映画評「ルージュの手紙」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2017年フランス映画 監督マルタン・プロヴォー
ネタバレあり

最近はジャンル映画よりドラマ映画のほうが概して面白く、本作の評価などは疑問を持たれる方も多いと思われるが、個人的に惹かれるものがあった。

助産婦をする49歳の女性クレール(カトリーヌ・フロ)が、30年前に家を出た継母ベアトリス(カトリーヌ・ドヌーヴ)から連絡を受ける。脳腫瘍を患ったことから、クレールの父親に会いたいと言うのだ。彼女が“父親はあなたが家を出た後すぐに自殺した”と答えると、ベアトリスは大きなショックを受ける。
 クレールは、息子シモン(カンタン・ドルメール)の恋人リュシー(ポーリーヌ・パリゴー)が子供を身ごもったことで、助産婦として既によく知っているはずの誕生の喜びを増幅し、相対的に死の重みを感じたのであろうか、対称的な性格のベアトリスをその手術後に訪れ、彼女の用を代わりになすなどするうち、継母の自由奔放な生き方に徐々に影響を受けて四角四面の生き方を軌道修正、隣人のトラック運転手ポール(オリヴィエ・グルメ)とアヴァンチュールを楽しむようになる。

本作はそう親切な作りではなく、クレールとベアトリスの関係も暫くはしかと分らず、クレールの心境変化の理由どころかその変化自体が明確に解らないまま進行する。しかし、だからこそ、行間を読み色々と考えることで、滋味が生れて来るのである。思考のプロセスを経て内容が掴めた時に何となくいい映画を観たなあという気になってくるという次第。

ベアトリスが手紙を残して最後に去って行くのも味がある。クレールの気持ちを変える為に舞い降りた天使であるかのような余韻を残して終わり、どちらかと言えばフランス映画の良い面が出た作品と言うべし。年をとった人でもこういう映画を解さない人は多いし、まして若い人にはなかなか理解の難しい境地の作品ではあるけれど、人生の艱難辛苦を経た後見ると良いのではないか。

荒井由実(ユーミン)を思い出させる邦題。昨年の紅白歌合戦で一番印象的だったのは、松任谷由実(ユーミン)が舞台に現れるとaikoが随喜の涙を流したこと。プロの、それももうベテランの歌手のああいう姿は滅多に観られない。

この記事へのコメント

浅野佑都
2019年01月29日 05:38
 フランスを代表する二人のカトリーヌ(ぼくは、どちらも大好きです・・)が共演ということでうれしくなりますね。

>何となくいい映画を観た
読後感というのか、しみじみとした味わいがある。こういう作品を批判するのは野暮というものでしょうね・・。昔のフランス映画を観た後の印象に近いものがあって、僕は好きですね。大傑作なんて、数年に一、二本巡り合えるかどうか、といったところでしょう・・。

 >紅白のユーミン
aikoは筋金入りのユーミンフリークですね。ぼくも、荒井由実時代(最近の人は”美”と間違える笑)からレコードを持っていたので、紅白での彼女の2曲目の登場シーンの演出は「おぉ!」と思いましたね。桑田圭介もユーミンの参加で、彼自身、普段よりも興が乗ったステージとなっていて圧巻でした・・。昭和時代から(西暦で60年代などと区切ることの多い僕は、あまり元号に感慨はないのですが)若くして第一線で活躍しているかれらの共演は、やはり、同世代として熱いものを胸に感じましたね・・。
浅野佑都
2019年01月29日 05:39
テニスの大坂なおみが、優勝しましてランキングも1位だという!これは長い女子テニスの歴史の中でもアジア系の選手として初めてで大したものだと思います。

ですが、彼女の破断も色が取り沙汰されていて、記者会見の彼女のコメントが全体的に翻訳がひどい。
特に「なぜ多くの人が騒いでいるのか分からない」の部分は正反対の語訳ですね。彼女は実際には"I get why people would be upset about it." つまり「なぜ多くの人が怒っているのか理由は分かる」と発言してるのに・・。

 彼女の肌の色(人種)をどうこう言う人もいますが、これは彼女個人の才能と努力であって、(身体能力に秀でた)黒人だから・・という物言いは間違っているでしょうね・・。

古くは、女王ビリー・ジーン・キングや、そのあとを次いでアメリカンテニスの全盛を担ったクリス・エバートなど、テニスは長い歴史の中で、伝統的に欧米、豪州の選手が強く、ルールやスタイルも確立されていて他の国の選手が割って入るのは容易ではない・・。
男子でアーサー・アッシュやヤニック・ノアなんてのが強かったくらいで、女子もセリーナ姉妹が出るまで白人の天下でしたね・・。野球などより緻密なプレーを要求されるテニスは、やはり幼少時からの練習環境などが重要なのでしょう。
浅野佑都
2019年01月29日 05:43
>彼女の破断も色
失礼!肌の色の間違いですね。           
オカピー
2019年01月29日 21:28
浅野佑都さん、こんにちは。

>昔のフランス映画
そうですね。良さが発揮された時のフランス映画という感じがしました。僕もなかなか気に入りましたよ。
そう言えば、フランシス・レイ、ミシェル・ルグランという1960年代、70年代特に輝いていた二人のフランスの音楽家が亡くなりました。高齢ですので仕方がありませんが、寂しいですねえ。僕はサウンド・トラック盤だけを集めたフランシス・レイの全集を発売して欲しいのですがね、なかなか出ない。

>ユーミン
荒井由実時代の曲だったのも良かったですねぇ。あの曲は「魔女の宅急便」におかげで誰でも知る曲になりました。同時代に聴いていた僕などには、ちとつまらないという気もしますがね。

続きます。
オカピー
2019年01月29日 21:29
>大坂なおみ・・・翻訳
僕は勝った後のニュース等は殆ど観ていないので、その翻訳の件は知らなかったですが、その通りであれば確かにひどいですね。
昨年今頃ネトウヨが誤訳と叫んでいた日本政府団についてのトランプの発言の場合は、メディアの翻訳が合っていると僕は断じましたが。反復のwillを未来のwillと決めつけた為のネトウヨの誤解でした(意図的にやった可能性があります)。

>(身体能力に秀でた)黒人だから・・
彼女に限らず楽天に入ったオコエなども“生まれついてドーピング”などと言われ、本人の努力が無視されがちでした。貶していないから問題ないとも言えないです。

>アーサー・アッシュ、ヤニック・ノア
懐かしいなあ。
テニスやフィギュアと黒人は本当に結びつかなかったですよね。ウィリアムズ姉妹が出て来てテニスの風景が一気に変わりましたなあ。しかし、彼女たちの台頭のせいで僕はテニスを余り見なくなったのでした。パワー・テニスすぎて。

>豪州
何と言っても僕には既に大ベテランだったケン・ローズウォール。まだ十代だったボルグとの試合に痺れました。
現在は、旧東欧系が強いですね。今回大坂なおみが勝ったのもあちらの選手が続きました。

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