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zoom RSS 映画評「サラエヴォの銃声」

<<   作成日時 : 2018/03/03 09:38   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2016年フランス=ボスニア・ヘルツェゴビナ合作映画 監督ダニス・タノヴィッチ
ネタバレあり

ダニス・タノヴィッチとしては日本での初紹介作「ノー・マンズ・ランド」と一対になるような風刺作品で、映画の見せ方としては邦画「THE有頂天ホテル」のボスニア・ヘルツェゴヴィナ悲劇版といったところ。特に長回しで見せるところなど彷彿とする。

第一次世界大戦の引き金となったサラエヴォ事件100年の記念式典が行われようとしているホテル・ヨーロッパでは支配人オメル(イズディン・バイロヴィッチ)と受付主任ラミヤ(スネジャナ・ヴィドヴィッチ)が準備に大わらわ。しかし、一部従業員は二か月も給料を貰わず、大変な最中であるからこそストを決行しようとしている。その一人でやがてリーダーに祀り上げられるのがラミヤの母親である。
 建物の屋上では、テレビ局女性キャスターのヴェドラナ(ヴェドラナ・セクサン)が事件を振り返ろうとするが、かつての皇太子暗殺者と同じ名前を持つガブリロ・プリンツィプ(ムハメッド・ハショヴィッチ)へのインタビューでは民族の違いがあって意見が全く合わない。彼は何故かピストルを所持している。
 支配人は母親のストを理由にスネジャナを解雇、母親は彼の指示を受けたヤクザに監禁される。プリンツィプはヴェドラナのレコーダーを奪って階下を降りた後ガードマンに射殺される。この騒動により、ホテルは、ストをするまでもなく無人となる。

通算二か月近くかけて先日読み終えた大河小説「チボー家の人々」はかなりのページを割いて、サラエヴォ事件後の各国の立場を社会主義者の弟と非社会主義者の兄の視点からドキュメント的に描いて相当面白く、本作を観る上でも少し参考になる。少しに留まるのは、同作では事件を起こしたプリンツィプのようなセルビア人と非セルビア人との間の確執など旧ユーゴ圏内での問題が全く扱われず、逆に本作ではそれが重要な要素となっているからである。

いずれにせよ、詳細は知らないまでも、バルカンの火薬庫たる旧ユーゴ(大セルビア)地域のややこしい民族問題の存在を知らなくては、本作は楽しめない。ホテルの混乱が旧ユーゴにおける混乱ぶりを寓意しているからである。

今世紀になってバルカン半島が表面上やっと落ち着いた代わりに、欧州全体に移民問題がくすぶりだし、かつてのバルカン情勢とは比較にならないまでも波乱含みであることを作者は匂わしているのだろう。解釈としてはそんなところだが、ハリウッド映画のような明快さを持たない幕切れはインテリ向けで、現代演劇的である。案の定、原作は、哲学者ベルナール=アンリ・レヴィの戯曲。

平昌オリンピックが終わったばかり。冬季オリンピックで思い出すのは、サラエヴォのかつての会場が内戦でひどい状態になったこと。平和の象徴であったオリンピックの会場が戦争で破壊される。その惨状に心痛み、また示唆するものを感じたものである。

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