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zoom RSS 映画評「アルジェの戦い」

<<   作成日時 : 2018/08/30 09:35   >>

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☆☆☆☆☆(10点/10点満点中)
1966年イタリア=アルジェリア合作映画 監督ジッロ・ポンテコルヴォ
ネタバレあり

世界的に評価され、日本でも圧倒的に高い評価を得た。小学生だった僕は勿論リアル・タイムでは観ていず、20年後くらいに観て、圧倒された。アルジェリアのフランスからの独立運動をドキュメンタリー・タッチで再現しているが、近年頻発するイスラム圏や欧州でのテロを想起させるところが多い。1966年にこの素材を扱うには当時の宗主国フランスは時期が熟していないので、イタリアのドキュメンタリー映画作家ジッロ・ポンテコルヴォがアルジェリアとの合作で作り上げた。

お話は1954年に始まり、民族解放戦線が若者アリを仲間に加え活動を本格させると、フランスの頑な態度に次第にテロ行為を強め、宗主国側の間隙をついて女性たちに爆弾を運ばせ、同時多発テロを行う。1958年に最後の砦だったアリも殺され市街での激しい独立運動は終息することになるが、1960年に突然大きなデモを起きる。直接的に独立には結び付かなかったものの、夜に鳴り響く歌声が2年後の独立をもたらす民族の祈念を表徴するのである。

というお話を書くのは余り意味がない。ドキュメンタリーとしか思えない画面の迫力がほぼ全て。アリやその他の幹部を捉える接写部分以外は本物にしか見えない。幹部の部分も、カメラを揺らすことによる観客の錯覚に頼るインチキ臭い近年の手法より遥かに迫真的で、物凄い緊張感を強いられる。

最初に述べたように、近年イスラム教圏で起こる爆弾テロや欧州を騒がせたテロを思い起させるところがあり、自動車で人々に突き進むというショットまである。女性たちの使い方もニュースで伝聞するのに似ているが、似ていないのは監視する側の態度である。当初は女性であればアラブ人も全くチェックしていないし、後半でもないに等しい。
 ただそうした外観の相似とは裏腹に、独立を目指す解放戦線と考えの違う者を排除し世界をイスラム教にする野望実現を目的とするイスラム国とを同じ俎上に上げることはできない。実際、映画が特に強調するわけでもないのに、僕は“独立”の言葉を聞いてジーンとしてしまったのである。

その意味で、Allcinemaにあった「二面的で何を言いたいのか解らない」という意見には疑問を覚える。二面というのはフランス側を必ずしも悪く描いていないということだが、まずそれは観照的に偏りなく描いていて、プロパガンダを打ち出していないということの証左だから映画製作態度としてはベストである。文句を言われる筋合いではない。他方、偏りなく描いていても、アルジェの人々の独立にかける思いは鮮やかに浮かんでいる。フランス人を一方的に悪く描いていないことを以ってその主題が曖昧になっているとはとても言えない。繰り返しになるが、アルジェリア人ではない僕が描かれていない“独立”に感動したのだ。

日本人は、韓国との関係を想起せざるを得ない。江戸時代末に端緒のある富国強兵は愚かな政策だったが、時代のダイナミクスという意味で僕は仕方がなかったのだと思っている。

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タイトル (本文) ブログ名/日時
アルジェの戦い
50年代から10年間、アルジェリアで独立運動があった。 この激しい戦闘をドキュメンタリー・タッチで再現している。 多数の証言や記録をもとに作成したもので、アルジェ市民8万人が撮影に参加した。 ...続きを見る
象のロケット
2018/08/30 13:24
『アルジェの戦い』(1965)帝国主義はそもそも英仏の専売特許であった。大戦17年後の報い。
  『アルジェの戦い』はアフリカ大陸に位置するアラブ諸国のひとつであるアルジェリアが、宗主国である侵略者フランスから多くの犠牲者の血の代償を払いながら、念願の独立を勝ち取った過程をセミ・ドキュメンタリー・タッチで描いた60年代映画の傑作である。 ...続きを見る
良い映画を褒める会。
2018/08/30 18:20

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
SCREENを読んでいた頃から観たかった映画ですが、やっとこさ2年前に初めて観ました。
ドキュメンタリー・タッチの迫力は予想通り。
ですが、事象だけを追った視点に登場人物に対する愛情が感じられないと、MYお勧め度は低くなりました。

>近年イスラム教圏で起こる爆弾テロや欧州を騒がせたテロを思い起させるところがあり・・・

作られた頃は独立運動として肯定的に観る空気があったと思われますが、今となっては違和感はありますね。
十瑠
URL
2018/08/30 16:03
こんばんは!

骨太の作品ですね。『告白』などもそうですが、最近の爽快感や予定調和を求める観客は絶対に生涯出会うことのない作品でしょう。

時代が経つと見え方が変わってくるのも興味深いですね。

ではまた!
用心棒
2018/08/30 18:23
十瑠さん、こんにちは。

>SCREEN
双葉師匠が驚いた作品ですね。驚いた結果☆☆☆☆★という抜群の採点となりました。


>事象だけを追った
明らかにそういう作りでした。
 製作態度としては、観照的ということですから立派と言えますが、ドラマ性を求めると不満になりますね。

>違和感
僕はどうしてもアルジェリアに同情的ですので、テロは本当に無辜の人々には残酷すぎるにしても、国を個々の家庭に置き換えた時、強盗に対する一家の抵抗みたいなものですから、この活動が独立に結び付いたのだと思い、妙に感動しましたよ。
オカピー
2018/08/30 21:46
用心棒さん、こんにちは。

劇映画とドキュメンタリーの狭間にある作品で、故にドラマ性は薄いですが、書籍では決して味わえない緊張感に感服するしかないですね。

>最近の・・・観客
性格に問題がある人物が主人公だと作品そのものを貶すような人々ですからねえ。そもそも性格に問題がない人物を主人公にしたドラマが面白いかいってなもんです。

>時代が経つと見え方が変わってくる
そうですね。やむを得ないことです。
だからこそ、僕は、アルジェの人々とイスラム国(IS)との差を強調したくなったのでした。
オカピー
2018/08/30 21:56
こんばんは!

>問題がある
10年も経てば、少々のゴシップなんてみんな忘れますし、作品を見て改めて評価される作品も出てくるでしょうね。

 それと私事ですが、10月に二週間ほど入院することに決まりました。まあ、22歳から働き出し、50手前ですから、あちこちにガタがきてますので、医師に従います。

 暑いなかですので、御身体ご自愛下さい。

ではまた!
用心棒
2018/08/30 22:56
用心棒さん、こんにちは。

>二週間ほど入院
そうですか。

僕は、2009年に膵炎を患い、慢性膵炎であることが確定。完全なる持病で、他の人より膵臓がんになる可能性がぐっと高いわけで、毎年CTを取っているので比較的早めに発見できるかもしれませんが、戦々恐々としていますね。
 もう新しい映画には期待できませんし、古い見逃している作品も殆どありません。しかし、まだ読んでいない本はかなりあります。死ぬまでにリストに挙げてある古典だけは読み終えたいので、もう十数年がとこは生きたいなあ、などと考えております。

そちらも、ご自愛下さい。
オカピー
2018/08/31 17:24

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