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zoom RSS 映画評「家族の肖像」

<<   作成日時 : 2018/09/18 14:01   >>

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☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
1974年イタリア=フランス合作映画 監督ルキノ・ヴィスコンティ
ネタバレあり

元々日本では人気のあったルキノ・ヴィスコンティ監督だが、この作品でブームが起き、長すぎてお蔵入りだった「ルードウィヒ 神々の黄昏」(完全版の邦題は「ルートヴィヒ」)が公開され、ミニシアターが幾つも作られることに貢献した。テレビでフジテレビが“ミッドナイト・シアター”と銘打ってミニシアター系の作品を民放にも拘わらずCMによる中断なしの完全ノーカット字幕スーパー放映に踏み切ったのもその影響下にあるだろう。そこまでは行かないにしても深夜の映画は字幕スーパーというのが常識になった。こういう映画ファンにとってこの上ない状態は暫く続いたが、20年ほど前に完全に終焉した。

本作は映画館で観た。ヴィスコンティの作品は旧作でも殆ど全て映画館かそれに類するところで観ている。今ではなかなか見られない「異邦人」(1968年)もそうである。

さてお話。

現在は家族団欒を扱った絵を収集している元教授バート・ランカスターが、その類の絵を売り込みに来た美術商と偶然一緒に現れた貴婦人シルヴァーナ・マンガーノに部屋を貸してくれと強引に契約締結を迫られる。
 これにより入ってくるのが元過激派の青年ヘルムート・ベルガーで、部屋の改築や、それに伴って随時現れる貴婦人の娘クラウディア・マルサーニやその婚約者ステファーノ・パトリッツィが繰り広げる騒ぎに悩まされる。しかし、老いと死とを意識せざるを得ない、孤独だがその孤独を誇る老人はいつしかこの狂騒的な連中との関係に僅かの楽しみを見出し、自ら歪んだ家族団欒の絵の一員になってしまう。
 右翼か左翼かはっきりしないが過激派に襲われたベルガーを秘密部屋に匿って怪我の手当てをした後、一方で仲の良さそうに見えるこの連中にも実は確執があり、それが原因で青年は出奔する。彼は戻って来た直後に爆発が起きて死に、自分を父と言った青年の死により老人は死のベッドに横たわることになる。

当時僕がご贔屓にしていた批評家たちがこぞって絶賛していたものの、彼らの言う“鬼気迫る凄み”がよく解らなかった。当方、色々理屈をこねることが多くても所詮通俗派なので、ピンと来るのは遺作「イノセント」(1975年)であり、壮絶さを感じるのは「ベニスに死す」(1971年)なのだ。

それでも、今では少なくとも相当面白く(興味深く)観られるようになった。どちらかと言うと老いる一方ではあるけれど、まだ進歩するところもあるようである。

天井の音(幻聴)は死の近づきを意味する。それが頻繁になれば即ち死である。幻聴ではない階上の音は一時的に生を感じさせるところもあるが、青年の死を考えれば階上の音は死にほかならない。
 滅びという意味で、ランカスターが同じく主演した「山猫」(1963年)と通底するところが相当あるが、しかし、この作品は貴族や上流階級の滅び以上に生命そのものの死に焦点が当てられている感じがする。恐らく70歳が近づいて老いを感じた(二年後に実際に亡くなる)ヴィスコンティの実感が強く反映されているのだろう。
 僕が興味深く観られるようになったのも、厳密に言えば、進歩ではなく、死が現実のものとして意識される年齢になったからと言った方が正解なのかもしれない。

フラッシュバックで文字通り瞬間的に出て来る若き母親がドミニック・サンダ、妻がクラウディア・カルディナーレ。豪華千万でしたなあ。

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