映画評「光」(大森立嗣監督)

☆☆★(5点/10点満点中)
2017年日本映画 監督・大森立嗣
ネタバレあり

大森立嗣という監督はどちらかと言えば苦手でござる。「さよなら渓谷」は秀作であったし、本作と同じく三浦しをんの小説を映画化した「まほろ駅前多田便利軒」は後味が良かったが、初めて観た「ゲルマニウムの夜」が極めて不快で、どうしてもそのイメージが強いのである。本作も、三浦しをんの映画化作品としては後味が悪い。

東京の離島・美浜島。中学生の信之(福崎那由他)は同級生の美花(紅甘)とセックスを経験しているが、ある時山林地帯で彼女を犯している中年男に激怒して男を殺してしまう。父親から激しい暴力を振るわれている小学生の輔(たすく=岡田篤哉)は信之を慕って後を付けまわすことが多く、その死体を撮影する。その直後三人が高台にいる時津波が襲い、信之の罪も色々な人や物と共に消し流される。
 25年後公務員となっていた信之(井浦新)は、妻(橋本マナミ)が浮気をしているのに気づく。その相手が輔(瑛太)で、25年ぶりに連絡をしてきたのだ。輔は暴力的な父親(平田満)が現われ死体の写真を証拠に脅してきた為真相を告白し、女優として成功を収めている美花=篠浦未喜(長谷川京子)に脅迫文を送る。
 彼女から三百万円を預かった信之は輔に父親を始末する方策を授け、実は彼自身を亡き者にする計画を立てる。

前述通り後味が悪いのは確かなのだが、後味が悪いこと即ち悪い映画、とは言えない。本作については、解らないことが多すぎる、これが問題なのだ。
 島はどうなったのか。25年後の話から生き残った人も一人を除いて村を去ったということだけが分かる。輔は働けるようになるまで父親と一緒に暮らし、その時に家に置いてきた写真をぐうたらな父親に発見されたということなのだろうが、観客の推測に任せるところが多すぎはしまいか。

何が主題なのかも曖昧。平凡な穏和な生活をしていた大人しい公務員が、25年ぶりに会った幼馴染によって暴力的性向を蘇らせるという話であることだけはよく解る。空想の中で実際には出来はしない妻への暴行を働いてみるシーンがあり、この辺りは不親切ながら映画的興味をそそるところで、ジェフ・ミルズという人の音楽もをれをかき立てるような激しいものが多い。この音楽が相当不評なのだが、うるさいのはともかく、面白いと言って良い。
 純サスペンス映画であれば、暴力性の復活で終わっても良い。しかし、かなり文学性がある本作ではその先が解らないと困るのである。当方の理解力の問題がなきにしもあらずと思いつつ、作品自体に一定以上の問題があると言っても間違いないだろう。

作者の狙いは不明ではあるものの、美花という女性は少女時代から妖婦で、信之は翻弄されてきたという感じではある。

同じ年に河瀬直美が同名映画を発表しているので、題名の後にカッコ付きで監督名を付ける必要が生じた。15年目に入ったこのブログで初めてのことだ。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック

  • Excerpt: 東京の小さな島・美浜島。 14歳の信行と美花は中学生らしからぬ深い付き合いをしており、そんな2人の後を付いて回る幼馴染みの10歳の輔(たすく)は、いつも父親に虐待されていた。 ある日、信行は美花を乱暴.. Weblog: 象のロケット racked: 2019-01-06 00:54