映画評「ダンケルク」(2017年)

☆☆☆(6点/10点満点中)
2017年イギリス=オランダ=フランス=アメリカ合作映画 監督クリストファー・ノーラン
ネタバレあり

1964年に作られたフランス映画「ダンケルク」と同工異曲の戦争映画。この旧作は2回観ている。ジャン=ポール・ベルモンドがまだ少女と言っても良かったカトリーヌ・スパークと親しくなって悲劇に終わるというお話でしたかな。

ダンケルクでの英仏連合軍退却は戦争通にはよく知られる逸話(1940年)だが、退却・撤退という誠に勇ましくないお話だけに、クリストファー・ノーランが監督でなかったらそれほど話題にもならなかったであろう。
 恐らく1番最初にこの退却を取り上げたのはウィリアム・ワイラー監督「ミニヴァー夫人」である。戦争中の1942年製作で、ヒロインの夫が船を駆り出して活躍する挿話がある。本作で言えば、マーク・ライランスが演じる民間人船長がそれに相当する。

本作は、一日間の救出活動を描くこの挿話を含めて、3つの挿話で構成されている。残るうち、一つは陸上で待ち受ける兵隊たちを本格的に移送する一週間の作戦部分、もう一つは英軍戦闘機スピットファイアに乗るトム・ハーディーの空中戦を軸にした一時間の出来事。
 例えば、ハーディーの戦友が着水した後ライランスの船に救われるなど当然関連があるわけだが、扱われる時間の長さが違うように、一見同時進行のように見えて実は違う。これは序盤に出て来る英語字幕さえよく観ていれば解るはず。

さて、並行描写という手法にままあることであるが、上手くこれを構成しないと気勢が殺がれることがある。本作の場合、全体としては画面の構図よろしく臨場感のある場面が続くが、違うエピソードに移ることでそれを途切れさせるところが幾つか出て、ノーランとしては演出ではなく、自身で書いた脚本のほうが余り上手く行っていない印象を受ける。

近年の欧米の戦争映画はリアリティーを求めすぎ、個人的には余り面白く見られるものが少なく、世界的に評判の良い本作も例外ではない。
 翻って日本の戦争映画は昨今マンガ的なヒロイズムに傾倒、戦争における人間の行動を美化しすぎてこれもまたダメである。だから“戦争って格好良いじゃん”などというわけの解らぬことを言う若者も出て来る(恐らくゲームの影響もあるだろうが)。“退却”を“転進”と言い換えたのも戦時中のこざかしい美化と言うべし。誤魔化しという意味では現在の放送自粛用語等の言い換えに近いが、それとはまた違う厭らしさがある。

アメリカのポリティカル・コレクトネスが言葉の修正を超えて、行動において異様な様相を示しているらしい。最近もマット・デーモンが「セク・ハラにも幅がある」と言ったら旧作のカメオ出演の場面がカットされたという記事を読んだ。元NHKキャスターの木村太郎氏は、これが余りに行き過ぎている点に着目、反動としてトランプが勝つことを予想したと言う。

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