映画評「ラ・ラ・ランド」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2016年アメリカ映画 監督デイミアン・チャゼル
ネタバレあり

2017年度アカデミー賞六部門で受賞したミュージカル大作。

ジャズの衰退を嘆き自らジャズ・クラブを開く希望を持っているピアニストのライアン・ゴズリングと、一向に採用されない映画女優の卵エマ・ストーンとが、変な出会いをした後、偶然に出会い続けるうちに恋に落ちるが、二人とも自分の夢を目指すことにより恋の方は諦めなければならない。

四季に分けた章構成で様々な紆余曲折はあるが、骨格はこんなシンプルなロマンス模様で、かつてのMGMミュージカルのようなものである。実際、タップ・ダンスは言うまでもなく、フレッド・アステアやジーン・ケリーの作品をモジった場面(黒人の老婆と踊り老夫が嫉妬するカットが印象的)が色々と出て来る。
 単色系の衣装を使うのは戦後アメリカ製ミュージカルの常套手段だったが、ジャック・ドミーへのオマージュのように感じる。ドミーと言えば、本作の幕切れは「シェルブールの雨傘」の再現である。かの作品のガソリンスタンドに相当するのがジャズ・クラブで、経営者となったかつての恋人と再会してしんみりとしてしまうのはそのもの。前述したように、露骨に天秤にかけたわけではないものの、結果的に本作の二人は夢の実現と恋の成就をバーターにした形だから、エマ(またはゴズリング若しくは両人)が二回目の出会いで違う決断をしていれば両方とも得られたのではないかと想像するシークエンスはやるせないものを残す。

ロマンスとすればハッピーエンドではないが、彼らの人生全体を考えれば上出来なのだろう。

僕は日本では多くないミュージカル・ファンだから、こういう本格的と言って良いミュージカルが作られるのは嬉しい。現在のミュージカルへの評価は、甘くなったり、厳しくなったりする。世間でなかなか評判の良い開巻直後の準群舞は、4ビートのリズムに乗って展開されるのが珍しく、長回しで捉えられてダイナミック。ここはブロードウェイ的かなあと思っていると、やがてMGM的に、或いはフレンチ・ミュージカル的になるなど、ごった煮的。音楽もなかなか幅広い。
 統一感という問題はあるにしても、これについては頭ごなしに否定的になる必要はないと思うが、アステアとジンジャー・ロジャーズ、ジュディー・ガーランド、シド・チャリシーというコンビの踊りや歌を見たり聞いたりした身には、大いに頑張っているエマもゴズリングも相当素人っぽく感じられる。舞台と違って映画では、素人っぽいのが必ずしも悪いわけではないが。

セッション」で抜群のカット感覚を見せた新鋭デイミアン・チャゼルの感覚はやはり良いが、本作は匠気が気にならないでもない。

一事は絶滅と思われたミュージカルがまだ作られているのは良いことと言うべし。「コーラスライン」の映画化のおかげかな。西部劇より本数は多いね。

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この記事へのコメント

2018年03月11日 18:42
優秀通り越して神懸かり的なダンスシーンを
多く観て来ているオールドファンにはかなり
鈍くさく感じまして物足りなかったですわ。
いつも言ってますが「よくがんばっている」と
いう“お情け評”で収めてしまう風潮もロートル
には通じませんもの。
お優しいプロフェッサーですから
一応誉めてらっしゃるけれど、6点だわ。(笑)
拙記事、URLに入れております。
オカピー
2018年03月11日 22:56
vivajijiさん、こんにちは。

>「よくがんばっている」
そうなんです。
アステアやケリーは金輪際がんばっているとは思わせない。プロ中のプロですからね。
「がんばっている」と思わせるから「素人っぽい」という感想になる。

>6点だわ。(笑)
本格ミュージカルは珍しいので、7点という考えとの間で少し迷いましたが、今回は全体の印象を取りました。

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