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zoom RSS 映画評「しあわせな人生の選択」

<<   作成日時 : 2018/10/09 09:19   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2015年スペイン映画 監督セスク・ゲイ
ネタバレあり

先日の「笑う故郷」もスペインとアルゼンチンの合作であったが、いずれの作品も旧宗主国と旧植民地という関係以上に、アルゼンチンという国の特殊性がモチーフとなり若しくは背景に揺曳する作りとなっている。

現在はカナダに住むトマス(ハビエル・カマラ)が、スペインにいる友人フリアン(リカルド・ダリン)が末期がんで治療を放棄したとその従妹パウラ(ドロレス・フォンシ)から聞き、突然駆けつける。トマスは妻と離婚し、息子がアムステルダムの大学に籍を置いているため、大型犬のトルーマンを相棒に暮らしている。先の長くないフリアンが気になることと言えば、意思疎通が十分であったとは言い難い息子との関係の軌道修正と、自分よりは後まで生き残るトルーマンの引き取り手である。
 トマスは滞在の間トルーマンの里親探しに協力し、突然思いついた息子を訪ねるアムステルダムへの旅にも付き合う。父親の病気の件を事前にパウラから知らされていた息子は誠に大人の対応をし、事実を言い出せなかった父親は帰西した後それを彼女から聞き、そんな息子に感嘆する。
 結局フリアンはトルーマンをカナダに帰るトマスに託す。

個人的には、“託す”というより“贈る”といった方が正しいような幕切れと思う。二人の深い友情は様々な場面、様々な言動で描かれるが、トルーマンの贈呈という行為こそがフリアンのトマスへの信頼の証であり、友情が最も強く表現されていると言うべきであろう。

とりあえず本物の友情のお話という理解で十分であるが、次のような要素があることを一応知っておく必要がありそうだ。登場人物の僅かな言葉から、この二人が軍事政権時代のアルゼンチンから逃れてきた人々であることが判り、息子やその恋人も一応の故郷であるスペインやフランスにいない。トマスの背中にはアルゼンチンの国旗が彫られている。異国人の孤独が通奏低音として静かに奏でられている。見た目よりかなり厳しい内容を含んでいるわけで、邦題の「しあわせな人生」という安易な措辞で矮小化してはいけないのである。純文学的に言えばそういう表現がふさわしい。

“しあわせ”"幸せ”“幸福”という言葉が邦題にやたらに使われている現状自体に首をかしげたくなるものがあるが、それは国民の映画的民度に主たる原因があるので、必要以上に文句を言わないことにしている。しかし、こんなに“しあわせ”“幸せ”を題名に使うと、十年後二十年後に区別が付かなくなる恐れがあり、そのほうが問題た。

嫌韓本の類が売れ、「日本凄い」というTV番組が多いのは自信の無さの裏返し的な現れと思うが、映画の題名に「幸せ」が多いのは日本人が今不幸であることを表しているのではあるまい。

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