映画評「オリバー!」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1968年イギリス映画 監督キャロル・リード
ネタバレあり

チャールズ・ディケンズの名作「オリヴァ―・ツイスト」のミュージカル映画化で、キャロル・リードが監督というのは畑違いの勘が強いが、何故かアカデミー監督賞と作品賞などを獲ってしまった。1968年のライバル作品も弱く無かったろうに、リード作品としてはさほど良いとは思えないこの作品が受賞したことにリード本人が当惑したのではないかとさえ思う。2回目の鑑賞。

お話はお馴染みだが、2005年にロマン・ポランスキーが映画化した時に僕が書いたストーリーを流用して、改変のある部分を修正し役者名を変えて記しましょう。

19世紀中頃の英国、孤児オリヴァー(マーク・レスター)は救貧院から追い出され引き取られた葬儀屋から逃げ出し、着いたロンドンでスリ少年ドジャー(ジャック・ワイルド)に救われ、泥棒団の首領フェイギン(ロン・ムーディ)の家に住まわされることになる。
 少年たちのスリを見学している時誤解で逮捕されたのが怪我の功名、被害者の老紳士ブラウンロー(エドワード・ハードウィック)に引き取られるが、再び貧民窟へ引き戻される。
 フェイギンの相棒ビリー(オリヴァー・リード)の情婦ナンシー(シャニー・ウォリス)が不憫に思ってブラウンローと連絡を取った為に殺された後、この事件の導きで泥棒団は解散の憂き目(?)に遭い、オリヴァーはブラウンロー(実の祖父と判明)の許に戻る。

原作やポランスキー版と違って一網打尽とはならず、ファギンとドジャーはコンビを組んでまた悪党稼業をし続ける。従って、Allcinemaのストーリー説明は間違い。
 ビリー以外の悪党は、哀れなナンシーを全くの別格として、原作より善人寄りに描いている。19世紀の厳しい環境下で彼らは犯罪をせざるを得ないのだと同情的な感じさえ漂っている。そうした社会性を表現したい為に、美術に後述する本物らしさを追求したのではないか。

ミュージカルの性格としてはブロードウェイの感覚に近く、最近の人にも割合受けそうな作り方になっている。ミュージカルらしく非現実的なところがある一方で、美術は後年のポランスキー版にも似てリアリズム基調で相当本格的。作品賞・監督賞は疑問だが、美術監督賞・装置賞は納得である。

楽曲は特に印象深いものはないが、"Who Will Buy?"という花売り娘の歌から子供や官憲を交えての野外への群舞と続いていく大がかりのナンバーは見どころと言うべし。

当時15歳か16歳のジャック・ワイルドは10歳のマーク・レスターと殆ど体格が変わらない。非常に小柄だったのだな。

1972年頃【スクリーン】誌上で、レスター派とワイルド派のファンが非難合戦しているのを読んだことがある。単に好みの問題なのに大袈裟だと思った。しかし、現在ネット上で繰り広げられているような人格否定のようなものではなく、どこかのんびりしたものがあった。40年ほど購読したが、一度も投書したことはなかったな。

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この記事へのコメント

浅野佑都
2019年03月14日 19:53
 「オリバー!」は、「小さな恋のメロディ」を劇場で観た少しあとに観まして、つい最近DVDで観直しました。
オリヴァー・リードは、ディケンズの描く、ビクトリア朝のロンドンの下町の禍々しい雰囲気をよく出していましたね。
キャロル・リードの親戚筋だそうですね。

ぼくは、ジャック・ワイルドが好きだったので、この作品でも彼に目が行きました!
僕の周囲でも、洋画好きの従姉たちには圧倒的にワイルド人気で(笑)
不良っぽさの中にある純朴さみたいなのが、女の子にはたまらないのでありましょうね!

彼は、大人になってからはあまり役に恵まれず、「ロビン・フッド」で観たくらいか・・。お定まりのアルコール依存や病気も患ったようですが、彼の演技への情熱は本物だったと思います。マーク君のほうは、整体師になったそうで、身の丈に合った堅実家だったのでしょう。
浅野佑都
2019年03月14日 20:02
 続きます。

>1968年のライバル作品も弱く無かった

「冬のライオン」なども68年ですが、今の感覚で普通に評価すれば、文句なくキューブリックの「2001年宇宙の旅」が作品、監督賞となるのでしょうね・・。
当時だと、SF作品というのが影響しましたか?・・。

とにかく,アカデミーの、特に作品賞は恣意的に発表されることがままありますね。
「夜の大捜査線」なんかも、順当なら、「卒業」でしょうに(笑)
背景に公民権運動に一石投じようという意図があったのか、と勘繰りたくなります。
『シェイプ・オブ・ウォーター』は良かったですが、「レディ・バード」を僕は推しました。(次点は「スリー・ビルボード」)と思います・・。

最悪に思えたのは、「ブロークバック・マウンテン」が「クラッシュ」に敗れた年ですね!
当時でこそ後者にも新鮮味はあったにせよ、今となっては駄作とまでは言いませんが、格調の高さや問題提起の豊富さなど、誰が観ても彼我の差は明らかだと思います
オカピー
2019年03月14日 21:05
浅野佑都さん、こんにちは。

>つい最近DVDで
それはまた奇遇で。僕は数年前に衛星放送で放映されたものを録画し、ブルーレイに落としたもので観ました。

>圧倒的にワイルド人気
僕の周辺はミーハーでしたからレスター派が多かったような気がします。まあそれほど恒常的に映画を観る知り合いも余りいませんでしたが。
 ワイルドは演技がしっかりしているという評判でしたし、確かに憎めない不良という印象がありました。それでも仰るように大人になると余り役に恵まれず、比較的若くして亡くなってしまいましたね。

>当時だと、SF作品というのが影響しましたか?・・。
僕の映画史観では、1968年が「2001年」によりSFが映画としての市民権を獲ったSF元年だから、まだ偏見もあったでしょう。

>「レディ・バード」
まだ出ませんよTT(たまには直接的に金を出して観ろと思っている人も多いでしょうねえ)。

>「クラッシュ」
本当に大したことなかった。ああいう時系列操作型は、それほどでもないお話を凄い話と勘違いさせるので、僕は当時から過大評価と言い張っていました。その意味では今日アップした「カメラを止めるな!」もそれに近いかもしれませんが、予想以上にアイデアが良かった。
 「ブロークバック・マウンテン」は、男性の同性愛映画が苦手な僕が一年遅れのベスト10の1位にしたくらいですから、良い映画だったんですよ(笑)。僕がアカデミー会員より優秀な評者などと申すつもりは毛頭ありませんがね。

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  • オリバー!

    Excerpt: 母親を知らず救貧院で育ったオリバー少年。彼は絶望と飢えの世界から逃れ、ロンドンにたどり着きスリの仲間に加わるが…。 C.ディケンズ原作『オリバー・ツイスト』のミュージカル映画。 Weblog: 象のロケット racked: 2019-03-15 10:08