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zoom RSS 映画評「幼な子われらに生まれ」

<<   作成日時 : 2018/10/06 09:32   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2017年日本映画 監督・三島有紀子
ネタバレあり

三島有紀子という映画監督は、リアリティーの面で批判されることが多かったと思うが、重松清の同名小説をベテラン荒井晴彦が脚色した本作は、そういう批判をされることは殆どあるまい。

薫(南沙良)と恵理子(新井美羽)という子供を持つ奈苗(田中麗奈)と再婚して6年ほど経つサラリーマン信(浅野忠信)は、遂に彼女との子供を持つことが報告される。
 小学6年生の薫はこれに不安を覚えて急に猛烈に反抗的になり、親たちを徹底的に避けるべく鍵まで要求、暴力的でだらしない実父(宮藤官九郎)に会いたいなどと言い出す。信が同じ年の実の娘・沙織(鎌田らい樹)に年に4回会っていることも引き金になっている模様。
 片や沙織は母親・友香(寺島しのぶ)が再婚した継父に親しみを持っているが、がんで末期(まつご)の床にいるのに泣けないと信に言って来る。
 薫に精神的に追い詰められた信は離婚するなどと言い出す。

さて、この家庭はどうなっていくのか。というお話で、二人の小学6年生の継父に対する対照的な反応がこの物語の肝である。
 薫は、本音を言えば今のパパが大好きだが実子が出来ることで精神的に捨てられるのではないかと不安になり、何も知らない妹をそれを教え不安を共有しようとする。しかし、6歳の妹は告げられても本質的にその不安を理解できない。
 沙織はやはり大好きな継父が死のうとしているとに泣けないと苦悩する。優しい娘だから、彼女はその場に直面した時に涙が出て来る。沙織に「泣けない」と相談された時に信は「血が繋がっていないからしようがない」と自分を慰めるように言う。

しかし、沙織の後の涙、薫が実父に会うと言ったのに逢わず、実父の土産を貰った時に信に見せる彼への信頼を見ると、実父・継父との間に、個人の性格以外に、実は差などないのではないか、という印象を覚えさせる。本作の主題であろう。

重松清の小説だから、この映画に出て来た二人の継父(沙織の継父は殆ど画面に出ないが)は子供にとって実に理想的(他方、あの実父の印象は悪いが、父親として期待されることが苦手な、偽悪者なのであろう)。信が奈苗と結婚したのは、実父の暴力に傷ついた薫と生まれたばかりの恵理子を守る為であったと思う。だから、二人の為に同僚とも殆ど付き合わず早めに帰る。ホワイトカラーから現場への配置転換があっても「給料が同じなら」と不満も見せない。薫はこの父親の価値が解っているからこそ実子が出来ることへの不安を覚えたのであろう。

この作品の家族の切り口は、温かみがぐっと多めとは言え、人間を様々の苛酷な実験台に載せるドグマ95系列のスザンネ・ベアあたりが見せる作品群に似たものを覚える。秀作。

僕は家族尊重派で、その点断然保守である。しかし、教育勅語云々などという一部自民党議員の発言は天皇との関係を別にしても暴論だ。勅語には父親が全てに優先する儒教の猛烈な家族観がベースにあるからである。新井白石が、父親ともめた後行方不明になった夫を当局に探してくれと頼んだ妻が「実父を容疑者にした」として死刑判決を下されたケースを紹介している。白石は、熱烈な儒教支持者でありながら、彼の権限で減刑させた。そんな儒教を精神のベースにした勅語はアレンジであってもお断りだ。

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幼な子われらに生まれ
商社マンの田中信は、暴力的な夫・沢田と離婚した奈苗と4年前に再婚し、奈苗の連れ子である長女・薫、次女・恵理子と4人で暮らしている。 奈苗は妊娠中で、それを知った薫は反抗的になり、実の父親と会いたいと言い出した。 そんな中、信との間の娘・沙織を連れて再婚した元妻・友佳から連絡が入る…。 ヒューマンドラマ。 ≪親愛なる、傷だらけのひとたちへ。≫ ...続きを見る
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