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zoom RSS 映画評「残像」

<<   作成日時 : 2018/09/02 09:29   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2016年ポーランド映画 監督アンジェイ・ワイダ
ネタバレあり

アンジェイ・ワイダの遺作。喩えではなく、義憤に駆られて体から汗が噴き出した。

終戦後、共産主義(厳密には共産主義を目指すタイプの社会主義)化されたポーランドは全体主義化を次第に強め、その影響は、第一次大戦の英雄でもありポーランド抽象絵画の大御所であるウッチ工芸大学の教授ストゥシェミンスキ(ボグスワフ・リンダ)にも及ぶ。社会主義リアリズムのスタンスを取れという委員の命令を歯向かった為、大学を追われ、画廊から絵画が削除され、芸術家団体の委員から排除され、それにより絵具も買えず、配給切符も貰えない。恐らく栄養失調で結核になり、共産主義に馴染み長く同居していないローティーンの娘ニカ(ブロニスワヴァ・ザマホフスカ)に色々と日常の面倒を見てもらうが、やがて病死する。

1989年に社会主義体制から解放され、反体制派のワイダも快哉を叫んであろうが、再び芸術家にとって暗黒時代のこの時代を取り上げたのは、(余りニュースになっていないが)近年政権に批判的な言論を封じ込めようとし始めた祖国の在り方に危機感を覚えたからであろう。ストゥシェミンスキらが徹底的に虐げられた時代ほどではないにしろ、差別の為の差別や嘘による誹謗中傷などごく一部を除いて尊重されなければならない表現の自由が侵害されれば、怒るのが当然である。

作り方は直球でけれんがなく、回想形式もアメリカ映画のようなテロップによる補完説明も使っていない。主題が実在した主人公の人生ではなく、彼を追い込んだ全体主義の理不尽にあるからであろう。訴求したいことは見れば解るのである。
 彼のアトリエがスターリンを描いた大きな旗により真っ赤になる序盤の場面が赤化を象徴的に表現して極めて印象深く、その他にも画家のお話らしく色が印象を残す箇所が多い。映像言語的にしっかりした作品という感を覚える所以である。

共産主義自体は尊重すべき思想であるが、共産主義を目指す社会主義国家はその実現の為にどうしても全体主義的となる。これが一番の問題で、宗教はアヘンであると言ったマルクスは、泉下で社会主義が一種の宗教となってしまった現実をどう思っているか。
 世間は右(保守)か左(革新)という対立軸で考えがちだが、実際には個人主義か全体主義かが問題である。同調圧力というのは全体主義である。右にも左にもこれはある。本作が問題にしているのはこのことに他ならない。

合掌。

我が国の所謂“共謀罪法”について。自由主義的な先進国の反応を考えるとオリンピック前には当局も強い取締まりには出られまいから、オリンピック終了後にどうなるか注目している。何も変わらないことを祈る。

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残像
第二次世界大戦後、スターリン主義時代の社会主義国ポーランド。 国内外で名声を得ていた画家ヴワディスワフ・ストゥシェミンスキは、ウッチ造形大学の教授となり、学生の尊敬を集めていた。 しかし、芸術は政治の理念を反映するものだという社会主義リアリズムに迎合せず、独自の芸術の道を進み学生を導くストゥシェミンスキは迫害され、職を追われ困窮してゆく…。 ヒューマンドラマ。 実在の画家の生涯。 ≪人はそれでもなお、信念を貫けるのか。≫ ...続きを見る
象のロケット
2018/09/02 10:54

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