映画評「ジュピターズ・ムーン」

☆☆★(5点/10点満点中)
2017年ハンガリー=ドイツ=フランス合作映画 監督コルネル・ムンドルッツォ
ネタバレあり

前作「ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲」がなかなか興味深かったハンガリーの監督コルネル・ムンドルッツォの作品だが、前作に及ばず。

医療ミスによる訴訟問題を抱えた医者メラーブ・ニニッゼは、その為に病院から追い出され難民キャンプで医療に当たっている。ある日、国境警備隊の官憲ギェルギ・ツセルハルミに違法な銃撃を受けたシリア人の若者ジョンボル・イェゲルを診ようとした時に彼が飛ぶのを見て現場から飛び出し、彼を逃走させる。医師は若者の能力を利用して訴訟を食い止めようとし、官憲は違法銃撃を隠蔽しようと二人を追う。その対立の構図の中で無神論者の医師は若者に天使を見、宗教観を変えていく。

前作同様に移民・難民問題をテーマにしている(タイトルである木星の月=衛星の一つはエウロパ Europa と名付けられている、即ち地球上の欧州の暗示)が、前作があくまで犬の暴動により寓意的に見せたのに対し、今回は難民が準主人公であるし、色々な差別の描写もあるなど、ファンタジーとしては些かテーマが直截(ちょくせつ)に扱われ過ぎて面白味が薄い。

若者の能力の見せ方も同じようなことの繰り返しで変化に乏しく、かつ、具体性を欠くのも不満。例えば、瀕死で横たわる老婦人を安楽死させる場面。彼が飛ぶことによって死ぬ因果関係がよく解らない。驚いて死んだのか、天使を見て喜んで死んだのか。彼がどう予測して飛んだのか。それに比して、幕切れで官憲が浮遊する若者を撃とうとして止める理由は若者に天使を見たからであろうと推測できる。このことから逆に老婦人も天使を見ることで安心して死んだのだと理解するのが正しいと判断できようか。
 最後に人々は行動を止めて浮遊する若者を見る。欧州に生きる彼らは、信心深い人もそうでない人も、彼に天使を見るのである。

極論すれば、“難民は天使みたいなものですよ、大事にしましょうね”とこの映画は難民に厳しいハンガリー政府に言っているような気がしてくる。

難民に対するハンガリーの扱いが絡んでくる三日前の「希望のかなた」に続けてアップしようと思いましたが。

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  • ジュピターズ・ムーン

    Excerpt: セルビアとの国境に近いハンガリーの難民キャンプ。 医療ミスで病院を追われた医師シュテルンは、違法に難民を逃がすことで賠償金を稼ぎ訴訟を取り下げてもらおうと目論んでいた。 そんなある日、傷を自力で治癒で.. Weblog: 象のロケット racked: 2018-12-12 23:26