映画評「20センチュリー・ウーマン」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2016年アメリカ映画 監督マイク・ミルズ
ネタバレあり

40歳を過ぎてから観た映画や知った人名は残念ながら忘れやすい。本作を作ったマイク・ミルズという監督も「サムサッカー」「人生はビギナーズ」二本を観ているのに、すっかり忘れていた。いやあ、困るねえ。
 旧作に関する我が映画評を読んでみると、なるほど本作に通底する部分が多い。人間関係の機微を見つめるのがお好きなのだな。

1979年、15歳の少年ジェイミー(ルーカス・ジェイド・ズーマン)は、55歳の母親ドロシア(アネット・ベニング)と暮らしている。広い家の空いた部屋をパンク系女性写真家アビー(グレタ・カーウィグ)と便利屋ウィリアム(ビリー・クラダップ)に貸し、家族のような近しい関係を保っている。近所の17歳の美少女ジュリー(エル・ファニング)はこっそり窓からジェイミーの部屋に入り、隣に寝るのが日常。彼女は「自分たちは友人だから性的な関係はご免こうむる」と宣言する。
 母親は思春期になった息子の言動に理解できないことが多くなり、彼らの出入りするクラブやらに入って体験し接近を試みるが、遂にはジュリーやアビーに息子の面倒を見てくれるよう頼む。この二人、タイプが違うから、二人で世話をすればバランスは取れる。
 母親は息子とその出奔した先で非常に良い関係を生むが、結局それは一過性のもので、そうした緊密な関係は二度と持てない。しかし、15歳の少年は母親の心配に反して「母親がいさえすれば良い」と思うのである。

マイク・ミルズは1966年生まれで、本作の少年と2歳年齢が合わないが、本作と同じように1999年に癌で母親を失っていて、自伝的映画ということになるらしく、そこはかとなく前世紀と母親へのノスタルジーに満ちている。

題名は、21世紀を知らない、古風な女性という意味合いだろうが、ヒロインは日本的な古風さとは違い、甘やかすでもなく突き放すでもなく、実に巧みに良い距離感で息子と接しているように思う。それでも子供と付き合うことに難儀を感じるのだから、親子関係とは難しいものでござる。

気の利いた台詞が多く秀逸であり、現在から過去を振り返るのではなく、1979年から未来を語るように登場人物がその後の(しかし実際には既に起きた)人生を語るところも興味深い。特に1999年に死んだ母親が自分が経験をした死を語るのだから面白いと言いたくなる。こういう芸当は、フィクションでしかできない。

題名は、Tレックスの有名な「20センチュリー・ボーイ」の応用。

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この記事へのコメント

浅野佑都
2020年09月07日 15:16
 アネット・ベニンぐは若いころから繊細な演技をする人で大好きですね。
僕は、バーグマンやグレース・ケリーみたいなゴージャスでガタイも大きく、大輪のバラのように美しいけれど、日本女性のようなしなやかさに欠ける女優が苦手です(笑)
あ、一番好きなのは、昔から変わらずリズですが・・。

この作品、良かったですね!
「人生はビギナーズ」は、悪くないけど、何か1ピース足りない、と思いましたが、こちらはそれを感じなかったです・・。

この監督は女兄弟のいる家庭に育ったらしく、女性に対する幻想のないニュートラルな視線が心地良いです。

僕は、フェミニストと称する連中(女性も含む)は、女兄弟に囲まれる経験を持たなかった人達だと思っています・・。
女性自身を良く知らないから、周囲を幻想に巻き込み、結果、多くの女性を不幸にする・・。
トランプ的な勢力に呼応して台頭したフェミニズムの時代にこそ、多くの人にみてほしい映画ですね。

>親子関係は難しいもの

母親にとって、息子は恋人であり性の違う分身でもある・・。(娘は、ライバルですから分身にはならない)

同性同士の気安さと、自身の若いころと比べての思いから、母と娘の交流は、母と息子のそれよりよほど、ずかっとしている・・。
僕の母と妹の遠慮会釈ない会話に、「よくそんなこと言えるなぁ」と、めまいと嫉妬すら覚えるときがありますよ(笑)

長男の僕は、どうしても母には遠慮がある‥マザーコンプレックスというのとは、また違うのですが。。ただ、母を支えるのは自分しかいない、というのは子供の頃からありましたし、彼女が妹より僕のほうを好きだという認識は子供時代からあり今も変わっていません・・。

>「母親がいてくれさえすれば良い」
これは、すべての子供にとって普遍的な思いでしょう・・。
やがて、息子に伴侶ができても、そういった存在は変わらぬわけですから・・。
浅野佑都
2020年09月07日 16:03
 本館(なんと、67000番目のオカピ―マニアでしたよ‼)の写真は、シドニー・ポワチエ!

「招かねざる客」の彼はよかった・・。
伯母さんのキャサリン・ヘップバーンと出演した、婚約者役のキャサリン・ホーントンを真摯に愛する医師役で、インテリジェンスを感じます(それが災いして、「白人のペット」と批判されましたが‥)


Black Lives Matter が叫ばれる今、トランプこそ「招かねざる客」でしょうな(笑)
オカピー
2020年09月07日 22:39
浅野佑都さん、こんにちは。

>女性に対する幻想のないニュートラルな視線が心地良いです。
>フェミニストと称する連中(女性も含む)は、女兄弟に囲まれる
>経験を持たなかった人達だと思っています・・。

女性が主要スタッフを固める映画の中には、男性は勿論、女性をもニュートラルに捉えられていないものが目立ちます。

>長男の僕は、どうしても母には遠慮がある

僕は三男ですが、僕が幼稚園の時から僕が社会人を過ぎてもずっと働いていた鍵っ子だったので、母親と長くいられた兄貴には嫉妬心がありますね。相対的なマザ・コンだと思います^^; 遠慮はなかったのでは?
 同時に、晩年にもう少しやってやれることがあったと思うところ多く、慚愧に堪えない思いも、兄より強いと思います。

>>「母親がいてくれさえすれば良い」
>これは、すべての子供にとって普遍的な思いでしょう・・。

僕も若い頃そう思っていたような気がしますね。

>本館(なんと、67000番目のオカピ―マニアでしたよ‼)の写真

最近は余り訪問者がなくて。
たまには書き込みがあると嬉しいですね。ブログより読む人が少ないと思いますが。

>「招かねざる客」の彼はよかった・・。

浅野さん、日本語が少し混乱していますよ(笑)
多分、「招きかねざる」と「招かれざる」が一緒になってしまった・・・

>インテリジェンスを感じます(それが災いして、「白人のペット」と批判されましたが‥)

リベラルもそういうことを言わないと良いのですがね。

>Black Lives Matter が叫ばれる今、トランプこそ「招かねざる客」でしょうな

トランプは世界を混乱させましたよ。人類の進歩を、一時的でしょうが、逆進化させていますね。

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