映画評「トレイン・ミッション」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2018年アメリカ=フランス合作映画 監督ジャウマ・コレット=セラ
ネタバレあり

ジャウマ・コレット=セラ監督とリーアム・ニースン主演コンビの作品としては「フライト・ゲーム」に準ずる内容で、より極限状況性が高い飛行機からそれほどでもない列車に変わっただけという感じ。

保険会社を突然首になった60歳の元刑事リーアム・ニースンが元同僚の現役刑事パトリック・ウィルスン相手に愚痴った後、通勤列車の中で謎めいた女ヴェラ・ファーミガに声を掛けられ、最終的に10万ドルが得られる代わりに、終着駅で降り通勤乗客ではない鞄を持った人物を特定しGPSを仕掛けろ、と半分強制のようななぞを掛けられる。実際トイレに前金に相当する25000ドルを発見してややこしい局面に直面、妻エリザベス・マクガヴァンや大学へ進む息子を実質的な人質に取られた為事実上契約が成立してしまう。
 何とか理不尽な契約から抜け出そうと小細工をすると、頼んだ相手が目の前で交通事故死させられるわ、間違った相手にGPSを付けると、その人物が車内にいる彼女の仲間に殺されるわ、理不尽さはどんどん増していく。
 しかるに、これが市長をめぐる汚職事件の証人抹殺の作戦と気づいたからには正義の人ニースンは、仮に対象が判っても差し出したりはしない。すると敵は列車のブレーキを効かなくなる細工を実施、大変なスペクタクル場面が展開することになる。

息をも付かせぬ面白味という意味では「フライト・ゲーム」に遜色ないが、どうも“本当らしさ”に欠けるので、☆一つ分という大きな差を付けた。ここでこの用語を使ったのは、コレット=セラ監督がこの言葉を好んで使ったアルフレッド・ヒッチコックの追随者であると見なしているからである。そもそもの発想が、列車内で主人公が見知らぬ男から交換殺人を持ちかけられる「見知らぬ乗客」(1951年)に似ている。
 “本当らしさ”というのは“リアリズム”より“リアリティー”のことだが、僕がヒッチコックのこの言に見出すのは人間の行動原理に適っているかということ。具体的に、気になったのは主人公ではなく、汚職権力者側の行動のほうで、保身の為にここまで大袈裟なことはするまいという疑問である。

その他細かい疑問は相当あるが、説明するのが大変なので省略。

ヒッチコック的に上手いと感じたのは、妻の指輪の小道具としての扱い。余分な説明がなくても主人公には勿論観客にその意味するところを瞬時に解らせてじまうのが秀逸。まあこれは脚本の手柄かもしれない。
 演出的に気に入ったのは、客のいないところで敵と格闘する主人公を別の車両から撮るショット。当然無音である為、こちらの車両側にいる誰も気づかず観客だけが解るという辺りの見せ方は正にヒッチコック的で痺れてしまう。個人的には、この1ショットを見る為にこの映画は観る価値があると思う程だ。

米国文学史上最も重要な古典の一つで僕の好きな「緋文字」の使い方が絶妙。アメリカのインテリは膝を打ったことだろう。しかも、サム・ニール扮する署長の名前がホーソーン。「緋文字」の作者から戴いている。

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