映画評「バース・オブ・ネイション」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2016年アメリカ=カナダ合作映画 監督ネイト・パーカー
ネタバレあり

WOWOWのパンフレットに《PG12指定》とあったので日本劇場公開映画と思って観たら、Allcinemaに行くと未公開とされていた。通常未公開の場合は《PG12指定相当》などという表記なので、《指定》のないことにすっかり騙された(笑)。

しかし、内容はなかなか充実していて、時間の無駄等の印象は全くない。敢えて言えば、丁度一年前に観た「ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男」の二番煎じのような印象を禁じ得ないのだが、こういう義憤・公憤に駆られるような作品は概ね好みなのである。

南北戦争より30年くらい前のお話で、人種差別意識の薄いターナー夫人(ペネロープ・アン・ミラー)のおかげで穏当な扱いを受けて黒人ながら説教師となるほど学問を積んだ奴隷ナット(ネイト・パーカー)は、幼い頃親しく遊んだ現在の主人サミュエル(アーミー・ハマー)と綿花農家の奴隷たちに説教行脚をするうち、白人の黒人に対するひどい扱いを幾度となく見、自分の妻(アヤ・ナオミ・キング)が強姦されて益々怒りに駆られ、次第にサミュエルが白人の横暴さを発揮し出すのに堪え切れず、遂に農家の白人たちを襲う暴動を引き起こす。

という内容で、Wikipediaでは実際のナットは主(おも)に神に導かれる形で暴動を引き起こしたように読めるのに対し、映画版では非道な白人の扱いへの怒りの積み重ねのほうに重点が置かれている感じで、宗教的な部分は補助的な印象に留まる。それでも処刑場面にナットが黒人版キリストを意識していたように感じさせるところがあり、必ずしも事実と大きく異なると断定もできない。同時に、妻への暴行は事実ではないとの由で、“怒りの積み重ねが暴動を引き起こす”という僕の最初の理解もあながち間違いと言えない模様。

内容的に日本劇場公開に値し、IMDbの評価(6.3)ももっと高くて良いが、どうも主役を演じ共同脚本・監督も兼ねたネイト・パーカーの強姦疑惑が相当影響を与えたらしい。僕は映画の外の事件が映画の評価に影響を与えるのは間違いであると思うものの、世の中はそういうものなのだろう。
 WOWOWの表記に《相当》がなかったのは、本作の公開が決まっていて映倫のチェックを受けていたからだろう。

因みに、原題 The Birth of a Nation は悪名高き名作「国民の創生」(1915年)と同じ。あちらはKKKが黒人をやっつけて白人の危機を救いヒーローになるお話。黒人差別が顕著なので、映画的に非常に優れてはいるものの、鑑賞をお薦めしかねる。実際僕も映画評を書くのに躊躇せざるを得ない為再鑑賞していない。監督のD・W・グリフィスが「散り行く花」(1919年)でアングロサクソンを“野蛮人”と批判するのは前述作に対する反省だったのかもしれない。

新井浩文が強制性交(強姦とどう違う?)容疑で逮捕された。しかし、それによって映画の公開が自粛されたり、まして古い映画までお蔵入りになるかもしれないということはどうなのか? また、アメリカでは大きな賞の前にこの手の“事件”が“発覚”することが多い。大人の事情が働いているような気さえする。

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