映画評「ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2017年日本映画 監督・滝田洋二郎
ネタバレあり

大衆映画としてなかなか良く出来ている。滝田洋二郎監督の作品としては旧作「おくりびと」に近い印象で、マニアには無視されるがミーハーには受ける、そんなタイプである。実際【キネマ旬報】2017年度の批評家選出では僅かに1点しか入っていないのに、読者投票では8位と健闘している。

完全主義ぶりが災いして客に逃げられて今では借金三昧の若きシェフ佐々木充(二宮和也)は、借金返済の為に絶対味覚の才能を生かして思い出の味を再現しては大金を頂戴している。
 ある時中国の老料理人・楊晴明(笈田ヨシ)に呼ばれ、凡そ70年前1930年代満州国の日本人料理人・山形直太朗(西島秀俊)と考案した“大日本帝国食菜全席”のレシピを再現してほしいと言われる。“考案者であれば自分でやれば良いじゃん”と当然なる疑問を覚えるも大金を積まれて調べることにする。

最近流行りの探訪ミステリー型のドラマ展開で、訪ね行く人々の人生航路がなかなか興味深く、その過程で、天皇暗殺計画に見せかけた関東軍の陰謀に彼らが巻き込まれて迎える悲劇の連鎖が明らかになっていく。

これだけであれば、佐々木充は主人公ではなく過去を調べ上げる狂言回しに過ぎないが、例えば過去における料理人の息子である少年が現在において予想外の存在感を示すことで、完全主義者で個人プレイしかできない佐々木充の料理観ひいては人生観にまで影響を与え、結局彼は主人公に上昇し、作品はその心理の変転を描くドラマとして完結する。なかなか練られたお話(原作は田中経一の小説)と感じられた。終盤主人公が真相を知る箇所が些か説明過剰になってまだるっこいが、全体としては高く評価できる。

明日UPする予定の邦画も個と団体(個人主義者の集まりとしての団体)の関係性を扱う。今、大衆的日本映画はこの辺を目指しているようだ。

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  • ラストレシピ 麒麟の舌の記憶

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