映画評「夜の浜辺でひとり」

☆☆★(5点/10点満点中)
2017年韓国映画 監督ホン・サンス
ネタバレあり

喜劇と悲劇の振幅という泥臭い手法にいつまでも頼っている韓国大衆映画に見切りをつけて現在は殆ど観ないが、本作はベルリン映画祭出品作なのでそういう韓国の水準的作劇ではない筈につき観てみた。実際純文学で、そういう不満はない代わりに、少々一人合点が目立ち個人的には余り気に入らない。

最初の舞台はハンブルク(とどこかのサイトで確認した)。映画監督との不倫騒動に疲れて逃避行した女優キム・ムヒは年上の女性と色々話をした後、海辺で序盤からうろちょろしていた黒い服の男に運ばれる(この段階では全く意味不明)。
 ドイツから帰った彼女は東海岸の都市カンヌンで知人たちと旧交を温める。彼女が住むことにしたマンションでは黒い服の男が一心不乱に窓を拭いている。さらに件(くだん)の監督を含むクルーたちとも飲食を楽しむが、どうしても彼女は爆発せざるを得ない。
 やがて彼女は浜辺で男性に起され、“夢を見ていた”とその男性に言う。

彼女の観ていた夢は多義的な解釈ができ、(1)監督一行との再会が夢であった、(2)それまでの全てが夢であった、(3)映画に出て来ない夢を見ていた、という三種類が考えられる。
 僕が最初に思ったのは(1)であるが、どちらの場所にも彼女の心に落とす暗い影を象徴するかのような黒い服の男が出て来ることを考えると、(2)の可能性が高い。第一幕と第二幕に同じ事や似た台詞の反復が多いのもそういうことなのかもしれぬ。

いずれにしても不倫騒動に疲弊してしまった女優の心境を映し出す内容で、主演のキム・ムヒと本作監督ホン・サンスに不倫騒動が実際にあったらしく、それをそのまま素材にしてしまうところのしたたかさが大変興味深いが、映画を観た後知ったのでは得点源にはならない。
 心境を丹念に追うのは結構ながら、よく解らないところが多いので、結果的に退屈させられる。ズームの使い方も意図不明なものが多く好ましくない。

ベルリンで女優賞を獲ったというキム・ムヒは確かに充実の演技。

黒い服の男は誰にも見え、同時に誰にも見えない存在のように感じる。懸命に窓を拭いている場面では特に後者のように感じられる。

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  • 夜の浜辺でひとり

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