映画評「ありがとう、トニ・エルドマン」

☆☆☆(6点/10点満点中)
ドイツ=オーストリア=ルーマニア=モナコ=フランス合作映画 監督マーレン・アデ
ネタバレあり

アメリカの変人映画は大概下ネタになるが、欧州は一味違う。

ルーマニアのブカレストにある石油会社でバリバリに働いているキャリア・ウーマンのドイツ女性イネス(サンドラ・ヒュラー)が、仕事に埋没している彼女を心配した父親ヴィンフリート(ペーター・ジモニシェック)の訪問を受けて迷惑を蒙る。
 彼は顧客を交えたパーティーに一緒に出席するなどかき回した末に漸く帰国、したと思いきや、かつらを被ってトニ・エルドマンと名乗って再登場、テニスのコーチと称したり、コンサルタントを気取ったり、ドイツ大使として上流階級の人々と交わり、彼女はイライラを募らせていく(その間にドイツ・メジャーに搾取されるルーマニアの現状が少し浮かび上がる)。
 しかし、ジョークを人生訓としているような天真爛漫な彼に促されて、彼の伴奏で主体的に生きる尊厳をテーマにした「グレーテスト・ラヴ・オヴ・オール」を歌ううちに気持ちの中に変化が起こる。誕生パーティーを成り行きでヌード・パーティーに変え、新天地を求めて東洋の会社に転職するのである。

物質主義や効率主義の否定とまでは行かないが、人間的に豊潤な人生を称える内容で、風変わりな親が堅苦しく冷徹でゆとりのない娘の心を、時には行き過ぎにも思われるジョーク(殆どがプラクティカル・ジョーク=悪戯)で父親がほぐしていく。
 笑いのタイプが欧州映画らしく日本人には解りにくいが、我々には引いてしまいかねない悪戯にも父親の深い愛情が感じられてほのぼのとした気分になってくる。162分と、このタイプの作品としては異様に長く、個人的に格別に面白いとは思わないものの、型に落ちがちなアメリカや日本のメジャー映画よりは余程強い印象を覚える。

ドイツの女性監督マーレン・アデの作品。

提携先のドイツ人の社長が少し風貌が似ていて、昔を思い出した。

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  • ありがとう、トニ・エルドマン

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