映画評「リバーズ・エッジ」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2018年日本映画 監督・行定勲
ネタバレあり

岡崎京子という漫画家は新聞の文芸欄で評価の声を読んだことと、7年前の「へルター・スケルター」の映画化によって、知っている。四十数年コミックは読んでいないので、勿論実物に触れたことはない。映画になる女性漫画家のコミックと言えば、他愛ない恋愛青春ものが大半を占めているので、どうしても敬遠しがちだが、岡崎女子の場合は謂わば純文学であるし、何よりも個性的な若手女優である二階堂ふみが主演であるから、躊躇せずに見る。尤も初回放映には気づかず、二回目の放映を録画したのだが。

小沢健二の名前が出て来ることと、携帯電話を使っていないことから、1994年頃のお話と見た。若干残念なのは、ご贔屓と言っても良い二階堂ふみのイントネーションがほぼ21世紀のもので、やや時代色醸成の点で不満が残る。演技と魅力は満点なので、画竜点睛を欠くといったところで大変惜しい。他の役者やセリフにも若干その傾向がある。最近は短いスパンで新しい日本語が生れ、老若男女すぐにかぶれる。僕は言葉に関しては相当に保守であるから、気になって仕方がない。

閑話休題。

無感動な人生を送っている女子高生ふみちゃん(役名:若草ハルナ)は、いじっめ子で性欲が強い同級生・上杉柊平君のガールフレンドだが、ゲイである同級生・吉沢亮君(役名:山田一郎)にも人間的な関心を持っている。彼もその辺りを感じ、河川敷の野原に引っ張って行き秘密の宝である骸骨を見せる。これを共通の宝とするもう一人に、飽食しては吐くことを繰り返す下級生のモデルSUMIREがいる。彼らは生より死に魅力を覚える人々である。
 上杉君はふみちゃん以外に土居志央梨をセックス・フレンドとして持っているが、彼女から堕胎費を要求されかつ人間として非難されたことから絞殺しかける。彼女は家に帰ると、非難した引き籠りの姉に逆襲されて流産しかつ重傷を負う。
 吉沢君を恋人と信じ込んでいる同級生・森川葵ちゃんは、彼とつきあっていると誤解したふみちゃんの部屋に火を付け、自分が火だるまになって死ぬ。
 悲惨な出来事が続いてふみちゃんは町を去ることになるが、死にしか興味を持てないように見えた吉沢君から“生きている若草さんが好きだ”と言われる。

平均的な人が全く隅に追いやられた、とても人好きのしない(他人から好感を持たれない)男女6人の群像劇で、彼らの乱れた、或いは行き過ぎたと言って良いであろう行状を見ているうちに陰鬱な気分に陥ってくるが、最後に主人公と言うべきハルナと一郎が人生を、世界を、前向きに捉えられる心境になる、と考えれば、僕には好きにはなれないものの意外とすっきりとした後味が残る。

6人のうち4人の疑似ドキュメンタリーのようなインタビュー場面が挿入されているのが新味で、それ故に彼らの人となりが解りやすくなってもいる。人間が善なるもの、良いものと決めつけている人には全くお勧めできないが、彼らは彼らなりに人生に悪戦苦闘しているわけで、人間そのものに興味があるなら観る価値あり。

“男好きのする女”は、“男好きの女”の意味ではない。男性にもてる女性のことであります。勘違いしている若者が多いので、念のため。

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  • リバーズ・エッジ (2018)

    Excerpt: 「ひょっとして…」とは思ってたのですが、やはり、原作は、岡崎京子の同名名作コミック、だったのですね。1993年に雑誌「CUTiE」で連載されていた岡崎京子の同名漫画(ちなみに、同じ岡崎京子の映画「ヘル.. Weblog: のほほん便り racked: 2019-06-20 10:19