映画評「孤狼の血」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2018年日本映画 監督・白石和彌
ネタバレあり

終戦後の暴力団の抗争を扱った実話もの「仁義なき戦い」(1972年)へのオマージュに満ち満ちたバブル期版で、柚月裕子の同名小説の映画化。監督は白石和彌。

広島県は呉市ならぬ呉原市(架空だが余りにもストレートな命名)。
 県の大暴力団の一部を成す新勢力“加古村組”が配下であるサラ金の人間を殺す。彼らに敵対する地場組織“尾谷組”を支援するのは呉原東署の大上刑事(役所広司)で、何かと良くない噂が立っている。彼とコンビを組まされる若手の日岡刑事(松坂桃李)は、実は県警から彼を調べるように派遣された内偵である。
 実際傍にいても法律無視でやりたい放題の大上に日岡の正義感がむらむらと湧き上がり堪忍袋の緒が切れる直前まで行った時に、大上の真の目的が暴力団のバランスを取ることで堅気の人を守ることにあることが遂に解るが、時既に遅し、大上は恨みを持つ“加古村組”に殺されてしまう。
 日岡は甘っちょろい正義感を捨て、大上のやり方に倣って暴力団と対峙することを決意する。

「仁義なき戦い」のバブル期版と言ってはみたものの、刑事が主人公であるからムードは相当違うし、ミステリーのような感触もあるので、必然的に任侠映画の後味は余り伴わない。

様々な映画が扱ってきたように、法律上の正義だけで世の中が健全に維持できるならこんなに楽なことはなく、時には反法律的でも道徳的には正しいかもしれない方法で処する必要もあるだろうし、さらに一見反法律的・反道徳的に処すのがベストということもあるだろう。
 大上が選んだのは最後の道で、彼は暴力団という厄介な存在が厳然とある以上正面から排除しようとすると事態が複雑になり、時に堅気が巻き込まれることになるということをよく知っていたのである。

この大上の人物像が本作の面白さの第一で、役所広司としては既に自家薬籠中の物とした迫力の演技。彼の残した日記の内容やクラブのママ(真木よう子)が教える大上の真実など、後半人情に傾き厳しさを逸する感じにはなっているが、大衆映画として程よい甘さであろう。
 県警が大上の日記(厳密には閻魔帳ですかな?)を得ようとした真の目的や、日岡が恋人にするドラッグストアの女性(阿部純子)の配置に感じられる“ちょっとしたミステリー味”も楽しい。

海外の刑事映画には、この手の“一見悪徳刑事”を主人公にした作品が多かったね。最近は一時ほど見ない。“大上”は“狼”のもじりだろうか?

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  • 孤狼の血

    Excerpt: 昭和63年、暴力団対策法成立直前の広島・呉原。 新たに進出してきた広島の巨大組織・五十子会系の「加古村組」と、地場の暴力団「尾谷組」との抗争の火種が燻り始めた。 そんな中、「加古村組」関連企業の金融会.. Weblog: 象のロケット racked: 2019-02-09 09:27
  • 『孤狼の血』('18初鑑賞40・劇場)

    Excerpt: ☆☆☆☆☆ (10段階評価で 10) 5月18日(金) 109シネマズHAT神戸 シアター6にて 13:20の回を鑑賞。 Weblog: みはいる・BのB racked: 2019-02-09 13:58
  • 「孤狼の血」

    Excerpt: 2018年・日本/東映=KADOKAWA、他 配給:東映 監督:白石和彌 原作:柚月裕子 脚本:池上純哉 企画プロデュース:紀伊宗之プロデューサー:天野和人 音楽:安川午朗 音楽プロデューサー:津島玄.. Weblog: お楽しみはココからだ~ 映画をもっと楽しむ方法 racked: 2019-02-15 22:29