映画評「涙のメッセンジャー 14歳の約束」

☆☆★(5点/10点満点中)
2015年アメリカ映画 監督メグ・ライアン
ネタバレあり

メグ・ライアンの初監督作品ということなので、日本未公開作品なれど、観てみた。
 原作はウィリアム・サロイヤンの「ヒューマン・コメディ(人間喜劇)」。サロイヤンは連作短編集「わが名はアラム」で感じられた、飄々として温(ぬく)みのあるタッチが特徴で、この映画を通してもその感覚は伝わってくる。日本の英語の教科書にも使われる有名作ということだが、僕は勉強不足で知らなかった。

太平洋戦争が始まり、父親(トム・ハンクス)を亡くしたばかりの母子家庭の長男マーカス(ジャック・クェード)が出征する。映画は途中まで彼が友人に家族のことを語る形で進行するが、主人公はその兄を深く慕う14歳の次男ホーマー(アレックス・ニューステッター)で、電信配達のアルバイトを始める。
 時代故に電信の多くは戦死の通達で、彼は配達を通して人々が半ば無駄に死んでいく愚かな世界の現実に気付いていく。老電信士(サム・シェパード)が亡くなるまで打ち出していた最後の電信は愛するマーカスの戦死通知。少年は地球(愚かな世界)に唾を吐いた後、それを母親(メグ・ライアン)に届けに行く。

地味ながら誠に人間味に溢れる素晴らしい内容。しかし、母親役で出演もしているメグ・ライアンの展開ぶりは原作の味わいを生かそうとしたのか相当素朴で、映画を観慣れない人の為にもう少しエモーショナルに描いても良かったと思う。戦場から遠く離れて平和な人々の描写のうちに逆説的に戦争の引き起こす悲しみを描くには、かかる朴訥な語りが良いのだが、一般の人がその効果を理解するのはちと難しい。

弟ユリシーズのとぼけた小冒険がとりわけ魅力ある一方で、映画ファンとしては、場面の繋ぎのぎこちなさが気になる。特に、マーカスの場面から一家の暮らすイサカへの移行はマッチ・カットを使うなどもう少し工夫が必要だろう。そういう細かなところから工まざるエモーションが生れたりするのである。

次男がホーマー(ホメロス)で、三男がユリシーズ(オデュッセウス)。両親のどちらかがギリシャ好きだったのかもしれないが、いずれにせよ、これらの名前は本作の視座が世界にあることを示している。

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