してきたように、これが韓国大衆映画の水準なのである。

先日の新聞に“独裁的な権力者は退くと大変なしっぺ返しが来るのが世の常道”と書いてあった。韓国は典型的な国であろう。

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