映画評「去年の冬、きみと別れ」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2018年日本映画 監督・瀧本智行
ネタバレあり

中村文則の同名小説の映画化作品。監督は堅実な印象のある瀧本智行。

若い写真家・斎藤工がモデルの女性が焼死するのを撮るのに必死で死に至らしめた罪で逮捕されるが、証拠不足で釈放される。その彼に興味を持った自称フリー・ライター岩田剛典が週刊誌編集部に売り込みに訪れ、名編集者・北村一輝を指名する。写真家を支配するのは姉の浅見れいなで、岩田は写真家本人に加え、その姉にもインタビューを試みる。
 やがて斉藤は岩田の婚約者・山本美月に興味を持ち、自宅に連れ込んだ後、やがて火災が発生、岩田や北村が彼が焼死していく彼女を写真に収めている現場を目撃した為に写真家は再び逮捕される。
 岩田は落ち込みつつも写真家に関する原稿を完成させる。しかし、刑務所の斎藤や北村は表紙のない本にその原稿とは全く違う内容を見出す。

というお話で、第一章も第二章もないのに変なところでいきなり第三章と表示されるので少々意外に感じる。斎藤や北村が本を読むに連れその意味が理解できるような仕組みである。
 一言で言えば、どんでん返しを眼目としたサイコ・ホラー的な内容で、叙述トリックが駆使されている。トリックの筆頭は、第二の殺人と関連するとミスリードさせる斉藤が美月嬢に手錠を掛ける場面で、火事とは時系列が違うと最終的に理解できる次第。実は岩田と美月嬢とは婚約者同士ではないという真実もまた明らかにされ、従って“序盤の二人の場面はインチキじゃないか”と怒りたくもなるが、映画の中で省略された部分を加えて同一場面を再登場させることで、ぎりぎりセーフという印象がもたらされる。この手の作品の見せ方として上手い工夫である。

ビックリするようなどんでん返しとまでは言えないものの、“先が読めることは悪いこと”という勘違いをしている人でもなければ楽しめるだろう。

芥川龍之介の「地獄変」を着想源にしているのも興味深い。

“先が読めること”に関しては昨日のベスト10の作品講評でも似たようなことを書きました。まあ寸分違わずに予測通りに進めばつまらないだろうが、大まかに予測できるとき見せ方の面白さが映画の面白さになる。

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  • 「去年の冬、きみと別れ」

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  • 去年の冬、きみと別れ

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