映画評「美女と野獣」(2017年版)

☆☆★(5点/10点満点中)
2017年アメリカ映画 監督ビル・コンドン
ネタバレあり

2014年のフランス版を観たあと他人の感想に当たっている時に“ディズニー・アニメをリスペクトしていないのはけしからん”という無教養をさらけ出すけったいな意見を読んだ。総論的に、アンデルセンやグリム兄弟はディズニーに謝るべきだというもっとけったいな意見もあった。原作者若しくはそれに準ずる人物が彼らの作品をリスペクトなしに改竄したディズニーに謝る言われはない(それ以前にディズニー映画が生れる前に亡くなった人物が謝るのは物理的に不可能であり、珍無類の意見と言うべし)。謝るのはディズニーの方だ。グリム童話はそもそも民間伝承であって創作ではないから特段リスペクトする必要もないのだが。最低限の知識もない人の暴言など鼻で笑えばよろし。

本作は言うまでもなくフランスのボーモン夫人(ヴィルヌーヴ夫人が原型を書いている)の童話の何十回目か(僕のリメイク・リストによれば21回目)の映像化で、直接的には1991年ディズニー・アニメ版の実写映画化という扱いになる。実写と言っても大半はCGという絵でありますがね。

さる屋敷の庭で薔薇を取った父親(ケヴィン・クライン)の代わりに、元王子の野獣(ダン・スティーヴンズ)に監禁されることになった娘ベル(エマ・ワトスン)が、野獣を愛するようになって呪いを解くというお話のアウトラインはどのバージョンともさほど変わらない。2014年フランス版がボーモン夫人の原作に一番近そうであるが、読んでいないのでよく解らない。

映画的には、抜群の幽玄さを誇る1946年のジャン・コクトー版が断然優秀で、アニメ版を観た時にはコクトー版のような幽玄さの欠片もないのにがっかりしたもの。今回の実写版は、アカデミー主題歌賞などを受賞した(が、個人的には余り感心しなかった。近年のアカデミー賞で一番がっかりさせられるのは歌曲関係がいつもダサいことである)アニメ版の楽曲に新曲を加えた構成で、事実上のミュージカル映画である。

登場人物の背景などを色々と丹念に描いたのを好意的に捉える向きもあるが、どうもまだるっこくて僕は余り感心できず、おかげで2時間を超える大作になってしまった。悪役の青年(ルーク・エヴァンズ)のミュージカル的場面など一切不要と言って良い。ビル・コンドンの演出については、スケールを大きく見せるカメラワークで一定の成果あり。

ベルは従来よりはアクティヴだが、他の童話もののアクション版ほどフェミニズム臭を感じさせないのは良い。しかし、終幕に至って、黒人をどうしても使わなければならないようなアメリカ映画の現状について考え込むはめになる。不自然に黒人を配置するくらいなら「黒いオルフェ」(1959年)や「ウィズ」(1978年)のように黒人版を作った方が良いような気がするが、こういう意見も差別になるのかや?

欧米特にアメリカのポリティカル・コレクトネスは異常と言って良い域にあるのでは? 寧ろ人々の寛容のなさが高まっているような感じがする。肩が凝りますな。

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