映画評「ディストラクション・ベイビーズ」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2017年日本映画 監督・真利子哲也
ネタバレあり

真利子哲也という監督の商業映画第一作は、一種の青春ドラマである。

愛媛県の港町で事実上の養父と暮らしていた柳楽優弥が、喧嘩に見出す楽しみに抵抗できず、半ば追い出される形で、松山市へ出る。ここでも強そうな相手を見つけては喧嘩を仕掛け、やられたりやっつけられたり。やられた相手には必ず仕返ししようとする。
 彼の喧嘩に巻き込まれた高校生の菅田将暉はやがて彼の理由なき喧嘩に魅入られて、大きなことをやろうと持ち掛け、二人はキャバクラ所有の高級車を強奪する。この車に店の女の子・小松菜奈が乗っていたので誘拐同様に連れまわす。菅田が打ちのめした中年男が車の前に倒れているとも知らずに彼女は運転させられ、轢き殺す。厳密に言うと生きていたが、彼女は菅田の暴力的な言動に感化されていて、息を吹き返した男を絞め殺してしまうのである。
 運転手を命じられた彼女が飛ばしているうちに交通事故を起こす。柳楽は救急車を呼ぼうと近づいてきた相手の運転手を殴り倒して逃走、菜奈嬢は重傷の菅田を殴って死なす。松山市内で起した無差別暴力事件で官憲に追われる柳楽は、何故か故郷に戻ってくる。

近年の暴力的な邦画と言えば北野武の作品が目立つが、これほど純粋な暴力に明け暮れる作品も珍しい。少なくとも主人公には、名誉や憎悪といった心理面、金銭その他の利害に関係なくひたすら喧嘩する。曰く、“喧嘩が楽しい”からである。
 見始めて暫くチェッカーズの「ギザギザハートの子守歌」が頭に響いていたが、世間で言う非行とは違う。どちらか言えば異常者に近いが、彼が松山へ行った当初は、弟・村上虹郎がいるだけで両親がなく孤独な人生を生きることにおける閉塞感を打ち破る充実の手段として喧嘩があったように思われる。WOWOWのコメンテーターが言っていたように、殴ることにより殴られる・・・ことで一種の人間関係を構築するという、無意識の目的があったのかもしれない。

しかし、彼が影響を与えた菅田に逆に影響されたかのように、本来対象から外れるような人物にも攻撃を加えていくことで、主人公が本当のサイコパスになっていく(ように見える)のは映画的に面白くない。一般ドラマではサイコパスの寸前で留めなければ意味がない。

弟と悪友たちの関係も解りにくいのも困る。そもそもその発端となるキャバクラでの少年と悪友の会話が聞き取れず、その後の彼らの関係や行動の意味が正確に把握できないのである。最近の邦画は、役者がぼそぼそ言ったり背景音楽が大きすぎて聞き取れないことが多く、何とかして欲しい。

真利子というから女性監督と思っていたら、哲也という男でした。

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