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zoom RSS 映画評「渦」(2000年)

<<   作成日時 : 2018/07/23 08:48   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2000年カナダ映画 監督ドニ・ヴィルヌーヴ
ネタバレあり

ドニ・ヴィルヌーヴは初めて観た「灼熱の魂」(2010年)でその力量に圧倒され、その後の作品も秀作ぞろいでご贔屓にしている監督だが、日本で初紹介されたこの旧作は「灼熱の魂」に通底するところがある運命論の物語である。これが相当面白い。

大女優を母に持ち、兄が経営する投資会社の支援によりブティックを経営する25歳の美女マリー=ジョゼ・クローズは、経営破綻が兄に知られて支援を打ち切られ、自棄になって酒を呷った挙句に老漁師を轢いてしまう。老人は家に戻り、部屋の中で息絶える。
 その為に事件は知られずに済むが、罪の意識が彼女を苦しめ、隣人を名乗って葬儀に参列し、ダイヴァーの息子ジャン=ニコラ・ヴェローと知り合い、老人の遺品の整理を手伝ううちに彼に恋して飛行機で飛び立つ彼を引き留める。
 翌朝の新聞にその飛行機が墜落したことを知った彼は彼女を天使と崇めるが、彼女は真相を告げざるを得ない。結局二人は父親の故郷であるノルウェーの海に遺灰を撒く。

経営を破綻させ、堕胎をした彼女は新しい人生を始めようとしているが、時のどこかでダイヴァーの彼と結びつけられる運命の渦に巻き込まれているのである。
 全ては海に繋がっている。海は地球に一つしかなく、分かたれていた水は結局ここで一つになる。ヴィルヌーヴは、かくして、溢れんばかりの水のイメージによりお話を綴り展開する。彼女が嘔吐するトイレ、シャワー、車を落とす海、彼がもぐる海、遺灰を撒く海。魚もそれに準ずる。語り手の魚、轢かれる老人は漁師、車がストップさせられる冷凍車からばら撒かれた魚。映像言語的に非常に強く押し続ける。

内容的には、堕胎に始まり、老人の死で一貫させる。死は誰にも訪れると、彼女が交通事故について告白する謎の男=恐らくは神様=は言う。新しい生の始まりでもある死がこの作品のテーマである。その謎の男は、今度は父親を殺した女性を愛していると告白するダイヴァーに「結婚して忘れるが良い」と告げる。やはり運命を司る神様と言うしかあるまい。

ヴィルヌーヴはカナダの監督である。カナダはフランス語圏はフランス映画風、英語圏はアメリカ映画風とはっきり作風が分かれるが、フランス語圏ケベック州生まれのヴィルヌーヴが作ったこの作品もやはりフランス映画風。僕の持論ではフランス映画は、伝統的に運命論的であり、そういう点でもこの作品は頗る興味深い。

若気の至りで少々やり過ぎの部分はあれども、栴檀は双葉より芳し、ということを証明する作品と思う。

初期のジャン=ピエール・ジュネのような感じが一部ありますな。

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