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zoom RSS 映画評「明日に向って撃て!」

<<   作成日時 : 2018/08/10 13:23   >>

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☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
1969年アメリカ映画 監督ジョージ・ロイ・ヒル
ネタバレあり

このブログでよく引用している作品なのにまだ書いていなかった。と言うのもブログを始める3年位前に観ているのでタイミングが悪かったのだ。その時の映画評を採録しても良かったのだが、ものぐさは止めてきちんと見直すことにした。多分3回目(余り観ていない)。

ジョージ・ロイ・ヒルは好きな監督で、一見職業監督的だが十分映画作家であると思う。僕は日本初紹介作「ハワイ」(1966年)以降日本で紹介された作品は全て観ているが、標準を軽くクリアし、大半は秀作と言える。作品群には一定の方向性があり、脚本を正確に捉えその出来栄えを損なわない才能がある。才能がない、などという意見は寝言にすぎぬ。

19世紀末から20世紀初め実際に活躍した強盗犯ブッチ・キャシディ(ポール・ニューマン)とサンダンス・キッド(ロバート・レッドフォード)が列車強盗を繰り返した結果、優秀な保安官や知恵のあるインディアンなど特別に編成されたグループに追われ、キッドの恋人エッタ(キャサリン・ロス)を引き連れて、“エルドラド”と信じるボリビアでひと稼ぎすることにするが、聞くと見るとでは大違い、悪戦苦闘の強盗稼業の末に遂に官憲に包囲されてしまう。

大体実話通りであるが、彼らの落ち目時代にほぼ焦点を絞り、逃避行に集中しているのが良い。これもフランス映画「冒険者たち」(1967年)同様青春への決別をモチーフにした作品と言え、同時にその中で西部開拓時代や西部劇そのものへのノスタルジーを表明し、レクイエムを奏でている。ボリビアに逃げ出す前にブッチが20世紀の道具たる自転車を放り出して新しいものに文句を言うのはそういうことである。

ところで、批判派の中に演出を放棄しているという意見がある。開巻後十分まではサイレント映画から続くセピア色の画面であったり、MTV風の場面(有名な「雨にぬれても」に乗って自転車に乗る場面など)が挿入され、再び写真から構成されるセピア場面といった具合に確かにノンシャランな作り方であるが、これは、登場人物の無軌道な生き方と重ねる目的を果たす為であろう。ヒルは脚本家が考えた以上にそれをよく計算に入れて作っていることが感じられる。決してノンシャラン=無気力ではないのである。

最後は有名なストップ・モーションで、崖を飛降りる場面と共に色々な映画に引用されている。痺れます。去り行く青春と変化する時代を描いて哀感を漂わすこの映画が嫌いという人とは友達になれそうもない。

ポール・ニューマンは1950年代から活躍する旧時代の役者だが、知性と反骨を同時に感じさせるキャラクターがアメリカン・ニューシネマ向き。新しい男(ニュー・マン)というだけのことはあるネ。

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タイトル (本文) ブログ名/日時
「明日に向って撃て!」
今年の1本目は、懐かしの作品を、六本木の映画館で。 ...続きを見る
或る日の出来事
2018/08/11 13:32

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コメント(12件)

内 容 ニックネーム/日時
ロバート・レッドフォードが俳優引退宣言をしましたね。81歳。
これからは監督や製作側に専念するという事でしょうか。

>多分3回目(余り観ていない)。

僕は何回でしょう?
倍以上かも。しつこいから(笑)

最初に映画館で見た時(高校生!)には、列車強盗の後の追跡劇が印象に残ってます。
そしてその時追っ手をリードしていたカンカン帽の男の話が、ボリビアでのラストシーンでも出てきたこと。
ブッチが初めて人を射殺したシーンもスローで印象的でした。
ヒルさん、緩急自在でしたよねぇ。
十瑠
URL
2018/08/10 16:31
テレビで見ましたが、主演三人がよかった。青春映画ですね。このころのジョージ・ロイ・ヒルはよい作品が続いていました。
この映画の主題歌をよく覚えています。
nessko
URL
2018/08/10 17:17
>20世紀の道具たる自転車を放り出して

打ち捨てられた車輪が空回りし続けるシーンが、二人の行く末を暗示しているようで・・・。

 鉄道会社の追っ手がジリジリと二人を追い詰めるその得体の知れなさが、人間の力を嘲笑う時代のメタファーとも言える・・。
追跡者たちの顔を全く見せないところが、嫌がおうにも緊迫感をあおり秀逸で、流石のジョージ・ロイ・ヒル演出の冴えでしたね・。
浅野佑都
2018/08/11 03:09
12年前の拙記事コメント欄にも
ありますが、男同士の逃避行ものは
だんとつに絵になりますね。加えて
ロイ・ヒル監督作には映画の華がある。
ハル・デヴィッドとバカラックの音楽が
これまた粋な味付けでね。
レッドフォード俳優引退81才と先日
発表されましたがポール・ニューマンも
似た時期に引退されていました。
本作の大ヒットでレッドフォードが
サンダンス映画祭の基盤を築いたのは
有名な話ですね。
vivajiji
URL
2018/08/11 09:50
かなりひさびさのコメントかと思います。
ほぼ毎日ブログは拝見しているのですが…。

本作、父が好きで小さい頃に一緒に観てから、僕自身も大好きな映画です。
主演2人の呼吸がバッチリ合った感じと、ただ楽しいだけじゃなくて哀愁漂う展開がたまらないですね。
バカラックが数年前に来日した時にライブ行って「雨にぬれても」を聴いた時はかなり感動したのを覚えています。
ロイ・ヒルの作品は、なんといっても『スティング』が素晴らしいですが、個人的には『華麗なるヒコーキ野郎』も捨てがたいなぁと思います。
ドラゴン
2018/08/11 10:38
十瑠さん、こんにちは。

昨晩は夕方からずっと雷雨でして、電源コードとケーブルを外していたため当日の返事が出来ませんでした。

好きだけど余り観ない映画というのは結構あります。勿体ないという感じがするのかなあ。ベルイマンの秀作群も意外と観ていない。人間の心理は面白いものです。

>81歳
プロデューサー・監督としても優れた人だから、そちらの面で名前を聞き続けたいですね。

>カンカン帽の男
をもっと押し出さないのが映画として失敗、という意見がありますが、浅野さんも関連することを仰っているように、逆ですよ。淀川さん風に言えば、「勘が悪い」意見です。

>緩急自在
ボリビアの警察と撃ち合う場面のカット割りも実に良かった。

ブッチ・キャシディとサンダンス・キッドはワイルド・バンチというグループを組んでいたようです。サム・ペキンパーのあれとは関係がないようですが、テーマ的に似ているところもある「ワイルド・バンチ」よりすっきり観られてずっと好きですね。
オカピー
2018/08/11 15:13
nesskoさん、こんにちは。

僕も映画館では観られず、最初に見たのはTVです。
幼少の頃から洋楽を聞いていたので、作品を観る前からこの作品の主題歌「雨にぬれても」も良く知っていました。バート・バカラックのレコードもありました。

「明日に向って撃て!」「スティング」「華麗なるヒコーキ野郎」と、レッドフォードを主演に起用した作品は尽く快作で、充実していました。
まあ、カイエ・デュ・シネマ的な理論が好きな人は、ジョージ・ロイ・ヒルみたいな監督を好まず、批判するのでしょうが。全くつまらん考えですよ。
オカピー
2018/08/11 15:24
浅野佑都さん、こんにちは。

>得体の知れなさ

Allcinemaに、カンカン帽をもっと怖く描かないといけない、という意見があります。投稿の主は傾聴に値するKE氏ですが、これに関しては外していると思います。浅野さんの仰る、見せないことによる緊迫感のほうが正しい。
オカピー
2018/08/11 19:20
vivajijiさん、こんにちは。

>バカラック
1960年代ディオンヌ・ワーウィックなどに曲を提供する一方、「007カジノ・ロワイヤル」「幸せはパリで」や本作で素敵な映画音楽(というより主題歌か)を色々と書きました。僕はまだガキでしたが、彼の曲を聞くとその時代へのノスタルジーにかられ、甘酢っぱい思いで胸がいっぱいになります。

>レッドフォード俳優引退
若手発掘に頑張ってもらいたいものですね。

>サンダンス映画祭
ジャームッシュ、タランティーノなどこの映画祭で一気に知名度を上げた映画人が出ていますので、この映画の成功なければ、その後の映画界も色々と変わっていたかもしれませんよね。
オカピー
2018/08/11 20:34
ドラゴンさん、お久しぶりです。

>主演2人の呼吸がバッチリ合った感じと、
>ただ楽しいだけじゃなくて哀愁漂う展開

「冒険者たち」の幕切れに劣らず、恐らくかの映画に触発されたところもあるにちがいない本作の幕切れも、見果てぬ夢を語って軍隊が待つ外へ飛び出していく幕切れの切なさが胸を打ちますね。

>「雨にぬれても」を聴いた時にライブ

ドラゴンさんの世代の方はいらっしゃらなかったのではないですか。しかし、昔から知っているものの本物に触れると感動するということがままありますね。
良い話だなあ。

>『華麗なるヒコーキ野郎』
先日(と言っても大分前ですが)アップしました。
傑作という意味では『スティング』ですが、『ヒコーキ野郎』が一番好きかもしれません。これもノスタルジー満点。良いですよね。


オカピー
2018/08/11 20:45
オカピー教授。こんにちは。お元気ですか?こちらは数日間の出張でした。やっぱり我が家がいい帰宅していきなり夫婦喧嘩になりましたが・・・

>“エルドラド”と信じるボリビアでひと稼ぎすることにするが、聞くと見るとでは大違い

人生にはそう言う事が多いのでしょう。強盗に限らず普通のサラリーマンでも。ユートピアだと思ったら地獄の職場約20年前の僕もそうでした

>子供というのは色々なことを考えだすもの

正方形を4等分の正方形にする。ドッジボールを自分の陣地でワンバウンドさせてから、他の陣地に入れる。相手も同じようにする。うまく返せなかった奴が一つずつ地位が落ちて行く「元大中小(げんたいちゅうしょう)」なんてのがありました。

>あの映画と9・11を関連付けて語る人は僕以外にいないでしょうけど。

僕はそこまで思いつきませんでした
蟷螂の斧
2018/08/13 16:11
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>やっぱり我が家がいい
そうですね。ある程度なら夫婦喧嘩も人生を豊か(?)にするものでしょう。
その限界を超えると地獄ですね。

>地獄の職場
僕もそれに近い経験をしています。
配置換えになった時、優しそうだった上司が大人しいくせに陰湿でね。苦労しましたよ。

>ドッジボール
嫌いだったなあ(笑)
小学生時代小柄だった僕は、物凄い強烈なボールにたじたじとなりまして。
相手クラス1の強烈な球を投げる怖そうなKO君が、翌年同級生になり、修学旅行の観光バスの中で僕が歌を歌ったところ「上手い!」と言ってくれて嬉しかったですなあ。ジャンク記憶です。

>>あの映画
「バトル・ロワイヤル」
春から夏にかけて映画に変な規制がかかるのではないかと、僕は本当に心配していたんですよ。新聞にも載っていましてね。
それが、9・11でそれどころではなくなり、霧消したのでした。良かったというには9・11が大事件すぎましたが。

オカピー
2018/08/13 22:53

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