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zoom RSS 映画評「クリミナル 2人の記憶を持つ男」

<<   作成日時 : 2018/03/06 11:07   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2016年イギリス=アメリカ合作映画 監督エイリアル・ヴローメン
ネタバレあり

これは拾い物に近い印象。☆☆☆★を超える価値は十分にある。

CIAロンドン支局の捜査員ライアン・レイノルズが、ハッキングによりアメリカの軍隊を遠隔操作できるプログラムをスペインの無政府主義者ジョルディ・モリャに売ろうとしていたハッカーのマイケル・ピットを抱き込むのに成功するが、大金と引き換えにプログラムを手中に収める直前、モリャの一味に殺されてしまう。
 モリャより先にピットの行方を掴まなければ世界の破滅と焦るCIAの責任者ゲイリー・オールドマンは、記憶を移植できる実験をしているトミー・リー・ジョーンズに、死後間もないレイノルズの記憶を移植を要請する。そこで選ばれたのが感情を一切持たないサイコパスのケヴィン・コストナーで、彼がそうなったのは子供時代の父親の暴力による脳の負傷が原因である。
 ここに主題の構成要件があり、それに気づかないと誤った評価に陥る

実験的手術は徐々に効果を現し、コストナーは捜査員の記憶に基づき図書館のどこかに隠した大金を物にしようとCIAの手から逃れて行動を開始、残された妻ガル・ガドットを襲って鍵を得ようと接近するうち、捜査員の妻子への愛情により彼の脳は感情を取り戻していく。彼は最初は我が物にしようと思った大金を取引に使い、横取りを狙うアナーキストの刺客を退けるが、その間にガルや娘が人質に取られてしまう。彼は自分の妻子であるがごとく彼女たちを救いに、モリャにプログラムを渡すことは認められないオールドマンの制止を無視して現場へ向かう。

最後は観てのお楽しみとしておきますが、一部にコストナーの感情の発露に重心が置かれる後半が落ちるとか、ハードボイルドに徹したら良い映画になったという意見があるが、これには反論しなければならぬ。何故なら“人の感情”がこの作品の主題だからである。あるべき主題がなかったら良かったなどという批評はありえない。
 彼らは確かに映画論の原理を承知している。ハードボイルドに徹すれば良い映画になるし、前半と後半とが違う映画のように見えるのはよろしくない。正論である。しかし、残念なことに、彼らは作品の目的を正確に捉えられなかった。
 主人公はジキル博士とハイド氏に似るが、博士と違って二つの記憶は全く別のものとして共存する一方で、感情は混交しやがてレイノルズの人間的な感情が記憶と行動原理を支配するようになる。これがSF的に大変興味深い。
 コストナーのサイコパスぶりは前半に記したように後天的である為、意外と速やかに人間的感情を取り戻す。そして、映画は家族の愛情を得ることのなかったコストナーが家族の愛情を求めるお話に収斂していく。

本作において、スパイ・サスペンス若しくはスパイ・アクションのフォーマットは、あくまでフォーマットとして推移するに過ぎない。そちらで押すこともできるくらい本格的だから、前述のような批判も出て来るのもむべなるかな・・・なのだが、しかし、本作が最終的に描きたかったのはそれではないのだから、正鵠を射ていないことになる。

ヒューマニズムの扱い方が程良くて甘くなり過ぎないのが良い。僕はコストナーが父親の暴力に言及したところから、彼が気の毒でならなかった。感情移入できないという人は、彼の序盤における台詞の重要さに気づいていないのである。

ハードボイルド小説は感情面で実は余りハードボイルドではなく、女性への照れを表面から隠しているものが多い、のではないかと思ったりもする。

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『クリミナル 2人の記憶を持つ男』('17初鑑賞20・劇場)
☆☆☆☆☆ (10段階評価で 10) 3月10日(金) 109シネマズHAT神戸 シアター2にて 13:20の回を鑑賞。 2D:字幕版。 ...続きを見る
みはいる・BのB
2018/03/07 13:35

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