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zoom RSS 映画評「偽りの忠誠 ナチスが愛した女」

<<   作成日時 : 2018/02/23 11:30   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2016年イギリス=アメリカ合作映画 監督デーヴィッド・ルヴォー
ネタバレあり

実際にあった逸話を元に作られた完全フィクションである。

ナチス・ドイツがオランダに侵攻した直後らしいから1940年が時代背景。第一次世界大戦敗戦でのドイツの共和制移行に伴い退位したヴィルヘルム2世(クリストファー・プラマー)を護衛せよと指令を受け、ブラント大尉(ジェイ・コートニー)がその隠居先であるオランダに赴く。やがて、屋敷の周辺でスパイ活動が行われていることが判明し、警部補が捜査に訪れる。
 ナチスの政策が一々気に入らない大尉は、実は牧師と結託して英国のスパイをしている侍女ミーカ(リリー・ジェームズ)と恋に落ち、ユダヤ人であることを知ってもその思いを変えず、牧師の逮捕で彼女がスパイであると知るや、彼女の逃走に手を貸す。
 他方、復権への意欲が高い元皇帝以上にその野心に燃えている妻ヘルミーネ(ジャネット・マクティア)は、親衛隊トップのヒムラー(エディー・マーサン)の訪問を利用して復権を図ろうとするが、やって来たヒムラーは障碍者に対する残虐な手法を披露して夫妻を幻滅させただけでなく、復権の狙いが帝政支持派の撲滅であるとヒムラーの口から聞いた大尉により知らされ、ベルリンに帰ることを止める。そして、遂にミーカの正体がばれる時が訪れる。

【Yahoo!映画】でたった二つしか寄せられていないコメントの一つが映画ファンとして看過できない出鱈目ぶりなので、まず文句から言わせてもらう。
 彼若しくは彼女はこの映画が“ナチス憎しに基づく捏造だらけで見る価値が全くない”と言うのである。馬鹿を言っては困る。この映画は実在する人物が多数出て来るとは言え実話を一切謳っていない。フィクションにおける非事実はノンフィクションの場合と違って捏造ではなく、創作と言うべきであろうし、事実そのものでないことを以って映画の批判など出来はしない。それは実話を謳っている作品とて同じで、事実と寸分たがわぬものは劇映画とは言えない。そんな狭量では映画を観ても面白くないだろうし、そんな人の意見は映画を楽しもうとしている人に百害あって一利なしである。

ナチスが現在まで存在し、(若しくは)評価の定まっていない対象であるならば、さすがにまずいと思うが、ナチスの評価に関しては今後覆ることはないだろう。何故か日本の極右はナチスにシンパシーを覚えている人が少なくなさそうだが、「わが闘争」を読めば解るように国家社会主義者ヒトラーは初期から皇帝を国家の為にならぬと考え、排除しようとしていた(戦前同書が訳された時、勿論その部分は皇室に対する不敬になるので削除されて紹介された)。その意味ではニコライ2世一家を身体的に排除したレーニンと大差がない。
 従って、ヒトラー信奉は天皇制解体に通ずるので当然保守とは言えず、その立場は極左と同じである。本国で嫌悪されている人物(しかもヒトラーは同書の中で、アーリア人がいなければ日本など存続しえないとまで言っている)若しくは思想を遠い日本に住む住民がシンパシーを覚えるのか理解できないが、自らの韓国・朝鮮人差別とユダヤ人差別を重ねているだけだろう。“日本人が一番”と主張したがっていると思われる人間が、日本人を馬鹿にしている人物にシンパシーを持つなど矛盾も甚だしい。

閑話休題。
 この作品で一番面白いのは、ナチス憎しという共通点を持つ、ユダヤ系オランダ女性、ドイツ軍大尉、ヴィルヘルム2世とが手を組むことである。こんなことが実際あったらと思うとニヤニヤしてしまう。
 そして、最後に皇帝は、英国に逃げた彼女のスパイ活動の結果、チャーチルから「英国にいらしたら良い。終戦後復位できるでしょう」という手紙を貰う(実話通り)が、丁寧に断る。

そして、かの投稿者の言う「ナチス憎し」が一番明快に現れるのが彼女がチャーチルに会いに行く場面。どうも彼女は妊娠しているようなのである。つまり、ユダヤ人とアーリア人との子が生まれようとしているのである。これほどナチズムのアンチテーゼを示すものはなかろう。現在では、ナチズムの否定はドイツの国是どころか、世界是である。

サスペンスとしてはさほど強烈ではなく、ナチス絡みではメロドラマの域を出ないが、痛快な作品と言って良い。

戦前ヒトラー政権の支持率は50%を超えたことがないそうだが、ワイマール憲法の緊急条項を悪用して国会を意味のないものにし、好き勝手なことをやった。自民党も緊急条項を加えようとし、これに関しては国民の支持も高いが、気を付けないと大変なことになる可能性もある。改憲条項として検討されている中で一番問題なのは9条改憲ではなく、こちらではなかろうか。

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