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zoom RSS 映画評「王になろうとした男」

<<   作成日時 : 2018/12/06 09:43   >>

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☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1975年イギリス映画 監督ジョン・ヒューストン
ネタバレあり

ラディヤード・キップリングの短編小説をジョン・ヒューストンが映画化した冒険映画である。大昔映画館で観た。

19世紀後半英国領インド。退役軍人ダニエル・ドレイヴォット(ショーン・コネリー)とピーチー・カーネハン(マイケル・ケイン)は、知り合ったばかりの新聞記者キップリング(クリストファー・プラマー)と、“王になるまで女と酒を断つ”という妙な契約を交わして、現パキスタン北西部に接するカフィリスタン(アフガニスタン東北部)に旅立つ。
 玄奘も苦心した辺りの山脈を雪崩に助けられて超え、最初に撃退した部族にいたインド軍所属グルカ兵“ビリー・フィッシュ”(サイード・ジャフリー)を通訳にし、敵対する部族に戦いを仕掛ける。弓矢に射られた後も偶然に助けられ平気で戦うドレイヴォットは神扱いされ、このような手法を繰り返してカフィリスタンの王になる。
 最大の敵、宗教的支配者である大司教(カローム・ベン・ボウイ)もキップリングから渡されたフリーメイソンの紋章にひれ伏す。が、この2200年前にこの地方に君臨したアレキサンダー大王の妻と同じ名前を持つ女性(シャキラ・ケイン)を妻に迎えようとした時に噛まれて血を出す。これにより神ではなく人とばれて吊り橋から落とされて死ぬ。

その時に処刑されても死ななかった為に解放されたカーネハンが3年ぶりに会うキップリングにこの体験を語る、という体裁で綴られる冒険模様は、偶然に助けられるところが多く荒唐無稽に過ぎるが、もともとハッタリ的なお話だからそのご都合主義的なところが冒険気分を醸成して却って良い。
 ハッタリが一番発揮されるのがフリーメイソン絡みの部分で、紋章が一致することでアレキサンダー大王がフリーメイソンの創始者のように考えられるなど、実に楽しいではないか。

成功半ばに挫折するというヒューストンのライフテーマがこの作品でも見事に扱われ、彼等が持ち帰ろうとした財宝が逃げる途中で散らばってしまう辺りによく表現される。

モロッコにロケしたらしい神殿や山岳地帯の描写も軽い俯瞰や仰角など画角に工夫をこらして見応えがあり、事実にどの程度則っているかどうか定かではないものの山岳民族の風俗の野趣も頗る魅力的。

コネリーとケインはこういう山師的な人物に誠に適役、楽しいそうに演じている。

イスラム教徒を馬鹿にした白人視線の映画と言う批判があるが、本作に出て来る人々は崇拝する神の名(インブラ)や神殿の形状、偶像崇拝の存在から言ってイスラム教徒ではない。いずれにせよ19世紀に白人はそれ以外の人種や民族を馬鹿にしていたのは事実であり、それを映画で表現しても何の問題もない。それを以って良い映画と悪い映画の線引きをすることは出来ない。

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王になろうとした男
英国人のカーネハンとその友人ドレイポツトは白人未踏のカフリスタンで、部族の男たちに軍事教練を施し、信頼を得るのだが…。 秘境で“王”になろうとした2人の男の顛末を描くアドベンチャー。 ...続きを見る
象のロケット
2018/12/07 01:57

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コメント(14件)

内 容 ニックネーム/日時
>成功半ばに挫折するというヒューストンのライフテーマ

日野康一先生も著作でそのように書いています

>楽しいそうに演じている。

007作品以外に出るようになったコネリー。この作品や「風とライオン」あたりから映画もヒットするようになったんですよね?

>以前色々と製品を買った電気店の娘が偶然にも同級生になったり(TKさん)

思春期の良き思い出その女性は現在お元気ですか?
蟷螂の斧
2018/12/08 03:24
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>日野康一先生
そうですか。
 昭和一桁以前に生まれた評論家にはそういう共通認識があったのでしょうね。僕はそんな年寄ではないですが(笑)
 日野先生と言えば、音楽に詳しいというイメージ。高校時代、音楽の授業でクラシックを使った映画音楽について発表する為に参考にすべく「スクリーン」をめくっていると、色々と先生が書かれていました。

>この作品や「風とライオン」あたりから
そうでした。
 都会的な紳士から野性的な男へのイメチェンが成功し、ふんどし一つで大奮闘する「未来惑星ザルドス」なんてのもありましたドス。

>その女性
どこかへ嫁いで(古い表現か)元気なようですよ。お父さんは脱サラで始めた店を相当前に止めましたが。
オカピー
2018/12/08 17:16
オカピー教授。こんばんは。

>日野先生と言えば、音楽に詳しいというイメージ

それは知りませんでした。勉強になります

>「未来惑星ザルドス」

共演した女優は「愛の嵐」の人。
たった今知りましたが、お父さんはベルリンオリンピック4x400mリレー金メダリスト

>脱サラで始めた店を相当前に止めました

電気店もいろいろ。儲かってないように見える店が、街灯を全て引き受けて大儲け

>吊り橋から落とされて死ぬ

吹き替えが上條恒彦さん。落とされる間際に歌う
うまい配役()でした
蟷螂の斧
2018/12/13 20:40
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>共演した女優は「愛の嵐」の人
シャーロット・ランプリング。
もう大ベテランですが、一昨日観たスパイ映画「レッド・スパロー」でも重要な役で出ていました。人気がある女優です。
お父さんのことは全く知りませんでした。娘さんもダッシュが早いですかね(笑)

>電気店もいろいろ
些か違う話ですが、廃れつつあるアイテムの場合、最後まで作り続けた会社が、最後の一社になった途端に盛り返すことがあります。

>吹き替えが上條恒彦さん。落とされる間際に歌う
幸か不幸か、二回とも原語版で観たので、知りませんでした〜。
♪どこかで誰かが〜
って歌いませんでしたか?(笑)
オカピー
2018/12/13 22:43
おはようございます。

>♪どこかで誰かが〜 って歌いませんでしたか?(笑)

あるいは「さあ〜今 銀河の向うに 飛んでゆけ〜」とか
あの映画では上條さんの声が妙にコネリーに合ってましたよ

>最後の一社になった途端に盛り返す

粘り勝ちです

>娘さんもダッシュが早いですかね(笑)

運動能力は高いかも知れません。
演技でもここ一番の瞬発力や勝負強さがあるかも?

>彼等が持ち帰ろうとした財宝が逃げる途中で散らばってしまう

「黄金」のラストも苦笑しました・・・
蟷螂の斧
2018/12/15 05:11
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>上條さん
そう言えば、この作品ではないですが、何度か吹き替えを聞いたことがあるような記憶が蘇ってきました。
 野趣満載の内容なので、ちょっと土の香りがする彼の声は会っているかもしれませんね。

>「黄金」のラスト
四半世紀経っても似たようなムード。努力が水泡に帰す終盤・幕切れ。いかにもジョン・ヒューストンらしく、僕なんか大好きな「黄金」を思い出してニコニコしちゃいます。
 「黄金」の幕切れを模倣したような犯罪映画が続々と言うかザクザク(大判小判ではないですが)と言うか、作られましたよね。
オカピー
2018/12/15 20:49
オカピー教授。こんにちは。

>ちょっと土の香りがする彼の声

大河ドラマ「武田信玄」では猛将村上義清

>大好きな「黄金」

ボギーが悪役。本当に憎たらしい奴を好演していました

>「黄金」の幕切れを模倣したような犯罪映画

アラン・ドロン主演映画「地下室のメロディ」
あれを真似たクイズ。小学館の「小学○年生」の付録を思い出します

蟷螂の斧
2018/12/16 12:47
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>大河ドラマ「武田信玄」
そうでしたか。
気が短い僕は大河ドラマを通して観たことがないんですよ。何度か見始めたことがありますが、途中で止めました^^;

>ボギーが悪役。
もともと悪役出身ですから、気分を出していました。しかし、心から悪い奴なのかという見せ方でしたね。

>「地下室のメロディ」
そうそう。プールでね。
スタンリー・キューブリック「現金に体を張れ」。

>あれを真似たクイズ。
???
ご説明願います。
オカピー
2018/12/16 20:53
オカピー教授。こんばんは。

>ご説明願います。

「悪い奴二人が銀行強盗をした。トランクに入れてプールに沈めて隠した。だが、バレてしまった。何故だろう?」
こんなクイズでした。それから何十年も過ぎてから映画を見てニヤリとしました

>しかし、心から悪い奴なのかという見せ方

「そんなに悪い奴でもない?」と言う描き方と言う事ですか

>大河ドラマを通して観たことがない

「武田信玄」を熱心に見た理由。
昔好きだった女性に似た人を見て惚れる
それが理由です
蟷螂の斧
2018/12/18 20:51
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>こんなクイズ
そのクイズは知りませんでした。

>「そんなに悪い奴でもない?」
彼は終始自問自答していましたからね。どちらかと言えば、ヒューストン映画の悪党は“弱い者”です。弱さから悪に走るんですね。

>昔好きだった女性に似た人を見て惚れる
なるほど。そういうことはありますねえ。
 演歌歌手には全く興味がなかったですが、会社で僕が懸想していた経理の彼女が、瀬川瑛子にのんびりした雰囲気が似ていて、夏休みなどで実家に帰った時に両親が見ている歌番組に瀬川瑛子が出ていると幸せな気分になったものです。自分の家でわざわざ見ることはなかったですが。
 その彼女は裏表のない性格で、瀬川瑛子も同じタイプの人らしいですし、雰囲気が似るということはそういうことなのかもしれませんね。
オカピー
2018/12/19 21:05
オカピー教授。こんばんは。

>雰囲気が似る

経理の彼女はオカピー教授にとって憧れの女性だったんですね
懸想と言う言葉を初めて知りました

>ヒューストン映画の悪党は“弱い者”です。

強い奴が悪に走るよりはマシと思ってしまいます

>コネリーとケインはこういう山師的な人物に誠に適役

山師にはなれないオカピー教授や僕が好んで見る映画なのでしょう
蟷螂の斧
2018/12/21 18:38
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>憧れの女性
そうですね。大分年下でしたけど。
当然外見から入るわけですが、性格が素晴らしかった。その証拠に老若男女誰にも好かれていました。大体男性に人気のある女性は女性には不人気ですが、そんなことはなかったですね。今で言う“男前”で、竹を割ったような性格だったと思います。髪の毛を染めることもなく、ナチュラリストの僕の好みにぴったりでした(彼女が髪を染めてきたのを見て僕ががっかりする、という夢を見たことがあります)。

>懸想
昔から大量に読んでいる古い小説や古典を通して高校時代くらいに知った言葉で、その時代からよく使っています。思慕より僕の心に合う表現なんです。

>強い奴が悪に走るよりはマシと思ってしまいます
現実世界の犯罪者は大体弱いんですよね。だから、例えば子供を死なせてしまった親たちを責められないケースもあるのではないかと考えたりします。

>山師にはなれないオカピー教授や僕
家族や親戚から“あんたは悪いことは出来ない”と言われます。余りの馬鹿正直さに自分でも呆れることがありましたが、姉によれば、僕が落ち込んでいた2011年頃、義兄は“世の中にはオカピーのような人間もいないとダメなんだよ”と言っていたそうです。彼は息子に倣って“オカピー”と言うことが多いのです。
オカピー
2018/12/21 22:59
オカピー教授。こんばんは。

>大体男性に人気のある女性は女性には不人気ですが、そんなことはなかったですね。

素晴らしい女性です
唯一つ残念だったのはオカピー教授と結ばれなかった事・・・と言うのは嘘ですよ

>例えば子供を死なせてしまった親たちを責められない

そこまではいきませんが、僕の実家も酷い家庭環境でした

>世の中にはオカピーのような人間もいないとダメなんだよ

その通りです
そしてオカピー教授の人徳で、いろいろな人が寄ってきます

>思慕より僕の心に合う表現なんです。

なるほど。言葉には深い意味があります
蟷螂の斧
2018/12/29 18:35
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>オカピー教授と結ばれなかった事
そうかも(笑)

>僕の実家も酷い家庭環境
そういう環境や人々を認めるということではありませんが、まず人が弱いということを認識した上で人を見てみるということが大事と思います。しかし、そこまで考慮しても許しがたい人は大勢います。

>言葉
言葉の保守を自認していますが、先日新聞で「言葉の保守は全ての基本である」という記事を読み、“我が意を得たり”でしたね。また、別の人が「真の保守はリベラルである」という発言をしているのを読み、これも納得。保守がリベラルと対立しているというのは誤認と思います。今回の「改正入管法」をめぐってそれが如実に表れました。
オカピー
2018/12/30 10:11

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