映画評「ザ・サークル」

☆☆★(5点/10点満点中)
2017年アメリカ=アラブ首長国連邦合作映画 監督ジェームズ・ポンソルト
ネタバレあり

極端にSNSが進んだ社会がテーマ。世界の人がアメリカ当局に監視されているとスノーデンが告げた今、この程度ではもはやSFとは言えないだろう。一応お話。

カリスマCEOトム・ハンクスが率いるSNS企業に採用された美人エマ・ワトスンが、“透明化”という名の下にトイレ・タイム以外の全てを公開するというプロジェクトのモニターに選ばれる。小型カメラが付けられ、プライバシーはまるでないものの、千万人を超えるフォロワーが付き、アイドルになる。
 が、そんなエマも、彼女を引き抜いた同僚カレン・ギランが社を去り、両親が彼女の目を通してプライバシーを覗かれることを嫌悪し、死んだふりをしている元幹部ジョン・ボイエガがその恐怖が指摘された後、前の恋人エラー・コルトレーンがカメラに追いかけられて事故死したことから嫌気が差してくる。
 しかし、彼女は決意を持って現場に復帰する。

SFでないだけでなく、サスペンスとも言いにくい。寧ろ逆説的な風刺劇という印象がある。ヒロインは「透明化は世界の為になる」と強調するが、この映画の作者はこのようなアイデアは透明化の名の下に管理統制化が進み、体制側の不透明さが進むだろうと危惧しているような気がする。
 それはボイエガが彼女に危険性を知らし、彼女がモニターを引き受けた時に見せるがっかりした態度に現れるが、それにしてはボイエガの扱いが極めて弱い。コルトレーンの事故死の後姿を見せず、作劇的に疑問を残す。それが為に何を言わんとしてか極めて曖昧に感じられる。映画を観てきた長い経験による勘でボイエガの不安が本作の主張と解するのである。

主題とは別に、幕切れも両義的で、どちらかと言えば被害者のように見える彼女こそがこの怖い社会を強めていくのではないかと解釈できるような終わり方。しかし、勘違いして貰って困るのは、“怖い”は恐怖映画の怖さではないことである。恐怖映画で恐怖を感じる時に“考えること”は必要ない。考えることは寧ろ人間の本能的反応に立脚する恐怖映画にはマイナスだ。
 翻って本作が醸し出す恐怖は以下の如し。スノーデンの言ったように実際に日本人がアメリカに監視されているとしても、静かにしている分には自分にマイナスは何もない。しかし、いつも見張られていると思うと気持ち悪い。そういう類の恐怖即ち得も言われぬ不気味さである。

僕も甥っ子に勧められてフェイスブックを開設したが事実上使っていない。個人情報保護法では、プラスよりマイナスになったことが多いと個人的には思う。知りもしないところから勧誘電話が掛かって来る一方、同窓会に出た時に配れる名簿に電話番号も載っていず、うっかりするとその後の連絡もできやしない。

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