映画評「はじまりへの旅」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2016年アメリカ映画 監督マット・ロス
ネタバレあり

アメリカ北西部。ヴィゴ・モーテンセンはハイティーンの長男ボウ(ジョージ・マッケイ)を筆頭とする6人の子供たちにサバイバル術を教えている。夜になれば、「カラマーゾフの兄弟」「ミドルマーチ」といった重要な純文学を読ませたり、科学などもみっちり学ばせている。体力・学力とも一般の子たちよりずっと上と自負している。
 ところが、彼がこのような生活を始める原因となった精神病の妻が病院で自殺を遂げる。遥か離れたニュー・メキシコに住む彼女の父親フランク・ランジェラは変な人生観・社会観を持っている彼を憎悪していて、「葬式に来たら警察に逮捕させる」と脅迫する。しかし、仏教徒で火葬を希望する亡妻の希望を果たせねばなるまいと、キャンピングカーで長い旅を続け、子供たちと押しかける。教会で変なことを言い始めた彼を警察は連れ去り、結局カトリック式に土葬されてしまう。しかも、二番目の息子が父親に反旗を翻してランジェラの家に残る憂き目に遭う。
 彼を奪還しようと送り込んだ娘の一人が屋根から落ちて重傷を負うと、モーテンセンは遂に自分の教育観の独りよがりを認め、義父に育ててもらうことにして一人旅立つ。しかし、子供たちは車に忍び込んで父親を鼓舞、母親の棺を掘り起こして海辺で焼き、彼女の希望通りトイレに流す。同時に、父親は社会性を育ませようと子供たちをきちんと学校へ通わせる。

というお話で、設定自体はありがちながら、具体的な部分に興味深いところが多く、なかなか楽しめる。かと言って主人公に共感しているわけではない。僕は髪の毛を染めるのも嫌いな自然主義者だが物事は中庸が肝要という考え方だから、こういうヒッピー的な極端な、文字通りの自然偏重は好かないのである。

しかし、登場人物その人やその考え方が気に入らないからと言ってそれを作品の価値と同等視するのは間違い。同時に、本作のように、主人公が一般的な考え方に戻ってくると言って作品を評価するにも及ばない。大事なのは作者がその変化をいかに巧く描いているか(を判断すること)だ。
 かつて僕は「タイムズ・スクエア」の若い少女たちに怒り、作品も評価しなかった。その主な原因は彼女たちが大きな物をビルから投げ出すからで、「下を歩いている人のことを考えない馬鹿者」と怒ったわけだが、彼女たちが馬鹿だから評価しなかったのではなく、大した意味なくそんな設定をした作者が怪しからんと思ったからである。

閑話休題。本作は、アメリカでは大評判だが、主人公の変心はありがち、最後に帳尻を合わせた感じがする為、さほどとは思えない。

邦画に「はじまりのみち」という作品あり。間違えそうですな。

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