映画評「虹の女神 Rainbow Song」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2006年日本映画 監督・熊澤尚人
ネタバレあり

映画研究会が絡むお話と知って、初鑑賞するには中途半端な製作年に属する作品(WOWOW初放映)ながら、観ることにした。ほのぼのとした上野樹里が好きということもある。

レコード店でバイトする女子大生・樹里嬢が、友人をストーカーする同世代の男・市原隼人の相手をしたことから腐れ縁が出来、大学の映画研究会で撮影中の8mm映画の主演に起用、キスを嫌がる主演女優・酒井若菜の代わりに自分が主演をし、遂に完成する。
 市原君の励ましもあってTVの製作会社に勤め始めた彼女は、その才能を感じた上司・佐々木蔵之介に助言があって本場ロサンゼルスで映画製作を学ぶことにする。

というお話が、不慮の飛行機事故で帰らぬ人になったヒロインを回想する形で暫く進む。

そして、葬儀の後に彼女が完成させたあの思い出の映画を関係者全員で鑑賞した後市原君が彼女の彼への思いを知る、切ない最終章を迎える。

Allcinemaの投稿者が言うように、相似とリフレインが前半と後半とで立場を変えて巧みに呼応し、誠に繊細に作られていて感心しきり。
 しかし、僕が一番気に入ったのは、彼女が失恋する場面のそこはかとない描出、これなり。余りに何気ないので、鈍感な市原君は勿論、少なからぬ鑑賞者が気づかないに相違ない。
 彼女の口利きにより彼が製作会社に仕事を得た後出会いパーティーで彼女は彼に失恋したと感じるのである。つまり、司会者が彼女をステージに立たせたのに男性陣の誰も手を挙げない。恐らく彼女は仕事と称して彼の気持ちを探ったのであろうが、市原君は彼女の思いに全く気付かない。恐らく自分の思いにも。だから、彼女が代筆のラブレターの裏に書いた“鈍感な君が好き”という言葉が切なく響く。
 それを知った後では、学生映画の監督としての彼女がキスを無理強いして主演の女学生を首にするのも恋心がなせるわざかもしれないと思わせる。なかなかに繊細である。

ヒロインに比べて主人公の印象は薄い。中でも8歳年上を隠して主人公に近づいて来る相田翔子のエピソードは内容に比して長すぎるが、ここでも彼の鈍感さと優柔不断さがよく表れてはいる。

熊澤尚人監督は近作「近キョリ恋愛」ではまるでダメだったが、同じ青春映画でも脚本の出来栄えが断然優れている本作では良い感じを出している。水たまりに水平の虹と共に二人が映り込むショットが素晴らしい。最後にももう一回出て来て、切なさをさらに増幅させる。

ここまで放映が遅れたのは何故だろう?

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