映画評「忍びの国」

☆★(3点/10点満点中)
2017年日本映画 監督・中村義洋
ネタバレあり

また信長ものである。と言っても信長本人は全く出て来ないのだが。

和田竜の歴史小説を中村義洋が監督した時代劇と聞けは一応期待したくなる。中村監督は、Allcinemaに三流監督という評があったが、一連の伊坂幸太郎のミステリーなどミーハー的とは言え一応楽しませてくれ、僕はどちらかと言うと評価している。が、今回は、上の☆★が示す通り、甚だ失望の一編である。

お話は、【天正伊賀の乱】の全体を俯瞰したお話で、正攻法に作れば、比較的珍しい素材なので面白くなったと思う。

伊勢の北畠家に政略的に婿に入った信長の次男・信雄(のぶかつ=知念侑李)の元に、伊賀忍者の一人・下山平兵衛(鈴木亮平)が駆け込んできて、伊賀を攻めるよう進言する。伊賀忍者の余りの人非人にぶりに頭に来て出奔したのである。勿論信雄側は当初はその言動を疑うが、信雄は次第にその気になっていく。主君を恐れぬ日置大膳(伊勢谷友介)は、彼の持ちかけた戦略が、伊賀十二評定衆のしたたかな陽動作戦と喝破し、また日置の不遜な言動も主君を本気にさせる策略と判ってくる。

しかし、本作の主人公は、伊賀一の忍術使いと自負しながら怠け者で戦いから逃げようとする無門(大野智)。誘拐して事実上の妻に迎えた姫君お国(石原ひとみ)に頭が上がらない彼は、彼女に発破をかけられて翻意し、莫大な財産をもたらす茶入をたてに一緒に逃げ出した忍者たちに復帰させることに成功、彼らを加えた伊賀勢はいよいよ信雄軍と激しい戦いを繰り広げることになる。

凡そこんなお話なのだが、お話の見通しが甚だ悪い。その理由の一つは、伊賀と伊勢のどちらに主眼が置かれているかということが不鮮明なこと。そりゃ大野智が主演をしているから伊賀だろうという意見もあるだろうし、それで正しいと思われるが、鈴木亮平にも力点が置かれているから少なくとも見た目上はそうなっていない。実際には二人の心理が絡み合う終盤の展開を見るとこれは意図的なものであったことが判明するとは言え、もう少しスマートに扱わないと観客が困る。

しかし、一番の問題は、主人公・無門を余りにコミカルに扱ったことで、まあ「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズのジャック・スパローみたいなキャラクターでありポジションである、と言えば中らずと雖も遠からず。このコミカルぶりが全く可笑しくないだけでなく、作品の性格を一貫させない。彼が出ていない場面は終始シリアスだからである。また、終盤平兵衛の「伊賀者は人間ではない」という発言の意味を理解して突然陰気になられても困る。結局トーンの一貫性のなさが退屈を惹起するのだから、致命的と言わねばならない。

忍者ものにつきある程度は仕方がないにしてもアクション場面はVFXを多用してくだらないところが多い。大人の鑑賞に堪える、本格的な時代劇のアクションとは言いかねる次第。

因みに、織田信雄のお墓の一つは、比較的近所(群馬県甘楽郡甘楽町小幡)にある。が、実際に見に行ったことはない。いつか行ってみよう。小幡(おばた)については、亡母が実家に近いこともあってよく口にしていた。

IMDbの平均点は7.9。アメリカ人が殆どの票数を占めているわけだが、彼らは日本人より圧倒的に忍者が好き。ちと甘すぎるじゃろ。ジャニーズ絡みというだけで最低点を付ける一部の日本人も考えものだが。

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この記事へのコメント

浅野佑都
2018年05月31日 16:53
 これは、たまたま観ることができましたが、大野智は、ジャニーズには珍しく、実にノーブルで、大川橋蔵や市川雷蔵といった昭和の時代劇二枚目スターの雰囲気がある人なんですね・・。
もう少し上手い監督さんに、一時の中村錦之助のように軽快な時代劇風な作品に使われればいいいかも・・。意外とクールな役も出来ると思うので、あるいは、眠狂四郎シリーズ第一作を撮った大映の田中徳三作品とかに出演させたらどうだったのでしょうね・・。
彼は身長が160センチそこそこですが、時代劇では大きく見せられますからね・・。

>ジャニーズ絡みというだけで最低点を付ける

碌に作品を観もしない人に限ってそういう傾向があるのも感心しませんが、実際問題、時代劇の所作、発声、殺陣も含めた彼らの演技力には大いに疑問がつくでしょう。
世評が割と良かった木村拓也はまだしも、東山紀之などはいわゆる棒読みは良いのですが、文節ごとに台詞を切ってタメを作って重厚感を打ち出そうとして失敗している・・。
アイドルに付け焼刃の衣装を着せて現代的な感覚を取り入れれば、衰退一方の時代物に活路を出せる、と安易に皮算用する関係者も噴飯者でしょう・・。

翻って、「るろうに剣心」のような、漫画由来の作品は、ぼくはコスプレジャンル物として楽しく観ているので、役者の現代語使いもまったく気にならず、かなりの稽古を必要とする時代物の殺陣だろうといかようにも作れるので、アイドルを使うならこちらのやり方が良いと思えます。

欲を言えば、三船敏郎や勝新太郎のような、本格で豪快な殺陣を現代の俳優で観られたらもっと楽しめるんでしょうけどね・・。
オカピー
2018年06月01日 19:37
浅野佑都さん、こんにちは。

>大野智
確かに、最近の典型的なアイドル顔ではないですね。
 個人的に彼については特に悪い印象はないですが、この作品がつまらなくなった要因は、ユーモアをコミカルさとはき違えていることではないかと思います。「用心棒」で三船敏郎が「斬られるといてえぞ」と言ったのはユーモアですが、本作はそれを超えてギャグになっていて、どうも違和感がある。

>田中徳三
大映三人衆(三隈研次、池広一夫、田中)の中では最も堅実で、それでいてなかなか面白味を兼ね備えている監督でしたね。彼はテンポも良いし、こんなへなちょこな作品は撮らない。

>木村拓哉
観るかどうか迷った「無限の住人」を観ました。モノクロ部分は、田中徳族がリメイクした「大殺陣 雄呂血」みたいでなかなか良いですがね・・・

>「るろうに剣心」
これは、特に第一作は面白かった。アクション処理も良かったですね。

>現代語使い
基本的には同意ですが、主人公だけ昔風の言葉遣いをしているので、どちらかに統一してほしいという気がしましたね。
 「かたじけない」が謝る時にも使えるという若者の誤解はこの作品(原作)から始ったのではないかと邪推(笑)しています。

>三船敏郎や勝新太郎
どうしてもCGに頼ってしまうからなあ。
 三船敏郎が「七人の侍」で持った刀は重すぎてあれほど軽そうにはなかなか扱えないでしょうし、勝新のあの居合抜きの速さは誰も真似できそうもない。
 しかし、「るろうに剣心」の佐藤健君は、昔のそれとは違ってアクロバティックですが、相当頑張ったと思いますよ。

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