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zoom RSS 映画評「サンストローク 十月革命の記憶」

<<   作成日時 : 2018/10/03 08:54   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2014年ロシア映画 監督ニキータ・ミハルコフ
ネタバレあり

ニキータ・ミハルコフの日本未公開作。原作はノーベル文学賞を受賞したソ連時代のロシアの大作家イヴァン・ブーニンの短編「日射病」。彼は1953年まで生きたが、ソ連と呼ばれる時代のロシアにいたことがないので、あくまでロシアの作家と言わなければならない。

1920年クリミア半島、ボリシェヴィキ赤軍との戦いに敗れた無数の白軍将兵が集められる。その中の一人の大尉(マルティンシュ・カリータ)は移送されるまでの間、革命以前の1907年この近くで過ごした船旅を思い出す。
 船で美しい女性(ヴィクトリヤ・ソロビョーヴァ)に惹かれた彼は、半ば無理やりに彼女を誘ってあるホテルで関係を結ぶ。しかし、彼女は翌朝早くまた船の旅人となる。
 暫し呆然とした彼は、しかし、12歳くらいの少年イェーゴリ(セルゲイ・カルポフ)から船の情報を教えられ、近回りをして再びその船に乗ることが出来る。その間に少年とは様々な楽しい経験をする。
 彼を起こす為に懐中時計を一時預けられた少年は返すのを忘れて馬車上の大尉(但し当時は中尉)を空しく追いかける。
 ここで断続的に進められてきた回想は終わる。
 移送の為屈辱的な平底船に乗せられた彼は、赤軍の若い取調官からもたらされた懐中時計を受け取る。彼は船中で「あの時の少年だ」と気づく。しかし、今や冷徹な赤軍下士官になった元少年(アレクセイ・ヂャーキン)は残酷にも船を沈める命令を下す。大尉に手を振っているように見えたのはその合図に過ぎない。

大尉が思い出す経験は全てが悠々とロシア的に美しい。そんなロシア的な美をソ連が無残にも破壊したのである。原作者は反ボリシェヴィキである(本作が扱う1920年に彼はパリに亡命した)し、ミハルコフもこれまでの作品を観る限り反ソ連であるから、主題をこんな風にまとめてもあながち乱暴とは言えまい。1920年に露(つゆ)と消えたこの大尉は同じ年にロシアから去ったブーニンの分身と言っても良いのではあるまいか。

ミハルコフはチェーホフの映画監督版と言って良い人だから、可笑しみの中に悲しみが、悲しみの中に可笑しみが常にある。チェーホフ好きの僕としてはそれがたまらない。回想場面の画面も抜群に美しく、美しき最後のロシアが生き生きと再現され魅了される。
 ただ、お話の構成は著しくバランスを欠く。船の謎の女性とのアヴァンチュールは狂言回しに過ぎず、実は大尉が少年と過ごした時間がテーマと解る幕切れに少々肩すかしを食らう。一種のどんでん返しと言えばその通りながら、それにしてもアヴァンチュールが勿体ぶりすぎている。「愛の奴隷」「シベリアの理髪師」が好きな僕には、本作も好みではあるが、僕のスタンスでは評価と好みは必ずしも一致しない。

WOWOWの解説は彼がアヴァンチュールを楽しんだ美人をタチアナとしているが、タチアナは船で知り合った富裕少年の母親でござる。美人の名前は“通りすがり”となっております。

現在ロシアの庶民に窮屈極まりなかったソ連を懐かしむ声さえあると言う。ミハルコフはそれが面白くなく、これを作ったのではあるまいか。

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