映画評「彼女が目覚めるその日まで」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2016年アメリカ=アイルランド=カナダ合作映画 監督ジェラード・バレット
ネタバレあり

またも実話もの。昔の映画は“実話であること”を売りにしなかったがねえ。

新聞社ニューヨーク・ポストで働く21歳のスザンナ(クロエ・グレース・モレッツ)は、先輩マーゴ(ジェニー・スレート)のお墨付きを得てちょっとした記事を任せられるが、その内容にデスクのリチャード(タイラー・ペリー)からなっちょらんと叱られる。続くスキャンダル議員のインタビューでも不躾な態度をとってデスクはかんかんになる。
 ところが、これは彼女の能力・性格の問題ではなく、脳の奇病が起こす症状であったのだ。通い始めた病院は病理的な異常がない為精神病を疑い、精神科のある病院への転院を進めるが、離婚していた両親(父:リチャード・アーミテイジ、母:キャリー=アン・モス)が頑と拒否する。やがて彼女は身体を動かすにも難儀するようになる。
 そこで駆り出されたのが現在は教授を務める元医師ナジャールで、彼は彼女の書いた時計の絵の数字が半分に偏っていることに注目、新たに定義されたばかりの難病“抗NMDA受容体脳炎”であることに気付き、治療を行っていく。

な~んだ、日本の実話もの「8年越しの花嫁 奇跡の実話」と同工異曲じゃん、とがっかりするには及ばない。こちらのほうが映画としてはがっちり出来ているからである。
 背景となる時代が2年ほど古いあの作品では遅れを取った為にヒロインは長いこと昏睡したが、こちらはナジャール医師が両親に言うように“早期”である為昏睡することも重篤な記憶障害に陥ることもなく、ほぼ元通りに復活する。

どちらのボーイフレンドも実に立派で甲斐甲斐しく彼女たちに寄り添うのだ。感動的ですなあ。

しかし、「8年」がそれを主題にしたメロドラマに仕立て上げられていたのに対し、こちらは彼女の病状が即実的に、しかも内側と外側両面から描かれて行くので、この奇病に関する外面的理解を進める効果が大いに認められるのである。その代わり、病気の原因や対策には全く触れられない。しかし、病気のキャンペーンではなく商業映画であるのだから、それがないとしても価値を減ずることはない(どころか却って良い)と思われる。この病気がもたらす恐怖たるや並大抵ではない。それが解ればとりあえず良いのだ。

いつか“日本人は題名に内容を求める”と言ったが、加えて“情緒性も求める”と言っておこう。

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  • 彼女が目覚めるその日まで

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