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zoom RSS 映画評「ヒトラーへの285枚の葉書」

<<   作成日時 : 2018/07/08 09:30   >>

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☆☆★(5点/10点満点中)
2016年イギリス=フランス=ドイツ合作映画 監督ヴァンサン・ペレーズ
ネタバレあり

ドイツの作家ハンス・ファラダがゲシュタポの残した文書に基づき小説化した作品の恐らく5度目の映像化(IMDbによりチェック)で、映画化は今回が初めてと理解する。

1940年に息子に戦死されて憤った職工長オットー(ブレンダン・グリースン)がヒトラーとナチスを糾弾し人々を啓蒙する葉書を書き、妻アンナ(エマ・トンプスン)と共に、様々な場所に置く。94%ほどの葉書がゲシュタポに届けられ、警部(ダニエル・ブリュール)は躍起となって犯人探しをするが特定に至らず、無実の男を殺してまで上官のご機嫌取りをする。やがて欠勤者の為に突然工場に呼び出された時に職工長は葉書を落とし、これが元で逮捕され、夫婦揃って死刑になる。

どの国も国家を挙げての戦争となれば全体主義的になるが、ドイツや日本はそれが些か極端で、現在の北朝鮮同様に体制批判でもすればお縄どころかあの世に旅立たされる結果にもなりかねなかった。ともかく、この夫婦はそれをやった。周囲にもユダヤの老婦人を匿う老判事あり、彼女にこっそり物を届ける郵便配達婦(殺されるのは彼女の夫である)もいる。体制に対する小さな抵抗である。
 結局絶対数として少なすぎて大きな渦にならず、ナチス政権は敗戦まで続くことになる。警部も事件を早々に突き止められず上官にひどく殴打されるなどして政権の問題は感じている。二人が死刑になった後保管されていた267枚の手紙を窓からばら撒き、拳銃自殺を遂げる。

この幕切れは作品としてのバランスを考えての創作ではないかと思うが、いずれにせよ、国家・体制という全体の前の個の小ささを感じさせ、空しくなってくる。
 フランス人の監督ヴァンサン・ペレーズは即実的にそこを扱ってい、スタイルとしては非常に好もしいが、映画としては些か物足りない。お話の感銘と映画としてのパワーや魅力はまた別である。その部分は、エマ・トンプスン、ブレンダン・グリースンという非ドイツ人俳優の好演を以ってしてもカバーできない。

言葉は“なんちゃってドイツ語”である英語で進められ、ムード的には甚だマイナスではあるものの、一ヶ国語しか出て来ないので作劇上大きな問題にあらず。英語とドイツ語は本来発音を含めて(英語には綴り通り発音した時代がある)近い言語であるので、そう思えばさほど気にするに及ばないだろう。

18世紀半ばに英国の作家スモレットが書いた小説「ハンフリー・クリンカー」に、“英語のオリジナルの発音を知りたくばスコットランド人に頼れ”という趣旨の発言が出て来る。right, write, wright, riteは当時のスコットランドでは別の発音をしていたらしい。古い小説を原文で読んだ為に時間は掛ったが、却って印象に残った。

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「ヒトラーへの285枚の葉書」
一人息子を失えば、おのずとこうする、夫婦のあり方。戦時下であろうとそうでなかろうと。喪失のその原因に目を向けるのは、当然のことなのではないだろうか。1940年。ドイツがフランスを統治下に収め、戦勝国として意気揚々としていた第二次世界大戦の初期の出来事である。冒頭の画面に大きく出てくる文字は「ALONE in BERLIN」。ここに出てくるクヴァンゲル夫妻は決してALONEではない。だが、恐らくこの「ALONE」が指す意味は、285枚の政治批判の葉書を書きながら、その殆どが当局に回収されたことを意... ...続きを見る
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