映画評「ハッピーエンド」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2017年フランス=オーストリア=ドイツ合作映画 監督ミヒャエル・ハネケ
ネタバレあり

「ハッピーエンド」というタイトルの映画がハッピー・エンドで終わるわけがない。まして監督が不快な後味の映画を作ることにかけては定評のあるミヒャエル・ハネケであるからには。

フランスはカレーで建設業を営むロラン家のお話。
 まずその建設現場で崩落事故が起こる。社長イザベル・ユペールの息子で専務フランツ・ロゴフスキは被害者に謝罪に行っても一方的に相手に殴られるだけ、精神の不調に陥っていく。
 イザベルの弟で医者マチュー・カソヴィッツが間もなく13歳になる前妻との娘ファンティーヌ・アルデュアンを一家に(一時的に)引き取る。母親が中毒で入院、やがて死ぬからである。しかし、娘が煩い母親を毒殺したというのが真実だ。
 少しボケているようにも見えるイザベルらの父ジャン=ルイ・トランティニャンは孫娘に寝たきりになった老妻を絞殺したことを告げる。自殺を常に考えている祖父は、チャットで女性と変なやりとりをしている父の行動の為に自殺未遂をした孫娘の秘密を嗅ぎ取ったようなのである。死に興味を持つ人は同じ傾向の人に敏感になるらしい。彼女は同級生を毒殺しようとした過去を告げるが、母親の毒殺については無言を貫く。
 イザベルは業務提携の相手で英国人のトビー・ジョーンズと婚約、そのパーティーに息子が乱入して騒動を起こしている最中に祖父は孫娘に車椅子を押してもらって外に抜け出し、海岸まで行き、後は一人で海に入って行く。死に取りつかれたような孫娘はそれをスマホで撮り続ける。

意図的に内容をぼかした作風で2、3ヶ所はっきりしない部分があるが、凡そそんな話である。

誠に寒々として文字通り“殺風景”な家族の姿で、ユーロトンネルのフランス側の出入り口で移民の町カレーらしい情景も少し交わっているが、最終的に浮かび上がるのはIT時代故のディスコミュニケーション。
 それを一番明確に示しているのは孫娘の行動で、人や動物が死ぬ事に対して無感動、その様子は観ているだけでゾッとする。誠におかしな時代で家族との会話はなくても友人からメールの返事が来ないとイライラするというのはよく聞く話で、ハネケ先生は人間の嫌なところを描き続けてきたとは言え、人間がどんどんダメになって行くのを良いと思っているはずもなく、こういう内容になったのであろう。

寝たきりの老妻を殺したというトランティニャンの設定が「愛、アムール」と関連しているのが興味深い。彼の職業が違うので続編ということにはならないが。

上述したような意図的にぼかされた部分があるので、それを掴む為にも2、3回観た方が面白くなりそうだ。しかし、個人的にはもう少しはっきり作ったほうが良いと思うので、採点は☆☆☆(見ても良い)に留めておきます。

墓参で遅くなりました。

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